オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
3年5ヶ月前、火星急進派閥所有コロニー《ソロモン》
同、秘密MS工場
「……コレよりアレス・リアクター起動実験に入る…」
黒塗りのパイロットスーツ姿の少年《アレス・ルセディス》の静かな声が狭いコックピットに響き、出力スロットを徐々にあげていく…正面モニターには機体に搭載された動力源からの細かな出力パラメータがリアルタイムで表示され機体へのエネルギー伝達回路、フレームへの負荷も目に通すこともない。IS《ヴェーダ》から直接思考へ送らs=れてくるからだ
「……MDブランケット同調、粒子生成および融合係数60%に上昇、稼働規定値まで残り40%…」
限界出力パラメータまであとわずか。コレがうまくいけば自分の目的達成の礎が出来上がる…自身の研究の成果である。ジュエルシード、火星原産のレアメタル、自身の魔力とISがあって初めて製造可能になる新機軸にして禁断の動力《アレスリアクター》が目覚めようとしている
(………V・Tは完成、あとはリアクターだけ………P・T、お前から貰ったロストロギア《ジュエルシード》は、大東いやGspirits隊に復讐する為に使わせてもらう…奴らさえ《ミッドチルダ》に来なければ…オレの家族は………)
赤金に輝く瞳…純粋種《イノベイター》とは違う輝きの下にはどす黒く淀んだ復讐の炎が揺らめかせる中で遂にリアクターが稼働規定値に到達、VPS装甲が濃紺、赤に染まりながら双眸に光が走る
(…………死ぬことは無かったんだ!!)
Mars-day:01ーエクシェスー悪魔の胎動、そして…ー
エクシェス起動実験から1ヶ月後……オーストレルコロニー、環境コントロールの為に降らせた雨の中を必死に駆ける人影…真っ黒なスーツは乱れ、タイは緩み濡れた服には埃によごれている
(く、ドコにいる………)
必死に駆ける少年の瞳が赤金へ変わる…オーストレルコロニーすべての監視システムに介入し探すのは半月前に身元引受人になった貧民街でストリートチルドレンを率いていたリーダー《雪音クリス》という少女。新たに設計した《三体の特務機》の仕上げに急進派閥所有コロニーに向かおうとしていた矢先に学院から姿を消したと聞き、今にいたる…隙あらば襲いかかる少女をなぜ探しているのかわからなかった
ーあ?なれなれしく話しかけんじゃねえよ。身元引受人だ?どうせお前も他の奴らと変わんねえんだろ?他の奴らは騙せてもあたしは絶対に信じねぇからな!!ー
はじめてセーフハウスへ連れてきた日に寝込みを襲い逆に組み敷いた時に敵愾心を向けてきたクリスになぜ
こうも自分は気にかけるんだと考えた時、浮かんだのは全てを変えた《立てこもり事件》で命を落とした妹ハーティ…生きていればクリスと同じ年頃…
(そうか……だからか………オレは…)
……死んだ義妹ハーティとクリスを重ねていると感じた時、何かが頭に響いた…
ー…はなせ、いや……だー
(クリス?……)
ーパパ、ママ……助けて!ー
クリスの助けを求める声を脳量子波で感じ取ったアレスは感情をむき出し必死に街の中を走る…そして足が止まり見えたのは
「ひゃははは、さあたのしもうぜ……っ!?」
「いや、やあああ!?」
制服を破り捨てられ、ブラとショーツだけ残しほぼ全裸のクリス。その体を脂ぎった手でなめ回すように撫で、ベルトを外しショーツへ手をかけようとするゲスが驚きおののく姿を目にした瞬間、ナニかが音を立て切れた
「………………どけゲスが」
怒り任せにゲスの顎めがけ拳を叩き込んだ顎が砕け散る嫌な音を辺りに響かせる。唾液混じりの血と砕けた歯が地面に粘っこい音とならし落ち痛みに悶絶するゲスに目をくれずクリスへ着ていたコートをかけ抱きしめた
「……!?」
びくりと身体を震わせるのがわかる…それでも抱きしめることしか出来ない…数分後、統制局に引き渡すまでずっと守るように抱き続けた
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アレから数日が過ぎた…クリスは引き取り手がなかなか見つからず、アレスのセーフハウスで一緒に暮らすようになった…最初の頃よりも態度がかなり柔らかくなった。それ以上に絶対的な信頼を寄せてきている
「兄貴!」
「…………どうしたクリス?」
「また聞いてなかったのかよ。仕事が忙しいのはわかってんだけどさ…あたしさ、今度の学院祭で歌うコト決まったんだ…」
「……歌?…………(確かクリスの両親は音楽家として有名だったな……)」
「クラスの奴らがアタシが口ずさんでたのを聞いてさ…パパやママは上手いっていってくれたけど」
「不安か?」
「ふ、不安じゃねえよ…」
「……ならクリス、オレにお前の歌を聴かせろ……」
「え!な、なにいって」
「……」
無言でクリスをみるアレス…何もいわずジッとみる瞳は強制、いやその意志すら感じない…ただ純粋に聞いていたいというモノが見える
「わ、わかったから…もう………でもゼッタイ、
ゼッタイに笑うなよ………兄貴…」
少し間をおき、スウウっと息を吸い歌い始めた…その歌声はリビングに響きアレスの心に届く…一瞬、クリスとハーティの姿が重なり、胸の奥から暖かな温もりが満ちる
(………いい歌だ………やはり、クリスは光が当たる場所で………ならばオレは)
「ど、どうだ?やっぱり下手かな……」
「……クリス…お前の歌は人を和ませる……自信を持て。それにオレはお前の歌が好きだ。だから沢山の人たちに聞かせてくれ」
「バ、バカ!なにいってんだよ……アタシは兄貴の為なら何時だって…」
「!?、どうしたクリス、顔が赤いぞ……風邪か?」
「………あ、あ、兄貴!なにすんたよ」
「ん、熱はないな……どうした?」
「な、なんでもねぇよ!バカ兄貴ッ!!」
熱をはかるために額を額に当てたアレスからはなれるや否や駆け出した姿を見ながら
(クリスにオレの復讐につきあわせるわけにはいかない。クリスの歌は人が持つ暖かさを、優しさを、希望を与えてくれる………オレが居なくなってもマリア達が守ってくれるようにする《計画発動》までに身元引受人となったストリートチルドレンの子供たちが火星で生きていけるだけの遺産をのこす)
そう誓うとエクシェスの追加兵装の概念図を空間投影モニターに写す傍ら、自身の資産配分に引受人候補を探しだした
あの日、クリスとの出逢いが復讐鬼アレスの心に微かな光をもたらした事には間違いない
Mars-day:01 エクシェスー悪魔の胎動、そして…ー
了