オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
空賊アナスタシア《アイガイオン》
同艦内、悠那・クロスハート私室…
「火星圏が国家として力を持つにはどうしたらいいかって?…………」
デスクに座る悠那の前には白髪に赤のメッシュが入ったダブルウルフカット、赤金の瞳を向け問うアレスに目を細めコーヒーカップに軽く口をつけおいた…
「らしくないわね……何故そんな事を聞くの坊や? あんた、復讐のために生きてきたのではなくて? もしかして、諦めたとでも?」
「……諦めるわるわけないだろ。あくまで興味が湧いただけだ…もし火星圏が国家として力を持つほどの力を得た時、地球圏がどう対応するか気になっただけだ…」
「興味…ね…」
ソレから黙り込んだアレス…悠那は彼の言葉から興味ではない、明らかな目的を感じ取った
オーストレルコレニー群より離れたラグランジュに存在する《ヘルヘイム・コロニー群》…ココは火星開拓最前線コロニーであり優れた技術者達とその家族が棲まい、コロニーシャフト基部にはヘルヘイムコロニー公社が置かれている
しかし…その最深部には地球圏への復讐、火星圏独立を掲げる火星圏急進派派閥の本拠地が置かれていることを知るのは僅かだ
オレ…アレス・ルセディスは先日に稼働した農業コロニー群《ミストルティン》から届いた通信を開いていた。
『ルセディス統括官、農業コロニー《ミストルティン》1から12バンチ順調に作物が実りを迎えました。今はオーストレル、ヘルヘイムコロニーだけですがあと一月もすれば火星圏全体に行きわたるでしょう。全てはルセディス統括官、タスク副統括がいなければ』
「…違うな。全ては君たちの力があってこそなし得た偉大な事業だ。ミストルティンコロニーに勤める皆もな……コレからの奮闘を期待する」
『は、はいルセディス統括官!』
通信を終えオレは軽く目を閉じる…全ては計画通りに進んでいる。食料自給率問題はクリア、あとはヘルヘイムコロニーおよびオーストレルコロニー群全体の雇用拡大と促進は新たな技術開発、新規事業計画へと繋がる。コレは火星圏の経済力を確固たるモノとする
そして就学援助および支援…コレを進めるには低年齢層の就労義務を引き上げる必要がある。家庭的事情と低所得により通わせることが出来ない子供達を対象とし学費免除および給食を提供すれば就学率も上がる。この中から火星圏の未来を担うモノ達が生まれるだろう
先の農業コロニー群建造完了、稼働成功は穏健派が占める中央議会内での急進派派閥の発言力強化に一役かい、さらには親派も増え、コロニー群に住む一般市民と労働者からも支持をえた
あと残すのは急進派派閥の最重要計画にしてオレの復讐を成す
「………《軍神の矢》計画を実行、そして…」
Gspirits隊、大東への復讐も同時に行う。アイツらへの怒りは消えるわけない。今でも《あの日》の事は忘れない…必ずやり遂げる。もう一つの計画も
急進派派閥にも秘匿しているオレが《ファンタジア》でメサイア達《七英雄》がいる世界…そこで空賊アナスタシアを結成した首魁《悠那・クロスハート》と出会った
最初は悠那・クロスハートにいい感情を持っていなかっが…だが彼女と言葉を交わし空賊アナスタシアと行動し得たモノが極秘プロジェクト《エデン》を立案した
コレだけは必ず成功させてみせる。全ては……………の為に
MarsDays:07 圧倒
数日後、ヘルヘイムコロニー
同コロニー公社最深部
急進派派閥所有MSハンガー
「ずいぶん集まってるねルセディス」
「そうだな……」
「でもこの新型鉱石輸送船護衛部隊募集が《地球圏侵攻部隊選抜》だなんて知らない…君はどう説明するんだい?」
「……必要とされるMSパイロット適性の高い人員選抜し一人一人に直に問う…参加するか否かはあくまで本人の意志だ……拒絶した場合は」
「このコロニー公社傘下、コロニー建造人員にまわす……だろ?ルセディス、少し変わったかい?」
「なぜ、そう思う…」
モニターに映された新型鉱石輸送船護衛部隊へ参加する候補者に目を向けるタスクの問いに返す…今オレたちがいるのはMSハンガーにある減圧室…厚いガラスの向こうには地球圏から払い下げされたワークスジン、そして非合法活動で入手したMSZ-006…初の可変MS《ゼータガンダム》をアレス自身がヴェーダを使いカスタマイズしたA-Zガンダムがハンガーに待機している
「以前の君ならば容赦なく排除していたからさ…事故や事件に見せかけて…」
「………火星圏には豊富資源はあるが優秀な人材がいない。曲がりなりにも優秀な技能を持つモノを消すのは無駄だ…大きな損失に繋がる。火星圏全体の未来を考えるならあたりまえのことだ」
淡々とノーマルスーツを着終えバイザーを閉じるオレに意外な事を聞いたみたいな顔を見せた…確かに甘くなったのかも知れない。なにより未来を考えるようになっている自分に苦笑する。減圧を終えタスクと共にキャットウォークを蹴る…向かうのはワークスジン、A-Zガンダムのデッキに足をつけコックピットハッチを開放、躰を滑り込ませシートに身を預け、サイドボードを引き出し機体コンディションをキーを軽く指で叩きながらチェックしていく
「ニューロンシナプス。良好、ハイドリックアクチュエータ設定完了、各ウェポンアビリティを訓練モードに切り替え…旋回速度を0.2sec、管制制御を同率調整…タスク、用意はいいか?」
『もちろんだ…さて、いこうか』
モニターには外の様子が見え、濃紫に白のカラーリングのA-Zガンダムのツインアイに光が宿りリニアカタパルトへワークスジンと共に移動しはじめた。やがてヘルヘイムコロニー外装部…資材搬入口に偽装した岩盤からリニアレールが伸び、機体が固定されアナウンスが流れる
ーMSZ-006/AZ、ワークスジン発進位置固定完了…リニアボルテージ上昇。カウントをタスク・ディース、アレス・ルセディスに移譲しますー
「了解、タスク。MSZ-006/A-Zガンダム、出るよ!」
「アレス・ルセディス、ワークスジン……出撃する」
ロック解除、カウント0と同時に電磁的加速によりカタパルトから勢いく打ち出された二体は赤茶けた大地が広がる火星。星の海を舞う中AZガンダムはウェーブライダーへ変形さワークスジンはその背に乗せ加速する
「A-Zガンダム、ずいぶんなれたな」
『まあね、君の特訓のおかげかな?』
「そうか?……ポイントに到達。コレより試験を開始する」
『軽く流された?ま、ソレよりいこうか』
軽く流され呆れた表情を浮かべるタスクの表情が変わり通信が切れた…さてみせて貰おうか
火星圏の未来を憂い集ったお前達の力を!ワークスジンのバーニアスロットルを全開、新型鉱石輸送船護衛に展開したゲイツ複数に迫る…こちらに気づいたのかビームライフルによる弾幕を張る…軽くバーニアをふかし管制移動で躱していく
模擬戦用武装しか持たないワークスジンに対してゲイツにはソレを施していない…当たれば間違いなく溶け墜ち原子の塵に還るだろ
(射撃の腕は悪くない…しかし)
『う、うわ!こ、コイツ!』
操縦桿、スロットペダルをせわしく動かし踏む…変則的機動によるメニューバーで翻弄、一気に間合いを詰めワークスジンの重斬刀(刃曳きすみ)で胴へ斬りつける。衝撃で意識を飛ばしぐらりと揺れるゲイツの腕を掴み、近くに居る二機に投げつける。質量弾と化したゲイツにビームライフルを構えるも戸惑う二機のパイロットの意識を刈り取った
(三機無力化……残り十五機…)
ゲイツ三機のシステムに介入し、回収船に向かわせる…ふと目を向けた先にはタスクのA-Zガンダムが六機相手にしている。ビームの火線を変形、すり抜けざまにMS形態を取りすり抜けざまにビームサーベル(出力は装甲が熱くなる程度)で切り払っていく
『コイツ速すぎる!』
『散開、多方向から攻めればガンダムだって倒せる!!』
諦めず連携を取り迫る…動きは悪くないガンダムとゲイツの性能差は開きはあれどタスクのパイロットとしての技量が軒並み外れている。そして
『見える!ソコだ!!』
光速で迫る無数のビームの軌道を先読みしたように、ビームライフル、バルカン、ビームサーベルでまるで演舞のように穿ち切り払うタスク、A-Zガンダムの回りには撃破判定を受けたゲイツが力無く浮かんでいる
タスクはNT(ニュータイプ)として覚醒している…あの世界《ファンタジア》から十数年前に転移転生してきたと聞いた時は驚いたが…試しに《ファンタジア世界》に戻らないのかをたずねてみたが帰る気は無いらしい
ーあの世界に帰っても居場所はないみたいだし。君の話が本当ならばねー
タスクとの会話を思い出しながら、残りをみると九機となった、だが動きが変わった…先ほどより連携がスムーズにいっている。ビームライフルによる弾幕が厚くなっている…戦術を組み上げたのか?一機のゲイツが急接近し楯で殴りかかる。咄嗟に右腕で受けようとしたがソレを予測していたかのように押しのけ。僅かに体勢が崩れたのを見て体当たりしてくる
「損傷軽微………オレに当てた?」
姿勢制御しゲイツをみた。こうしてダメージを受けたのは初めてMSに乗って海賊を排除した時とタスク以来。久しぶりだ。今回の選抜試験侮れないと考えた時、頭に声が響く
ーあきらめるな!お前等はそれでも戦士の一人か!?この試験に合格して火星を救いたいだろ!だったらこんなところであきらめるんじゃねえ!!ー
この声はオレに一撃を与えたゲイツからだ…タスクの方に残り九機のうち、四機がビームライフルの火線で動きを牽制されビームサーベルで斬りかかられるも紙一重で回避している…
ーそうだ!俺達だってやってやるぜ!ー
ー僕だってこの試験に合格するんだ!ー
ーよく言った!本気出していくぞ!ー
ーおう!!ー
……オレのワークスジンにゲイツ四機が迫りビームライフル、ピクウスで弾幕と牽制している。さっきのゲイツが指揮を飛ばしているようだ…即席部隊を鼓舞し作戦を組み上げたか……面白い
「……ならば指揮官を潰す前に」
「な、何!」
ワークスジンでビームライフル、ピクウスの火線を変則的なマニューバーで躱し蹴りを胴へと叩き込む。蹴った反動を利用してあっけに取られた近くにいたゲイツ頭部に重斬刀を投げつけ、撃破判定したゲイツからビームライフルを取ると訓練モードに出力を落とし、すり抜けざまに三機のコックピットへビームを撃つ…
「僚機を潰す…これでお前だけだ」
力無く浮かんでいるゲイツを回収船がある場所へ軽く押し対峙する…
『やはりそう簡単にはいかないみたいだな……上等!』
加速と同時にビームサーベル。ビームクロー展開。そのままオレのワークスジンに斬りかかる。灼熱の斬撃を紙一重で躱し装甲に筋が走るのを気にせず、胴部に向けて殴りつけようとマニピュレータを向けた
『そう来ると思ったぜ!』
何を考えたのか武器を納めて、ワークスジンの拳を白羽取りの要領で両手で受け止めてる
「……な?」
ワークスジンの腕を掴んだまま投げ飛ばした。アームレイカーを強く握りアポジモーターで姿勢制御する。若干反応が遅れる。ソレを見逃さずに急加速接近、慣性の法則に任せ回転しながら繰り出されたゲイツの重い蹴りが来る。咄嗟に腕で防御するも衝撃でフレームが軋み姿勢制御プログラムが悲鳴を上げる。間に合わない。好機とみたゲイツが追撃をかけようとした。が、行く手を阻むようにビームの閃光が走る
『大丈夫か、ルセディス?』
4時方向より収束したビーム弾がかすり、ゲイツが離れた。ソコにタスクのA-Zガンダムがキャノンを構え接近してきた
「問題ない…あのゲイツのパイロットはこの状況でも戦う意思は消えてないみたいだ…ルセディス援護するよ』
「任せる……さて、何処まで食いつくか……試させて貰おうか!」
オレは狙いを定めて奪ったビームライフルで攻撃を仕掛ける、光より速いビーム彈を無駄なく躱し、タスクのA-Zガンダムのビーム砲撃が進行方向を妨害しつつ牽制している中で来るとは…
『おっと!』
ゲイツは各部バーニアを使い変則的な動きで回避、カウA-Zガンダムに迫るやいなやするビームクロー、ビームサーベル二刀流で斬りつける、後退させた
「あいつ、なかなかやるな……」
タスクが冷や汗を流した時、試験終了を告げるアラートがコックピットに響いた…アームレイカーから手を離しヘルメットを脱ぎノーマルスーツの首もとを緩めた
『試験終了……残ったのはゲイツは6機か』
「ああ……この6人は合格でいいかな?」
…実力は確認した。あとは最終的な面接だけだ。オレはタスクと共にヘルヘイムコロニーの極秘ドッグへワークスジン、AZガンダムと共に帰投するべくオートマニューバへ切り替えサブモニターに先ほどの六人が駆るゲイツ。仲間達がいる回収船へ向かっている。軽く左手に意識を集中する
ーキアラ、聞こえているかー
ーはい、マスター…珍しいですわねー
ー………いまから送るデータ…この六人の過去経歴を洗え…ー
ーあら、ナニカ気になることでもあるのでしょうか?ー
ー………いや、念のためだ……お前にも引き合わせるー
ーわかりましたわ……ところでソロソロいただきたいのですが…白くて熱くて舌触りの良いのをー
ー………あとでやる…ー
ーうふふ、わかりました……楽しみにお待ちしてます。あと雪音さんの三者面談日は明日ですけど大丈夫ですか?ー
ー……な?ソレは聞いてない……ー
ー雪音さん、いいづらいのではありませんか?(親としてみられるのが嫌なんでしょうけど…鈍いですわマ・ス・ター♡)ー
ー……………感謝するキアラー
思念通話を閉じ、義妹クリスの三者面談?キアラとの魔力供給に悩みながら搬入ゲートへと入り機体を固定、急進派派閥への報告書を纏めるべくハッチを開いた。
こうして、新型鉱石輸送船護衛部隊…選抜試験は幕を下ろした…
軍神の矢計画発動まで30日、プロジェクト・エデン発動まであと…………