お待たせしてすみませんでした!
桂と再会してから三日後。
銀時と眞銀、新八、神楽の四人は警察署から出て来た。
警察署を出るなり銀時は、看板に蹴りを叩き込む。
「命張って爆弾処理してやったってのに、三日間も取り調べしやがって、腐れポリ公」
「爆弾処理って言うか、普通に爆発してたけどね」
眞銀は何処から出したのかうまい棒を食べながら言う。
結局、四人は桂たちとの繋がりを証明する証拠が見つからず、無罪放免となった。
「もういいじゃないですか。疑いも晴れたことですし」
「なんかスッキリしねぇ。ゴールデンウォーターかけていこう」
「よっしゃ私、ゲロ吐いちゃるヨ」
「じゃあ、あたしは落書きでも。『チェケラ!』って書く」
そう言ってチャックを開ける銀時と、喉に指を突っ込む神楽、スプレーを取り出す眞銀だった。
「器のちっさいテロしてんじゃねぇぇぇぇぇ!全くあんたらに付き合ってたら疲れちゃいますよ……僕、先に帰りますからね。あんたらも真っ直ぐ家に帰れよ馬鹿トリオ」
そう言い残し新八は早々に去っていく
「おいおいツッコミいねぇとこの小説成立しねぇぞ」
「あたし、ツッコミ苦手だし、どうする銀兄?」
「居ないモンはしょうがねぇだろ。仕方がないし、今回は俺がツッコミで行くか」
「おぇぇぇぇ!!」
「「くさっ!?」」
神楽の吐いたゲロで騒いでいると、警察署の塀の向こう側も騒がしくなる。
そして、塀を乗り越え一人の男が飛び降りる。
男は地面に着地するが、神楽のゲロを踏み、転ぶ。
「いだだだだだだだ!!?って、臭っ!?」
「おい!そいつを捕まえてくれ!脱獄犯だ!って臭っ!」
刑務官たちも神楽のゲロ臭に驚きながらも追い掛けて来る。
すると男は神楽を捕まえ盾にする。
「来るんじゃねぇ!このチャイナ娘がどうなっても知らねぇぞ!」
「くっ!貴様!」
男は神楽を人質にしながら、銀時と眞銀に声を掛ける
「おい、そこの天然パーマとツインテ娘!車の運転は出来るか?」
「普通免許なら持ってっけど」
「あたし、自動車学校で不登校になったから免許無いんだ」
「ヤクザでも卒業できる自動車学校で何があったら不登校になるんだよ!?ってそんなことどうでもいい!お前ら……………」
「なんでこ~なるの?」
「日頃の行いじゃない?」
結局、人質になった神楽を救う為と言う体で、脱獄犯の脱獄に手を貸した銀時と眞銀は運転席と助手席に座りながら、脱獄犯の言う通りに運転していた。
ちなみに運転席にいるのが銀時で、助手席にいるのが眞銀である。
「おじさ~ん、マジで逃げ切れると思ってんの?」
「今時、脱獄成功させるなんて宝くじで一等当てるよりむずいよ」
「いいから右曲がれ」
脱獄犯の指示通りパトカーは目的地に向かい走っている
「逃げ切りたいんじゃねぇ。今日一日だ。今日一日だけ自由になれればそれでいい。特別な日なんだ今日は……」
「みなさーん!今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコー!」
『とうきびウンコォォ!!』
「今日は浮き世の事なんか忘れて楽しんで行ってネクロマンサー!」
『ネクロマンサー!』
「じゃあ一曲目『お前の父ちゃんチョメチョメ』!」
「なんだよこれ……」
脱獄犯によって連れて来られたのは武道館で、そこではアイドルのライブが行われていた。
脱獄犯は他の観客同様、テンションが上がって盛り上がっていた。
その異様な光景に思わず銀時はそう言う。
「知らないの銀兄?今人気沸騰中のアイドル、寺門通だよ。通称お通ちゃん」
その隣で眞銀はポップコーンを食べつつ言う。
「なんでお前が知ってんの?」
「前一回だけモデルの仕事で一緒になったことがあるの。その時、友達になってね。そう言えば、今日初ライブって言ってたっけな」
「なるほど。つまりあのおっさんはアイドルのライブの為に脱獄したって訳か……………テメー人生何だと思ってんだ!」
はしゃいでる脱獄犯の頭に踵落しを決めながら銀時は叫ぶ。
「アイドルの為に脱獄だ?一度の享楽の為に人生棒に振るつもりか?そんなんだから、ブタ箱にぶち込まれんだ、バカヤロー」
「人生棒に振っちまった俺だからこそ、人生には見落としちゃならねぇ大事な事があるのを知ってるのさ。さぁ、楽しもう!L・O・V・E・お・つ・う!」
必死に声を上げ、手でL・O・V・Eの文字を作る脱獄犯に呆れながら銀時は足を出口に向ける。
「やってらんねぇ、帰るぞ、眞銀、神楽」
「えぇーもう少しみたいんきんたむし」
「影響されてんじゃねぇぇ!」
「あたしももう少しいるよ。忘れてたとは言え、友達の初ライブだしね」
「たっく………遅くなんじゃねぇぞ」
そう言って銀時は一人帰ろうとする。
だが、その時、観客の中に見知った眼鏡がいることに気付いた。
「そこぉ!もっと声張れや!」
「はいっ!隊長!」
「おい、お前はいつから隊長になったんだ?」
「何言ってんだ。俺は生まれた時からお通ちゃん親衛隊長だ……ギャァァァァァァァァ!銀さん!?何でこんな所に!?」
「こっちが聞きてぇわ。テメーにこんな趣味があったとは……テメーの姉ちゃんになんて謝ればいいんだ」
「僕が何しようと勝手だろ!もうガキじゃねぇんだよ!」
何時になく強気な新八が銀時に文句を言ってると、一人の女性が声を掛けて来る。
「ちょっとあなた達、ライブ中にフラフラ歩かないで下さい。他のお客様のご迷惑になります」
「すいませんマネージャーさん!僕が締め出しとくんで!」
「あら親衛隊の方?頼むわね、今日はあの子の初ライブなんだから」
声を掛けて来たマネージャーがそう呟くと脱獄犯の声が聞こえて来る。
「L・O・V・Eお・つ・う!」
「あなた……」
「ん?あ………よ、よう……」
「おめぇがお通のマネージャーやってたなんてな………親子二人でのし上がったってわけか。たいしたもんだ」
「貴方に言われても何も嬉しくないわ。今更、よく平然と顔を出せたものね。それに、貴方まだ服役中じゃなかったの?なんでここに居るのよ?」
お通母の言葉に、脱獄犯もといお通父は何も答えなかった。
それが全てを語っていた。
「呆れた。十三年前から何も成長してないのね。貴方が好き勝手生きるのは結構だけど、私達親子の様にその陰で泣きを見る者がいるのを考えたことがある?消えてちょうだい。そして二度と私達の前に現れないで。…………あの娘に、嫌な事思い出させないでちょうだい。自分の父親が………人殺しなんて」
そう言い残し、お通母は去っていく。
一人残されたお通父が一人項垂れていると左右からガムとポップコーンが差し出される。
「ガム食べる?」
「それともポップコーン(キャラメル味)がいい?」
「…………んなガキみてーなもん食えるか」
「人生楽しく生きるコツは童心忘れねぇこったよ。まっ、娘の晴れ舞台見るために脱獄するなんざガキみてーなバカじゃ出来ねぇか」
「娘の為に脱獄とか、観客を泣かせに来る映画みたいじゃん。おっちゃん、中々に漢だよ」
「……………そんなんじゃねぇよ。昔………約束しちまったんだ」
「ら~ららら~ら~ら~♪」
「ワハハハハハ!やっぱりお前は俺の娘だな!音痴にも程があるぞ!」
「ふん!今に見てな。練習してうまくなって、いつか絶対歌手になってやるんだから!」
「お前が歌手になれるならキリギスでも歌手になれるわ」
「うるせぇボケ!なるつったらなるって言ってんだろ!」
「面白ぇじゃねぇか。お前が歌手になれたらよぉ、百万本のバラ持って俺がいの一番観に行ってやるよ」
「絶対だな!」
「あぁ、約束だ」
「覚えてる訳ねぇよな。いや、覚えてたとしても思い出したくもねぇだろ。人を殺めちまった親父のことなんかよぉ………俺の所為でアイツらがどれだけ苦労したかしれねーんだから。顔も見たくねーはずだ」
「そんな訳ないじゃん」
すると唐突に眞銀は空になったポップコーンの容器を握りつぶしながら言う。
「きっと、お通ちゃん、おっちゃんに会いたがってると思うよ。だって、お通ちゃんのお父さんでしょ?なら、会いたくない娘なんているわけないじゃん」
「…………ンな訳ねぇーよ」
そう言い、お通父は立ち上がる。
「帰るわ。バラも買ってくるの忘れちまったし………迷惑かけたな」
「銀ちゃーん!しろちゃーん!」
その時、神楽がコンサートホールから慌ててやってくる。
「どした?」
「会場が大変アル!お客さんの1人が暴れ出してポドン発射」
「普通に話せ、わけわかんねぇよ」
お通語を使う神楽の頬を銀時が両側から掴み普通に話すように頼む
「いやー、あの会場にですね。天人が居ましてね、それがまた厄介な種族でしてね。興奮すると好きな相手を捕食すると言う変態天人なんです」
「なんで神楽ちゃんが標準語なのかは置いといて…………それってヤバくない?」
「お通ちゃん……僕と一緒になろう、胃袋で」
「隊長ー!会員ナンバー49が暴走し始めましたー!」
「あれも会員だったのか……!マスコットキャラかなんかだと思ってた」
天人は新八の親衛隊の会員だったらしく、神楽の言っていた通りステージで歌うお通の元まで歩いていく。
そして腹部にある口を露わにしてお通に襲いかかる
「イカン!お通ちゃんが!」
「お通!早く逃げるわよ!」
「そ、それが腰が抜けちゃって………!」
「お通ちゃーーん!」
腰が抜けて立てないお通とお通を助けようとするお通母に天人の腕が襲い掛かる。
すると、横からお通父が頭に科袋を被り、お通を横から突き飛ばし、天人の腕を受け止めた。
「お通!早く逃げろぉ!」
必死に天人の腕を抑えようとするが、十年近く刑務所に入れられ、筋力の衰えたお通父はあっさりと叩き飛ばされ倒れる。
だが、時間稼ぎには十分だった。
お通父が飛ばされると同時に、銀時と眞銀は木刀と特殊警棒を手に天人に攻撃をする。
天人は仰け反り動きが止まる。
「行けぇ!僕らもお通ちゃんを守れぇ!」
そこに、新八の合図で親衛隊も木刀を手に天人に襲い掛かる。
一成攻撃を食らい、天人は倒れ、意識を失う。
それと同時に、お通父は意識を取り戻した。
「あ、気が付いた……!」
「無茶するねぇアンタ……こんなバカな真似して……」
「別に……ただのファンさ……」
「おい、おっさん」
頭を振りながら立ち上がるお通父に銀時はある物を投げ飛ばす。
それは新聞紙に包まれた数本のタンポポだった。
「バラ百万本には及ばねぇが、残りは愛情で誤魔化せや」
「じゃ、頑張れよ、おっちゃん」
そう言い残し、銀時と眞銀、神楽、そして新八率いる親衛隊は引き上げる。
(馬鹿野郎……あんな約束覚えてるわけねぇだろうが……だが、この際覚えてようと覚えて無かろうと関係ねぇや……俺は俺の約束を果たそう………)
お通父は何も言わず、無言でお通に花束を差し出す。
(お通……しっかりやれよ)
そして、帰ろうとしたその時―――――――
「あのっ!今度はバラ持って来てよね!それまで私、此処で待ってるからさ!お父ちゃん!」
お通の言葉にお通父は涙を流しながらコンサートホールを出る。
「ねぇ、言ったでしょ、会いたがってるって」
「ああ……お嬢ちゃんの言う通りだった…………お別れなんかじゃねぇ……必ずまた会いに来てやる……今度は胸張ってな……」