ある日の昼頃。
銀時と眞銀、神楽は新八に呼ばれあるラーメン屋に来ていた。
銀時はパフェを注文し、眞銀は大盛チャーハン、神楽はジャンボラーメンを食べていた。
「妙にストーカーが?」
チャーハンを頬張りながら眞銀は尋ね返す。
「そうなんですよ。スナックのお客さんらしくて。何でも姉上に惚れたとかで、しつこく付きまとってくるんですよ。それに相手は刀を持ってましたし、もし何かあったら………」
「よかったじゃねーか。嫁の貰い手が見つかってよ」
新八が心配する中、銀時はそう言う。
「それに帯刀してたってことは幕臣か何かだろ?玉の輿じゃねぇか。本性バレねぇ内に籍入れとけ、籍」
「それ、どーゆー意味?」
お妙は銀時の頭を掴み、そのままパフェが入っていた器事、頭を叩き付ける。
「最初はね、その内諦めるだろうと思って放って置いたんだけど、気が付いたら、何処に行ってもあの人が居て、ああ異常だって」
「はい、残り三十秒」
「ハイハイ、ラストスパート」
「神楽ちゃん、噛むんじゃなくて飲み込むんだよ。ラーメンは飲み物だよ」
「頼むぞ、金持ってきてねーんだから」
「きーてんの、アンタら!?」
お妙の話をスルーし、ラーメンを飲み込む神楽と、それを応援する銀時と眞銀だった。
「俺にどーしろってんだよ?依頼なら出すもん出してもらわにゃ」
「新八、いくら従業員だからって身内贔屓するあたし達じゃないよ。そこら辺はきっちりするからね」
「銀さん、眞銀さん。僕もう二ヶ月も給料貰ってないんすけど、出るとこ出てもいいんですよ?」
「何処だ、ストーカーめ!成敗してくれるわ!」
「女の敵はあたしの敵だ!出て来い!」
「分かりやすいな、おい」
驚きの変わりように、新八は冷ややかな目で二人を見る。
「なんだぁぁぁぁ!やれるものならやってみろぉぉぉぉ!」
「本当に出てきちゃったよ」
二人の挑発に乗せられ、近くのテーブルの下からゴリラの様なストーカーが現れる。
「ストーカーと呼ばれて、出て来るとは己をストーカーであることを認めるのか?」
「人は皆、愛を追い求めるストーカーよ」
「おい、ゴリラ。一途とストーカーは紙一重って言葉知ってる?」
「お嬢ちゃん、初対面の人に対してゴリラ呼びはないんじゃないの?それより、お前、先程よりお妙さんと親しげに話しているが、どういう関係なんだ?羨ましいこと山の如しだ」
「許婚です」
するとお妙は急にそう言い出し、銀時と腕を組む。
「私、春にこの人と結婚するんです」
「え?そーなの?」
「もう、あんな事やこんな事しちゃってるんです。だから、私の事は諦めて」
「あ、あんな事やこんな事やそんな事を!?」
目を血走らせ、今にも怒り狂いそうなゴリラは声を荒げるも、すぐに冷静になる。
「いや、いいんだ、お妙さん!君がどんな人生を歩んでいようと、俺はありのままの君を受け止めよう。君は、けつ毛ごと俺を愛してくれたように!」
「愛してねーよ」
「オイ、白髪パーマ!」
お妙の話も聞かず、ゴリラは銀時に指を差す。
「お前がお妙さんの許婚だろうと関係ない!お前なんかより、俺の方がお妙さんを愛してる!決闘しろ!お妙さんを賭けて!」
何故か銀時とストーカーゴリラが決闘することになり、一行は河原へ移動する。
銀時はちょっと厠にと言って、その場を離れ、河原には現在ゴリラだけがいる。
「余計な嘘つかなきゃよかったわ。なんだが、大変な状況になってる気が………」
「過ぎたこと言っても仕方ないよ。大丈夫だって」
「でも、あの人多分強いわ。決闘を前にあの落ち着きぶり………何度も死線を潜り抜けてきた証拠よ」
「それでも、大丈夫だよ。銀兄が誰かに負けるなんてこと絶対に無いよ………あの人以外は」
最期の部分だけ付け加える様にボソッと言い、眞銀はたい焼きを頬張る。
「おい!アイツはどーした?」
「あーなんか厠行ってくるって言ってました」
新八がそう言った直後、銀時が河原に現れた。
「遅いぞ、大の方か?」
「ヒーローが大なんてするわけねーだろ。糖の方だ」
「糖尿に侵されたヒーローなんて聞いた事ねーよ!……それで、獲物はどうする?真剣使いたければ貸すぞ?」
ゴリラは自身が帯刀してる刀を見せながら言うが、銀時は平然と腰の木刀に手を掛ける。
「俺は
「貴様……なめてるのか?」
「悪ぃが、人の人生賭けて勝負出来る程、大層な人間じゃないんでね。代わりと言っちゃ何だが俺の命を賭けよう」
その言葉に眞銀以外の皆が驚く。
「お妙の代わりに俺の命を賭ける。テメーが勝ってもお妙はお前のモンにならねーが、邪魔な俺は消える。後は口説くなりなんなり好きにすればいい。もちろん、俺が勝ったらお妙から手は引いてもらう」
「(自分の命を白刃の元に晒し、負けても私に危害を及ぼさないようにするつもり!?)ちょ、止めなさい!銀さん!」
お妙は橋から身を乗り出そうとするが、それを眞銀が止める。
「大丈夫だよ、妙。銀兄は絶対に負けないから。だから、信じて」
そう言う眞銀は何時になく、真剣だった。
その目は兄の勝利を信じてやまない光があった。
それを見て、お妙はゆっくり手すりから手を離した。
「お前……いい男だな・お妙さんが惚れるはずだ。いや、女より男にモテる男と見た」
そう言い、ゴリラは持っていた刀を地面に置く。
「小僧、お前の木刀貸せ」
ゴリラは橋の上に居る新八を見上げそう言う。
新八は腰の木刀を取ろうとすると、それより早く一本の木刀がゴリラの前に落ちる。
「テメーも良い男じゃねぇか。使えよ、俺の自慢の愛刀、洞爺湖だ」
「銀さん!」
新八から木刀を投げ渡され、銀時は木刀を片手で持つ。
そして、ゴリラも銀時の木刀を手に両手で構える。
「いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!」」
互いに走り出し、木刀を振りかぶる。
そして、ゴリラが勢いよく木刀を振り下ろそうとする……………が、振り落とそうとした直前、木刀の刀身が勢いよく折れる。
「あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
狼狽えるゴリラに対し、銀時は容赦なく木刀を振る。
「ちょっと待って!先っちょがねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そのままゴリラは殴り飛ばされ、地面を滑りながら仰向けに倒れる。
「流石、銀兄」
「えっと……眞銀さん、これって一体………」
「厠で木刀を削ってたんだよ。振ったら折れるぐらいに」
「そ、そこまでやるんですか?」
「銀兄ならやるよ。だって、銀兄は守るためなら何でもするからね」
そんな話をしてる中、銀時はへらへら笑いながら近づいて来る。
「よぉ~、どうだい、この鮮やかな手ぐちゃぶ!?」
すると、新八と神楽が橋から飛び降り、銀時に蹴りを入れる。
「あんなことしてまで勝って嬉しいんですか、この卑怯者!」
「見損なったヨ!侍の風上にも置けないね!」
二人から殴る蹴るの暴行を受け、銀時は若干涙目になる。
「もう帰る!二度と私の前に現れないで!」
「暫く休暇もらいます!」
そう言い残し、去っていく新八と神楽を見て、お妙は一人微笑んでいた。
「全て丸く収めるとか言っておきながら、結局は銀さんが泥被っちゃったわね。不器用な人」
「それだけじゃないよ」
眞銀はタコ焼きを食べつつ、一息ついてから話だす。
「銀兄は妙を守るだけじゃなく、あのゴリラも守ったんだよ」
「それってどういう事?」
「あのゴリラ、幕府の人間で刀を持ち、常に戦ってる奴ってことは警察関係の人間ってこと。そんな人が、一般人に負けたとなれば、その人の経歴に傷がつくでしょ。でも、卑怯な手を使われて負けたとなれば、いくらでも説明が付けるしね」
眞銀はそう言い、空になったタコ焼きの器を捨てて、橋を降りる。
「銀兄、お疲れ。貧乏くじ引いたね」
「なんでこんな惨めな気分なんだろ?」
「ほらほら、泣かないの。今日は飲みに行こう、奢るからさ」
「マジでか!?流石、我が妹!」
(流石は妹って所ね。兄の事、よく理解してる………でも、あれじゃあ、どっちが下なのか分からないわね)
お妙は心の中でそう思い、眞銀に連れられて、飲みに行く銀時たちを見送った。
「トッシー……見廻り退屈だよぉ~……」
「文句言ってる暇があったら、攘夷浪士の一人でも見つけろ。後、トッシー言うな」
「そう言ったって、見廻りなんて退屈で暇なんだもん」
真選組副長の土方と局長補佐の由紀奈は二人で市内の見回りをしていた。
退屈だと後ろで愚痴る由紀奈をと共に街を歩いていると、橋に人だかりが出来ており、土方はそれに近づく。
「おい、何の騒ぎだ?」
「何々?喧嘩?喧嘩でもあったの?」
「いや、喧嘩じゃなくて決闘でさ」
「なんでも女を取り合ってのことらしいですよ」
「女だぁ?くっだらねぇ。何処のバカが……」
「おお!少女漫画みたいな展開!さしずめ、やられたライバルはナルシストのイケメン男子って所かな?」
土方と由紀奈は相手がどんな奴なのか覗こうと、橋から下を見る。
「あ………近藤局長……」
「残念、イケメンかと思ったらゴリラだった」