「愛だぁ?夢だぁ?若い時分に必要なのはそんな甘っちょろいもんじゃねーよ」
「本当に必要としているモノ。それはカルシウム。そう、カルシウムなのだ」
「カルシウムさえとっときゃ全てうまくいくんだよ」
「受験戦争、親との確執。気になるあの子」
「それも全てカルシウムとっときゃ全てうまく…………」
「行くわけねぇーだろ!カルシウム取ったってなぁ、車に撥ねられりゃ、骨も折れるわ!」
ここは大江戸病院。
前回、定春から逃げる為、公園から飛び出した時、銀時たちは車に撥ねられた。
銀時と眞銀は軽い擦り傷はあったものの殆ど無傷だったが、新八は見事足の骨が折れていた。
そのため、現在新八は病院で入院している。
三人は、新八のお見舞いに来ていた。
「俺も、眞銀も撥ねられたけどピンピンしてるじぇねーか」
「毎日コレ食べてるお陰だね」
そう言って眞銀は自分が食べてる牛丼と銀時が飲んでるイチゴ牛乳を指差す。
「イチゴ牛乳しか飲めないくせになんでエラそーなんだよ!後、牛丼にカルシウム関係ねぇーし!」
「んだとコラ!コーヒー牛乳だって飲めんぞ!」
「牛丼ばかにしてんのか!ああん?」
言い合いを始める中、新八の前の患者の相手をしていたナース長が怒鳴る。
「やかましーわ!他の患者さんの迷惑なんだよ!今まさに、デッドオアアライブをさまよう患者さんだっているんだよ!」
「あ、すんませーん」
「何か大変な人と相部屋になってるね」
「僕が来る前からあんな調子らしくて、もう長くはないらしいですよ」
「その割には家族とか来てねーな」
「あの年までずっと独り身だったらしいですよ。それに相当な遊び人だったって噂ですし」
「ま、人間死ぬ時は独りさ」
「そうそう、死なんて結局は自分自身との戦い出しね」
そう言い、銀時と眞銀は立ち上がる。
「じゃ、俺らもう行くわ」
「万事屋の方の仕事もあるしね」
「万事屋アアアアアアア!!?」
その瞬間、さっきまで生死の境を彷徨っていた老人が飛び起き、今にも死にそうな体で近寄って来る。
「今……万事屋って言った………?それ……なんでも……して……くれんの?」
「いや、なんでもって言っても死者の蘇生なんて無理よ!?」
「そう言うのは教会の神父とかに頼んで!」
死に掛けの老人が起き上がり近寄ってくることに銀時はビビり、眞銀も銀時の腰にしがみ付いて震える。
だが、老人はそんなのもお構いなしに、ある物を差し出す。
それはかんざしだった。
「「え?」」
「コ……コレ……コイツの持ち主探してくれんか?」
「団子屋“かんざし”?いや、知らないですね」
爺さんから頼まれたかんざしの持ち主探しは、なんでも昔ある団子屋で働いていた娘さんの物らしく、爺さんはそれを返したいから、その娘さんを探してほしいとのことだった。
銀時は神楽を連れて、団子屋があった場所へ聞き込みに行き、眞銀は由紀奈の所に行っていた。
「五十年前ぐらいにあった団子屋らしいんだけどさ、ちょっと人探し頼まれてさ。そこで働いてた綾乃さんって人。由紀奈って警察でしょ?だから、ちょっと調べてもらおうかなって」
「いや、五十年前だと真選組まだ出来てないよ。私どころか局長だって生まれてないし。それにいくら警察でも五十年前にあった団子屋で、そこで働いていた人間の情報なんかないってば。てか、そもそも
「警察なのに全く使えない。だから、税金泥棒とか言われるんだよ」
「行き成り呼び出されて、無茶なこと言われた揚句、批判されるって………」
由紀奈は項垂れるが、すぐにあることを思い浮べた。
「そう言えば、眞銀の家って犬飼ってるよね?」
「まぁ、犬っちゃ犬だけど………」
「犬の嗅覚って凄いらしいよ。その犬に探させたら?」
「いや、流石に五十年前じゃ匂いも流石に残ってないでしょ」
「ともかく、一回試してみたら?」
「で、結局銀兄たちも同じ結論になったんだ」
「俺は流石に無理だと思うんだけどな。五十年経ってんだ。匂いなんて残ってるかよ」
「分かんないアルヨ。もしかしたら、綾乃さん、体臭キツかったかもしれないアル」
神楽は定春にかんざしの匂いを掻かせながら言う。
「バカか、お前。べっぴんさんってのはな、理屈抜きで良い匂いがするもんなの」
歩き出す定春の後ろに付いて行きながら、銀時は言う。
「でも、銀兄。べっびんさんだからこそ、体臭がキツイってのもいいんじゃない?」
「確かにそれも一理あるな。完璧な女より、逆になんかこう燃えるものが………あれ?」
定春が止まるのを見て、銀時も止まる。
「オイ定春!お前、家戻ってきてんじゃねーか!」
定春が来たのは万事屋だった。
「やっぱダメじゃん。完全に散歩気分じゃん」
眞銀が溜息を吐く中、定春は二階の万事屋ではなく、一階のスナック、つまりお登勢の店の戸を叩く。
「……オイ、まさか」
「なんだい?家賃払いに来たのかい?お前こちとら夜の蝶だからよォ、昼間は活動停止してるっつったろ来るなら夜来いボケ」
「これはないな」
「ナイナイ」
「綾乃ってツラじゃないもんね」
「「「アハハハハハハハハハ!!!」」」
「なんで私の本名知ってんだい?」
その瞬間、三人は思わず固まった。
数秒固まり、そして―――――
「嘘つくんじゃねぇよ、ババァ!おめーは綾乃!?百歩譲って上に“宇宙戦艦”がつくよ!」
「もしくは“機動戦士”だよ!」
「オイィィィ!メカ扱いかァァァァァ!お登勢ってのは源氏名。夜の名前よ。私の本名は寺田綾乃って言うんだィ………って何嫌そうな顔してんだコラぁ!」
三人は探していた綾乃がお登勢であったことに嫌そうな顔を浮かべ、若干やる気を失い掛けていた。
その時、お登勢の店の電話が鳴り、お登勢は受話器を手に取る。
「はい、スナックお登勢………なに?銀時と眞銀ならいるよ。新八から電話」
「なによ?」
「なんかジーさんがヤバいとか言ってるけど」
それを聞いた瞬間、銀時は定春の背中に眞銀と神楽、お登勢を乗せると、自分も定春に乗って、病院へと向かった。
病院が見えると、爺さんの病室目掛け、一気に飛び、窓からダイナミックに入室する。
「銀さん!それに、眞銀さんも!」
「よぉ、爺さん。まだ生きてっか?」
「お探しの人、連れて来たよ」
「え!?お登勢さん!?」
新八は二人が連れて来た人物がお登勢であることに驚く。
そして、それと同時に爺さんの意識が戻った。
「先生!意識が……!」
ナース長が慌て始め、医師も驚くが、銀時と眞銀はそれを無視し、ベッドの近くまでお登勢を連れて来る。
「かんざしはきっちり返しといたぜ」
「どう、見える?」
(………ああ見えるともさ)
爺さんは震える手で、酸素マスクを外し、お登勢を見つめる。
そして――――――
「……綾乃さん、アンタやっぱ……かんざしよく似合うなぁ」
「バーさんよ、アンタひょっとして覚えてたってことはねーよな?」
病院からの帰り道、銀時はお登勢にそう尋ねる。
「フン、さぁね」
お登勢は一言そう言って、銀時たちを振り返る。
その時、かんざしがシャンっと音を立てる。
「さてと……団子でも食べに行くとするかい」
そう言ったお登勢の姿は、若い一人の女の姿になっていた。
「ん……あ、ああ」
「あ、あれ?今……」
銀時と眞銀は目を擦り、もう一度お登勢を見る。
そこにはやはり見慣れた顔のお登勢がいた。
その若い女と言うのは、お登勢の若い頃、つまり爺さんが知っている綾乃の姿であることを銀時と眞銀は知らなかった…………