銀魂~白夜叉と白狼姫~   作:ほにゃー

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大切なもの程意外と近くにある

ある日、万事屋に桂は菓子折りを持って訪ねていた

 

「ごめんくださ〜い桂ですけど〜……留守か。ことは一刻を争うというのに」

 

桂が困り果ていると扉が開いて中から定春が出て来た。

 

冷や汗を流す桂だが、なんとか会話を切り出す

 

「…すっ、すみません…銀時くんと眞銀ちゃんいますか?」

 

「……………」

 

「あの……じゃあ、茶菓子だけでも置いていくんでよければ食べてく…あ」

 

頭から定春に食われ、桂の悲鳴がそこら一帯に木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂が定春に食われている時、銀時たち万事屋一行はとある幕府の重鎮の屋敷に居た。

 

「……いや今までも二日三日家を空けることはあったんだがね。さすがに一週間ともなると………」

 

依頼の内容は家に帰ってこない不良娘の捜索だったが、銀時はと言うと二日酔いで話を上の空で聞いていた。

 

眞銀も夜遅くまでレンタルDVDを見ていたため、眠気と格闘しつつ大量に買った缶コーヒーを飲んでいた。

 

「ちょっと銀さん、眞銀さん。しっかりしてください。だから、あんま飲むなって言ったんですよ。眞銀さんも、遅くまでDVD見てるから」

 

「仕方ねぇだろ……久しぶりの依頼だったんだ。飲まずにいられるかよ……」

 

「今日の朝十時までに返さないと延滞金取られるから仕方ないじゃん………」

 

小声で言い合う三人に依頼人は一枚の写真を取り出す。

 

「連絡は一切ないし、親の私が言うのも何だが、キレイな娘だから、何かよからぬことに巻き込まれているのではないかと不安になってしまって………」

 

そう言って差し出された写真はガン黒に金髪で、全体的に肉付きの良い、つまり太った女が映っていた。

 

「そーっスねェ、何かこう巨大な…ハムを作る機械に巻き込まれている可能性がありますね………」

 

「もしくはハンニバルでレクターなサイコパス精神科医に料理されて、不特定多数に振る舞われてる可能性も……」

 

銀時は頭の隅っこに昨日のつまみに食べたハムカツのハムを思い出し、眞銀は昨日見たDVDのドラマの内容を思い出しつつ言った。

 

「前者は兎も角、後者の可能性がエグイのだが………ともかく、なにかの事件に巻き込まれてんじゃないかと………」

 

「事件?ああ、ハム事件とか?」

 

「もしくは、人肉事件?」

 

「オイ馬鹿兄妹。たいがいにしろよ、せっかく来た仕事パーにするつもりか。で……もホント、コレ僕らでいいんですかね?警察に知らせた方がいいんじゃないですか?」

 

「そんな大事にはできん。我が家は幕府開府以来徳川家に仕えてきた由緒正しき家柄、娘が夜な夜な遊び歩いているなどと知れたら一族の恥だ。なんとか、内密に連れ帰ってほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

依頼を請けた銀時たちは、依頼人の娘がよく出入りしていた店へと向かい聞き込みを始めた。

 

「あー?知らねーよ、こんな女」

 

神楽はカウンターにいたバーテンダーの鳥天人に娘の写真を見せつつ、尋ねる。

 

「この店によく遊びに来てたゆーてたヨ」

 

「んなこと言われてもよォ嬢ちゃん。地球人の顔なんて見分けつかねーんだよ…名前は?」

 

「えーとハ…ハム子…」

 

「嘘つくんじゃねぇ!てか今つけたろ!そんな投げやりな名前付ける親がいるか!」

 

「忘れたけどそんなんアル」

 

「オイぃぃぃぃ!!捜す気あんのかァ!?」

 

鳥天人と漫才みたいなことを繰り広げる神楽を見ながら、新八は目の前の銀時と眞銀に声を掛ける。

 

「……銀さん、眞銀さん。神楽ちゃんに任せてたら永遠に仕事終わりせんよ」

 

「もうハム子の捜索とかどうでもよくない?」

 

「そうそう。どーせ、どっかの男の家にでも転がり込んでるだろ、あのバカ娘。ハムでも買って帰りゃ、あのオッサンも誤魔化せるだろ」

 

「もしくは調理したハム料理を持って行けば大丈夫だよ」

 

「誤魔化せる訳ねーだろ!どんだけハム引っ張るつもりだ!後、眞銀さんはどんだけDVDの内容引っ張るんですか!」

 

ツッコむ新八だったが、銀時と眞銀はそれをスルーし立ち上がる。

 

「ワリーけど、二日酔いで調子悪いんだよ。ちょっと便所行ってくらぁ」

 

「あたしも。コーヒー飲み過ぎて膀胱がヤバイ」

 

「後は適当にやっといて新ちゃん」

 

「ちょ、二人とも!」

 

トイレに去っていく二人を見ていると、後ろから来た人と新八がぶつかる。

 

「あ、すみません!」

 

慌てて謝るが、ぶつかった人、もとい天人は上着を軽くハタキ、新八を見下ろす。

 

「……小僧、何処に目ェ付けて歩いてんだ?」

 

そう言い、手を伸ばして来る天人。

 

新八は思わず警戒するが、天人は新八の方に合った小さな埃をつまみ、吹き飛ばす。

 

「肩にゴミなんぞ乗せてよく恥ずかしげも無く歩けるな。少しは身嗜みに気を付けやがれ」

 

それだけ言うと、天人は去っていく。

 

(……なんだ、あの人)

 

「新八」

 

天人の事を考えていると、急に神楽に呼ばれ振り返る。

 

「もう面倒だからこれで誤魔化すことにしたヨ」

 

神楽が連れて来たのは太った男だった。

 

「どいつもこいつも、仕事なんだと思ってんだ、チクショー。大体誤魔化せる訳ないでしょ!ハム子って言うよりハム男じゃん!」

 

「うっせーな。ハムならどれ食ったって同じじゃねーか、クソが」

 

「何!?反抗期!?」

 

新八がそう言ってると、突如男が倒れる。

 

「ハム男!?」

 

「おいぃぃぃ!駄キャラ如きに無駄に文字数使わせるんじゃねぇーよ!」

 

「あんなに飲むからヨ!」

 

神楽が揺する中、新八はあることに気付く。

 

新八も最初は男がただ酔っぱらってるだけだど思っていた。

 

だが、男は虚ろな目をし、涎を垂らしてヘラヘラと笑っていた。

 

「コイツ……酔っぱらってるんじゃない……」

 

「ああ~たっくよぉ~……後は俺がやるからお客さんは下がって」

 

そこに、先程の鳥天人がやって来た男を抱える。

 

「どいつもこいつもしシャブシャブシャブシャブ………」

 

「シャブ?」

 

聞きなれない単語に新八は尋ね返す。

 

「最近ここら辺で出回ってる新種の麻薬(クスリ)だよ。危ねーから、お客さんたちも気を付けなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~、スッキリした。でも、眠気はまだ覚めないわ………」

 

用を出し終えた眞銀は洗面所で自分の顔を見ながら呟く。

 

「昔は夜更かししても次の日ピンピンしてたのに………あたしも歳かな………」

 

蛇口を捻り、水で顔を洗ってると、不意に背後から殺気を感じる。

 

素早くしゃがむと、眞銀の首があった位置に何かが一閃する。

 

顔を上げると、蛇口ごと洗面台は破壊され、水が夥しく溢れていた。

 

振り返ると大きい肉切包丁を手にした長身の男がいた。

 

「躱したか。まぁ、もっとも君ならこれぐらいやってのけると思っていたがね」

 

「おっさん、ここ女子トイレだよ。痴漢扱いされても文句言えない立場にいるって分かる?」

 

「君の方こそ立場を理解出来てないようだ。いくらここで叫ぼうか外に君の声が聞こえることはない」

 

男は包丁を下ろし、柔和な笑みを浮かべ紳士な対応をする。

 

「実はどうも最近私達の周りを嗅ぎまわる輩がいるらしくてね」

 

そう言い、男は包丁を片手で振り回す。

 

「それって君達の事じゃないの?」

 

「は?何の話?私達はただ………ちょっと待って。今、君達って言った?」

 

眞銀がそう尋ねると、男はにやりと笑った。

 

「外にいた眼鏡とチャイナ娘、それと男子トイレに居る銀髪の天パ………お仲間だろ?」

 

「アンタ…………銀兄たちに何をした!?」

 

眞銀は特殊警棒を抜き、男に殴り掛かる。

 

だが、男は包丁で特殊警棒を防ぐ。

 

だが、眞銀の特殊警棒は一つじゃない。

 

眞銀はもう一本の特殊警棒を出し、横から男の顔を殴ろうとする。

 

しかし、警棒が届くよりも早く、眞銀を痛みが襲った。

 

僅かな痛み。

 

眞銀は自身の脇腹を見下ろす。

 

そこには一本のナイフが突き刺さっていた。

 

「うっ………!」

 

脇腹を抑え、眞銀はゆっくり後ろに下がる。

 

「そんなに深くは差してない。大人しく、お前らの情報を、桂の居場所を吐いて貰おうか」

 

「ヅラっちの居場所?………そっか、そう言う事か。たっく……ヅラっちの奴………人に迷惑掛けんじゃないよ………」

 

眞銀は苦笑しながら、何処にいるのかも知れぬ桂の顔を思い浮べる。

 

「仲間を売る気は無いか。女の侍は初めてだが、侍ってのはつくづく馬鹿だな。忠義だ何だと言いながら、捨てられ、揚句粛清の対象にされる。本当に愚かな生き物だ」

 

「愚かで結構だよ………あたしだって愚かだって思うしね。でも………アンタなんかに、その生き方を貫き、死んでいった侍たちの魂を馬鹿にする資格なんかない!今すぐ、侍たちの魂に詫び入れろ!」

 

「ふん。くだらない」

 

男は一瞬で眞銀の隣に立つ。

 

そして、眞銀に蹴りを入れる。

 

「がっ!?」

 

眞銀はそのまま床に倒れ、動かなくなる。

 

男は眞銀の首を持ち上げ、トイレの窓を開ける。

 

「侍なんぞに、いや、人間如きに頭なんぞ下げたら、“春雨”の名に傷が付く。・・……さようなら、小さな女侍。あの世で、言い夢見るんだな」

 

その言葉を最後に、男は眞銀を窓から落した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

眞銀は戦場にいた。

 

かつて自分が来ていた戦装束に身を包み、手には愛用していた小太刀を握り締め、敵を斬り殺していた。

 

「大丈夫……あたしが護るから……絶対に護るから………」

 

「護れねぇよ」

 

背後の屍がそう言う。

 

「お前は誰も護る事は出来ない」

 

「いつもそうだ」

 

「護れないものを護ると叫び」

 

「救えない者を救うと叫ぶ」

 

「お前はただの道化だ」

 

夥しい屍たちが立ち上がり、眞銀に近づき言う。

 

眞銀は顔色を絶望に染め、退く。

 

小太刀を握ってる手が震え、その手で顔を覆う。

 

「違う…!あたしは……あたしは……!」

 

「違くないさ」

 

「見てみろよ、お前の後ろを」

 

「その後ろの屍の山こそ」

 

「お前がただの道化であることの証さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「眞銀!しっかりしろ!」

 

その言葉に眞銀は目を覚ました。

 

目の前には銀時がいて。眞銀の肩を掴み声を掛けていた。

 

「銀……兄……」

 

「大丈夫か?お前、うなされてたぞ」

 

「………ここは?」

 

「俺の隠れ家だ」

 

眞銀の質問に答えたのは桂だった。

 

「ヅラっち、どうして………ってそれより!銀兄、新八と神楽ちゃんは!」

 

慌てて立ち上がろうとする眞銀だったが、脇腹の痛みによって立ち上がれずその場に蹲る。

 

「無理をするな。深く無いとは言え、脇腹を刺されたのだぞ。銀時も左腕が使えぬ上、肋骨も何本が逝ってる。もっとも、向うはもっと重傷だがな」

 

そう言って、桂は隣の部屋に寝かせてるハム子を見る。

 

「ハム子……見つけたんだ」

 

「銀時と一緒に居る所を俺の仲間が拾った。もっとも麻薬にやられて体の中はボロボロだ。死ぬまで廃人かもしれん」

 

「たっく、クソガキめ。やっぱやってやがったな」

 

「それより、お前達、これを知っているか?」

 

そう言って桂は白い粉の入った袋を見せる。

 

「最近、巷で出回っている“転生郷”と呼ばれてる麻薬だ。辺境の星だけにさく特殊な植物から作られ、嗅ぐだけで快楽を得られるが、依存性の強さは、他の麻薬の比ではない。若者たちの間で出回っていたが、皆、例外なく悲惨な末路を辿っている。この存在を根絶やしにするべく、俺たち攘夷党も情報を集めていた。そんな所に、お前達が降って来たんだ」

 

「………ヅラ、アイツらは言った何もんだ?」

 

「宇宙海賊“春雨”。銀河系で最大の規模の犯罪シンジケートだ。奴等の収入源は主に非合法薬物の売買による利益。末端とは言え、その触手が地球にも及んでいる。天人に蝕まれた幕府の警察機構はアテにはできん。我らの手でどうにかしようと思っていたが…………お前達が追い詰められるほどだ。時期尚早かもしれん」

 

桂がそう言う中、銀時は上着の着物を手に、立ち上がる。

 

「オイ、聞いているのか?」

 

「仲間が拉致られた。ほっとくわけにはいかねぇ。眞銀、お前も来るだろ?」

 

「当たり前じゃん」

 

眞銀も上着の着物を羽織り、警棒を袖に入れる。

 

「その身体で勝てる相手と?」

 

「………………人の一生は重き荷を負うて遠き道を往くが如し」

 

桂の問いに、銀時はそう答えた。

 

「昔な、徳川田信秀と言うオッサンが言った言葉でな」

 

「銀兄、違うよ。織田臣秀康だよ」

 

「お前ら二人とも違うぞ。誰だ、そのミックス大名。家康公だ、家康公」

 

「ま、誰かは置いといてよ、始めそれ聞いたとき何を辛気くせーことをって思ったが、なかなかどーして、年寄りの言う事は馬鹿にできねーな」

 

「誰しも大切なものを両手に抱えてる。でも、それは抱えてる時には気付かないんだよね」

 

「気付くのは、全部腕から落っことした時だ。もうこんなもん、二度と持たねぇって何度思ったか知れねぇ。なのに」

 

「いつの間にか、また背負ってたんだよね」

 

「捨てちまえば楽になるだろうが、それもできねー」

 

「だって、その重荷がないと、歩いていてもつまらないしね」

 

そう言う銀時と眞銀は空を仰ぎ、軽く笑っていた。

 

「………仕方あるまい。お前らには池田屋での借りがあるからな」

 

桂は立ち上がり、二人の隣に立つ。

 

「腹を怪我した身と、片腕が使えぬ身では荷物など持てまいよ。この俺も、力を貸そう」

 

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