「いや、なんか本当にすいません」
あの後、眼鏡店員もとい志村新八の姉、志村妙にフルボッコにされた銀時は二人の家である恒道館道場に、眞銀と共につれてかれる。
「お、俺も、作者さんがこの作品で書いてくれたもんではしゃいじゃって………調子に乗ってました!本当すんませんでした!」
銀時が志村姉弟に土下座をし謝罪をする中、眞銀は買ってきた肉まんとあんまんを交互に食べながら縁側でお茶を啜る。
「ごめんですんだら切腹はいらないわ。貴方のおかげでうちの道場は存続すら危ういのよ」
妙は短刀を抜きながら笑顔で言う。
「鎖国が解禁になって二十年。方々から天人がやってきて江戸は発展していったわ。でも、その一方、侍や剣、古きに誇った物は次々に滅んで行ってる。うちの道場も廃刀令の煽りを受け、門下生は皆去って行って、今や姉弟二人でアルバイトをして形だけは保っている状態。それでも、父の残した道場を守ろうと頑張って来たのに…………お前の所為で全部パーじゃボケェ!」
銀時に切り掛かろうとする妙を新八は抑える。
「姉上落ち着いて!!」
「君のお姉さん、ゴリラにでも育てられたの?わ、悪かったって!切腹はできないけどケツぐらい俺でも持つって!」
そういって銀時は懐から名刺を出す。
「何これ?………万事屋、坂田銀時?」
「ついでにあたしのもどうぞ」
肉まんを頬張りながら、眞銀も名刺を投げ渡す。
「こっちは……万事屋、坂田眞銀?」
「今のご時勢、仕事なんざ選んでいられねぇ」
立ち上がり、膝を払いながら銀時は言う。
「頼まれればなんでもやる商売を妹とやっててな。この俺、万事屋銀さんが困ったことがあればなんでも解決してや」
「だからお前に困らされてんだろうガァァァァ!」
「仕事紹介しろぉぉ!!!」
そういって二人は銀時を殴り蹴る。
「落ち着いて!仕事は紹介できないけど、面接のときに緊張しないおまじないを」
「「いるか!!」」
実の兄が暴行されているのにも関わらず、眞銀は平然と肉まん・あんまんを平らげ指についたあんこを舐めとっていた。
「……姉上、やっぱこの時代、剣術道場なんで無理だったんだよ」
銀時をボコった後、新八は溜息をつくように言う。
「こんな道場守ったどころで何も」
「損得なんて関係ないわ。親が大事にしていたものを子供が守るのに、理由なんているの?」
「でも姉上!」
その時、道場の扉が蹴破られ、黒い服を着た天人二人と、同じ天人だがその二人より背が低く偉そうなキノコのような髪型の天人が現れた。
「今日とゆう今日はキッチリ返してもらうでぇ!ワシ、我慢のもう限界や!」
「何?借金?」
「お前ら、ガキの癖にデンジャラスな世渡りしてんな」
「違う!僕たちじゃなくて父上が!」
「新ちゃん!」
新八が何かを言おうとするが、それを妙は遮る。
「約束やったな!借金返せへん時は、この道場売るって!」
「ちょっと!!待って下さい!!」
「なんや!!もうエエやろこんなボロ道場!!借金だけ残して死にさらしたバカ親父に義理なんて通さんでエエわ!!」
その瞬間、妙はその天人を殴る。
取り巻きの一人が妙を取り押さる。
「この
キノコヘアー天人が妙を殴ろうとするが、その手を捕まえる者がいた。
「おい、その辺にしとけよ。ゴリラに育てられたとは言え女だぞ」
銀時だった。
「貴様、何をしてるか!」
もう一人の取り巻き銀時を取り押さえようとするが、いつの間にか眞銀が移動し、特殊警棒を下から突き上げるように天人の顎に突きつける。
「落ち着きなよ。別に取って食うわけじゃないんだから」
銀時と眞銀の得体の知れない恐怖に天人だけでなく志村姉弟も戦慄する。
「なっ…なんやお前らァァ!この道場にまだ門下生なんぞおったんかイ!!」
ビビりながらも銀時から手を振りほどくのを見て、眞銀も警棒を袖にしまう。
「道場の件はもうええわ。その代わり、あんたに働いて返してもらうで」
そう言うと一枚の紙を妙の前に出す。
「わしなァこないだから新しい商売始めてん、ノーパンしゃぶしゃぶ天国ゆーねん。」
「ノッ…ノーパンしゃぶしゃぶだとォ!!」
「簡単に言うと空飛ぶ遊郭や。今の江戸じゃ禁止されとるけど、空の上なら役人の目も届かん。好き放題っちゅうわけや」
「ふざけるな!そんなの行くわけ…」
「わかりました、行きましょう」
「な!?姉上!」
新八は驚き妙を呼び止める。
「新ちゃん、アナタの言う通りよ。こんな道場護ったっていいことなんて何もない、苦しいだけ。…でもねェ私…捨てるのも苦しいの。もう取り戻せないものというのは、持っているのも捨てるのも苦しい。どうせどっちも苦しいなら、私はそれを守るために苦しみたいの」
そう言って妙は天人たちに連れて行かれた。
「んだよチキショー!!バカ姉貴がよォォォ!」
妙が連れて行かれた後、新八は庭で竹刀を振り回していた
「何が父上だよ!あのハゲ親父が何してくれたって言うんだよ!偶にオセロしてくれたぐらいだろ!」
「何?父ちゃんハゲてたの?」
「今はオセロって言うより、リバーシって言うのが若者だよ」
「いや、物理的にハゲてるわけじゃなくて、精神的に。後、オセロの呼び方とかどうでもいいしって、何やてんだよ!!?」
銀時は新八の家の今でケーキを作り、眞銀は蕎麦を打っていた。
「いや、定期的に甘いもの取らないと駄目なんだわ、俺」
「お腹空いちゃって」
「だったら、もっとお手軽なものにしろよ!」
その後、ケーキと蕎麦を完成させた銀時と眞銀はそれを食べ始め、新八に話しかける。
「姉ちゃん、追わなくていいのか?」
「…知らないッスよ、自分で決めて行ったんだから。……姉上もやっぱ父上の娘だな、そっくりだ。父上も義理だの人情だの、そんな事ばっか言ってるお人好しで、そこをつけこまれ友人に借金しょいこまされてのたれ死んだ。どうしてあんなに皆不器用かな、僕はきれいごとだけ並べてのたれ死ぬのだけは御免ですよ」
どんなに時代が変わろうと人には忘れちゃならねーもんがあらァ
親が大事にしてたものを子供が護るのに理由なんているの?
新八の頭に父と妙の言葉が浮かび上がる。
「今の時代そんなの持ってたって邪魔なだけだ、僕はもっと器用に生き延びてやる」
「そっか……でもさ、あたしには君が器用には見えないな」
新八は涙を堪えていた。
それを感じ取った銀時と眞銀は立ち上がる。
「侍が動くのに理由なんざいらねぇ。そこに守りたいもんがあるなら、剣を抜きゃいい」
「お姉ちゃんのことは好き?」
その言葉に新八は涙を流し無言で頷いた。