「おかわりヨロシ?」
神楽が空の茶碗を突き出し言う。
「てめー、何杯目だと思ってんだ?ウチは定食屋じゃねーんだっつーの。ここは酒と健全なエロをたしなむ店、親父たちの聖地、スナックなんだよ!」
お登勢は五合分の飯を食う神楽に怒鳴る。
「そんなにメシ食いてーなら、ファミレス行って、お子様ランチでも頼みな!」
「ちゃらついたオカズに興味ない。沢庵でヨロシ」
「食う割には嗜好が地味だな、オイ!ちょっと銀時、眞銀!何だいこの娘!もう五合も飯食べてるよ!どこの娘だい!」
スナックの一角でげっそりしてる銀時、眞銀、新八にお登勢が怒鳴る。
「五合か……まだまだこれからですよね」
「ウチにはもう、砂糖と塩しかねーもんな」
「パンの耳が最高のご馳走だよ」
「何だい、アイツ等。あんなに憔悴しきって………ん?」
お登勢が三人を見て若干不安になって隣を見ると、神楽が炊飯器を抱え、中の米を食らっていた。
「オイィィィィィィィ!!まだ食うんかいぃぃ!」
その後、一度全員落ち着き、お登勢に神楽の事情を話す。
「じゃあ、あの子も出稼ぎで
「そう。お金なくて、故郷に帰る為のお金、うちで集めるんだってさ」
「バカだねぇ。家賃もロクに払えない身分のクセに。あんな大食いどうするんだい?眞銀の稼ぎじゃ限界もあるだろ。言っとくけど、家賃はまけねぇよ」
「俺だって、好きで置いてる訳じゃねぇよ。あんな胃拡張娘」
その瞬間、銀時の頭にガラスのコップが当たり、砕け散り、銀時は倒れる。
「なんか言ったアルか?」
「「「言ってません」」」
「アノ、大丈夫デスカ?コレデ頭冷ヤストイイデスヨ」
痛がる銀時に片言で日本語を話す一人のホステスがハンカチを差し出す。
「あら?初めて見る顔だな。新入り?」
「ハイ、今月カラ働カセテイタダイテマス。キャサリン言イマス」
「キャサリンも出稼ぎで
「へ~立派だねぇ。どっかの誰かさんは、自身の食欲を満たす為だけに」
その瞬間、眞銀の頭にガラスコップが当たり、砕け散り、眞銀は倒れる。
「なんか言ったアルか?」
「「「「言ってません」」」」
「すみませーん」
店の扉が開き、男二人が入って来る。
「こういう者なんだけど、ちょっと捜査に協力してもらえない?」
やって来たのは役人だった。
「なんかあったんですか?」
「このへんで、店の売り上げが持ち逃げされるって事件が多発しててね。なんでも犯人は不法入国してきた天人らしいんだが、この辺はそーゆー労働者多いだろ。なんか知らない?」
「犯人はコイツです」
銀時が神楽を指差し言い、神楽はその指をへし折る。
「おまっ……何さらしてくれとんじゃぁぁ!!」
「下らない冗談嫌いネ」
「てめぇ故郷に帰りたいんだろーが!この際強制送還でもいいだろ!」
「そんな不名誉な帰国、ごめんこうむるネ。いざとなれば、船にしがみついて帰る。こっちに来る時も成功した。なんとかなるネ」
「不名誉どころか、お前犯罪者じゃねーか!」
「………なんか大丈夫そーだね」
騒ぐ銀時と神楽を見つめ役人が言う。
「もう帰っとくれ。ウチはそんな悪い娘雇ってな」
すると、外からスクーターのエンジン音が響く。
「アバヨ、腐レババア」
キャサリンが原チャリに乗り、後ろにレジやらなんやらを色々乗せて去って行った。
「まさか………キャサリンが……」
「お登勢さん!店のお金、レジごとなくなってますよ!」
「あれ?俺の原チャリもねーじゃねーか」
「そう言えば、私の傘もないヨ」
「あたしのローラースケートもない」
そして、銀時、眞銀、神楽の三人がキャサリンが去って行った方を見つめる。
「あんのブス女ああああああ!」
「血祭りじゃああああ!」
「ぶち抜いてやるわあああああ!」
三人は叫び、役人が乗って来たパトカーに乗る。
「ちょ、何処行くんですか!」
新八も叫び、パトカーに乗り込む。
役人の静止を無視し、神楽はパトカーのアクセルを全開にし、動かす。
「ちょっと三人共、落ち着きましょう!僕たちが出る幕じゃないですって!たかが、原チャリと傘と、ローラースケートにムキにならんでもいいでしょ!」
「新八よ、俺は原チャリなんかどうでもいい。ただ、原チャリのシートの借りたビデオ入れっぱなしでよ、このままだと延滞料金がとんでもないことになる。どうしよう」
「アンタの行く末が心配だよ!」
「あたしもローラースケートの中に一万円隠しててさ、それだけは回収したいの。後ついでに、銀行のカードも」
「へそくりより銀行のカードが大事でしょ!」
「延滞料金も銀行のカードも心配いらないネ。もうすぐレジの金丸ごと手に入るんだから」
「お前は、その綺麗な瞳のどこに、汚い心隠してんだ!そもそも神楽ちゃん、免許持ってないのになんか普通に運転してるけど!」
「人を撥ねるのに免許なんて必要ないアル」
「ぶつけるつもりかああああああああ!!」
「お前、勘弁しろよ。ビデオが粉々になるだろーが」
「あたしのへそくりもどっかに行っちゃうから勘弁してよ」
「ビデオとへそくりから頭を離せ!」
パトカーの中で新八のツッコミが矢継ぎ早に飛ぶ。
すると、キャサリンは原チャリの小ささを利用し、路地へと逃げ込む・
「ほぁちゃあああああ!」
神楽は民家の壁を破壊するのもお構いなしに路地に突っ込み、色々破壊する。
「オイオイオイオイオイ!!」
「なんかもうキャサリンより悪いことしてんじゃないの僕ら!」
「死ねぇぇえ!キャサルィィィン!」
そして、路地を飛び出し、キャサリンを撥ねようとする。
が、キャサリンはそれを躱し、四人を乗せたパトカーは川へと落ちた。
キャサリンはそれを眺め、再び逃げ出そうとする。
「そこまでだよ、キャサリン」
だが、キャサリンの前にお登勢さんが立ち塞がる。
「残念だよ、あたしゃ、アンタのこと嫌いじゃなかったんだがね。でも、ありゃ偽りの姿だったんだねぇ。家族の為に働いてるっていうアレ。アレも嘘かい?」
「……お登勢サン。アナタ馬鹿ネ。世話好キ結構。デモ度ガ過ギル。私ノヨウナ奴二ツケコマレルネ」
「こいつは性分さね。もう直らんよ。でも、お陰で面白い連中とも会えたがね。例えば、雪が振った寒い日、あたしゃある兄妹と出会った」
あの日、あたしゃ気まぐれに旦那の墓参りに出かけたんだ。
お供え物置いて立ち去ろうとしたら、墓石が口を聞きやがったんだ。
「オーイ、ババー。それまんじゅうか?食べていい?腹減って死にそうなんだ」
「こりゃ私の旦那のもんだ。旦那に聞きな」
そう言ったらそいつ、まんじゅうを一個自分の口に入れたら、残りは全部自分の膝の上で寒そうに寝てる妹に食わせてやったんだ。
「………なんつってた?私の旦那」
「そう聞いたらそいつ何て答えたと思う?」
キャサリンはお登勢の話をもう聞かず、原チャリのエンジンを入れる。
「死人が口聞くかって。だから一方的に約束してきたって言うんだ」
キャサリンはとうとう原チャリを走らせ、お登勢に向かう。
お登勢はそれでも動かず、ただ口を動かす。
「この恩は忘れねぇ。アンタのバーさん。老い先短いだろうが――」
その瞬間、川から木刀を持った銀時と特殊警棒を持った眞銀が飛び出す。
「この先はあんたの代わりに俺ら兄妹が護ってやるってさ」
「仕事くれてやった恩を仇で返すたぁね・仁義を解さない奴は、男でも女でも醜いねぇ、ババア」
「家賃を妹に押し付け、それでも家賃を滞納して人んちの二階に住みついてる奴は醜くないのかい?」
「人間なんて皆醜い生き物さ」
「銀兄、言ってること滅茶苦茶だよ」
キャサリンが役人に連れて行かれるのを横目に、お登勢は煙草をふかし笑う。
「ま、いいさ。今日は世話になったから今月の家賃ぐらいはチャラにしてやるよ」
「マジでか?ありがとうババァ。再来月は必ず払うから」
「なにさり気なく来月すっ飛ばしてんだ!」