思いつき投稿で続きも未定だからあとがきに固まってるキャラ設定を書いておく、続くようなら活動報告に移動させる。
12/28 なんか続いたから活動報告に移動させた
居心地が悪い、どころの問題ではない。思春期真っ盛りの女の子たちに一人だけ男が紛れ込む、なんてどう考えてもマンガやアニメの世界だ。自分が体験するなど思っても見なかった。
『転生』というありえない体験の上にさらにこういうことになるとは……人生とは本当にわからないものだ。
「織斑くん?」
「あ、先生すみません……」
前の人の自己紹介が終わったということに全く気がついていなかった。俺は立ち上がって振り返る。最前列のド真ん中という誰もが嫌がるような座席を指定されているため、後ろを見れば教室全てが視界に入る。
見えるのは全員女の子、彼女らの視線が俺に突き刺さる。これがもし前世の世界であったのなら、その視線の意味は好奇心とかそういったものを映していたのだろうが。
「織斑一夏です、中学では剣道をしていました。一人だけの男ですが、仲良く出来たらいいなと思っています」
今世の世界は前世で言う男の役割を大方女が担うという、まあ簡単に言ってしまえば男女観や性質が大体反対である。なにがどうしてそうなったのか自分には理解は出来ないが、この世界の住人は疑問を全く抱くことがないようだ。
さて、今世の自分である『織斑一夏』は前世の自分が見たら羨むようなかっこいい男の子だ。つまり、この世界での自分の立ち位置はさながら前世での美少女といったところだろう。
ここで今の自分の状況をもう一度ふりかえってみる。思春期真っ盛りの女の子たちに一人だけ男が紛れ込むという俺の今の状況を前世に置き換えてわかりやすく言うとこうだ。『思春期真っ盛りの男の子たちに一人だけ美少女が紛れ込む』
だれがどう考えてもまずい、としか言いようが無い。が、自分からすればそういう女の子たちの求めはむしろウェルカムではあるけれども、それはさておき。
ちらりと壁に腕を組んでもたれかかっている我が姉を盗み見る。IS学園で教師をしているとは聞いていたものの自分が彼女の生徒となるなんて考えても見なかった。それはそうだ、ISが女性にしか使えないのだから。
彼女、千冬姉さんは本当にできた人間で彼女に足を向けて寝るなんてことは死んでもできない。まだ遊びたい盛りの頃に両親が蒸発、残されたのは自分だけでなく弟も。いろんな人の助けを借りながらも自分をここまで不自由なく育ててくれたのだ。
美人で腕っ節も強いどころか世界最強。ISが世に出る前から男子から熱い視線を集めていた彼女が世界最強の称号に等しいブリュンヒルデとなったとき、それはもう人気が大爆発した。彼氏の一人や二人くらいいてもおかしくはなかったのに、それらしき影は一切見えない。
どうして彼氏を作らないのかと聞いたら俺が独り立ちするまでは考えられない、と言われてしまった。恋をしたかったろうに、友達と好き勝手遊びたかったろうに。
「皆変なことはするなよ? 姉である私が出来る限り見張るつもりだが。弟に合意無しで手を出したら――分かるな?」
彼女から薄ら寒い気が発せられた。それに当てられた多くの生徒は顔面蒼白となりブンブンと首を縦に振る。おお、久しぶりに見たな千冬姉さんの『ブリュンヒルデオーラ』(俺命名)
彼女のその圧に耐えられる人間を探すことは密かな自分の楽しみである。見た感じ大丈夫そうなのは2,3人か……あれ、あそこにいるのは幼馴染じゃないか。あとで挨拶しに行こう。緊張してて入学式からここまでの記憶がすっ飛んでいたけれど同じクラスだったのか、安心だ。
というか千冬姉さん、弟だからってえこひいきしたら駄目なのわかっているのだろうか。そりゃたった一人の肉親、それも弟が女の園に放り込まれたなんて心配で心配で気が気でないだろうけれども。昔から姉さんは自分に甘いからなあ。
この後、滞り無く自己紹介が終わり授業が始まった。いろいろあっていきなりこの『IS学園』に入学することになってしまったために、俺はISについて一切知らないままここにいることになっている。このままだと赤点確定だ、まずい。俺は必死に授業を聞いてノートを取る、あまりにも集中しすぎていたせいかあっという間に終わってしまった。
「ふぅ……」
副担任の山田先生と担任の千冬姉さんが退室すると同時に息を漏らしてしまった。まだガイダンス的な要素もあったためか分かりやすかったが今後が不安になってくる。あまり姉に頼り過ぎると他の生徒から不平不満がありそうなものだが、背に腹は代えられない。姉の部屋を訪ねることがありそうだなとぼんやりと考える。
ふと、先ほどのため息がやけに教室に響いたのに今更気がついた。休み時間だというのに教室がやけに静かだ。話し声が聞こえては来るものの、どこか空気が重い。この空気の中幼馴染に声をかけようと立ち上がるのもなあ、と思っていたのだが。
「少しいいか?」
「箒……ああ、大丈夫だ」
彼女の方から歩み寄ってきてくれた。ありがたくはあるがこの娘の将来が不安になる。昔っから周囲の空気を読めてない子だ。だが今はそれがありがたい。
軽く会話をしながら彼女に連れられて屋上で向かう。切れ長の勝ち気な瞳、姉と同じく凛々しい部類の美人さんだ。背もすらりと高く、高い位置でまとめられたポニーテールも艶々と深い黒に輝く。
「そう言えば剣道の大会以来か」
「……一夏、お前入学式の記憶飛んでるだろう? 私は何度か話しかけたのだが上の空だった」
「え? うそ、ごめん! 気が付かなかった!」
彼女がシュンとした表情になる。とても愛らしかったのだが申し訳無さが先に出た。
「仕方がないさ、その……どうだ? やっていけそうか?」
「初日だし、まだなんともなあ」
「そうか。ああそうだ千冬さんから伝言だ。寮の部屋割りだが私と千冬さん、どっちと相部屋が良いかとのことだ」
「そりゃまた答えにくい質問を……」
というか個人部屋という考えはなかったのだろうか。確かにこのIS学園の中で一番気やすい仲なのは箒ではあるものの、前世の価値観もあって同室というのはどうも気が引ける。もっとも相手も同じ感情をこちらに持っているとは思うのだけれど。
対して千冬姉さんと同じ部屋というのはそれもそれでどうだろうという気がする。まあいい機会だ、これを機に千冬姉さんには整理整頓というものを学んでもらおう。せっかくふたりともIS学園に移住するようなものだし。それに、まあ下心というかなんというか。そういうのもある。
「箒、これから頼む」
「ああそうだな、千冬さんと一緒が……は?」
理解したと同時に首から顔を真赤にさせて「男女七歳にして」やら「お前は少しは危機感を」やら。や、大丈夫大丈夫。そういうのむしろウェルカムだから、というか俺が君ともっと仲良くなりたいんだけれど。
「同室で私が我慢できずにその、そういうことをしたらどうするんだ!」
「箒なら別に」
「別に、じゃないだろう! いいか、そこに直れ!」
「あ、時間だ教室戻るよ」
「おい一夏!」
我が幼馴染は案外むっつりなのかもしれない。