島リセした主人公はムカデを一撃で倒すウッドソードを手に入れました。   作:フラン可愛い

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彼が昔と違いすぎました。

「し、シショー……あれってシショー達がよく話していた……」

 

 栗毛色の髪をたなびかせて慌てた様子で振り向く女の子はフラン・ポワリエというフルーツ忍者だ。

 フルーツ忍者とは、果物の美味しさを拡散する団体と考えて良い。が、一応れっきとした忍者である。たとえ忍ばなくても忍者なのだ。

 

「か、カイル……さん?」

「ん?なんだ? 赤髪」

 

 赤髪と言われた通り、僕は男の子で赤い髪。そして青い目をしている。そして、使用武器は剣を主につかっている。

 いつの間にかこの場所に来たわけだけど……

 

「ん? そう言えばなんでお前は俺の名前を知っているんだ? 教えてないよな?」

「何となくでござる! ね!シショー!」

「……ああうん! 貴方はカイルさんって名前ですか?」

「そうだが……なんだかお前ら怪しいな」

 

 そう言って僕達を舐めまわすようにじっくりと見るカイル。

 彼は背中に大きな槍を背負っていて、フランより少しだけ濃い色をした金髪で黄色の目。そしてノースリーブの服を着こなしている。体格は僕以上で、正しく冒険家といった人だ。

 

「と、特に怪しくないでござるよ!!」

「まぁそれは置いといて、お前。いい腕をしてるな?」

「……え?」

 

 半袖の服を着ていたため、思わず腕を見る。もしかしてこの人は脇フェチならわかるが、腕フェチなのではないだろうか。

 

「その腕じゃない。技能のうまさのことだ。どこで剣術を学んだんだ?」

「……独学ですね」

「独学? へぇ、冒険家志望か。筋も悪くないしきっといい冒険家になれると思うぜ」

 

 そう言って白い歯を輝かせて笑顔で答えるカイル。

 この場所は、言わば南国の様な小さな島で、太陽がそこそこ強い。それも相まってカイルのイケメン度は激しく上昇していた。

 

 するとフランが耳打ちをするように話しかけてきた。

 

「いきなり上から目線でござるね」

「そ、そういう人なんだよ」

「……っと、そういえば名前を聞いていなかったなえーっと……」

 

 そう言って、顎を指で持ち上げて疑問の表情を浮かべる。どうやら名前が聞きたいようだ。

 

「~~です」

「そうか。いい名前だな。そっちの女の子は?」

「フラン・ポワリエでござる! フルーツ忍者をやっているでござる!」

 

 このように、忍ばなくても忍びと名乗るのがフルーツ忍者なのだ。また、この忍者の種類にも数多くあり、昆虫忍者という人々もいる。

 

「フルーツ、忍者? まぁ二人とも冒険家らしい名前だな。よろしくな!」

 

 相変わらずイケメンな笑顔を浮かべる彼は幾つもの女の人を落としたであろうことが推測される。

 フランは別にどうとも思っていないようだが、僕が女の子だったら落ちていただろう。

 いや、ホモとかそういう意味じゃなくて。例えばだから。ほんとそういうのじゃないから。

 

「ん?あそこから煙が……」

 

 彼は周りを見渡すと遠くの方から煙が出ていることに気がつく。そして、少々考えた後再び話しかけてきた。

 

「あれがお前らの村なのか?」

「そうでござるよ!」

「おいフラン?!」

「いいでござろう? 悪い人じゃ無さそうでござるし」

「どうやら、警戒されてるか。まぁいきなり船で来たらそりゃそうだよな」

 

 目をつぶり肩をすくめながら鼻息を吐くカイル。あれ、こんな人だったっけ? 島リセットのルーンを使う前はもっと誠実で、目標に対して突き進む人であったのだ。そしてこんなギザな人ではなかったのだ。もしかしたら、ルーンのせいかもしれない。

 

「とりあえず村に入れてあげるのでござる。何かを探して来たのでござろう?」

「まぁ……そんなところだ。ところで、この後暇?」

「おい」

 

 気のせいではない。間違いなく女たらしだこの人。

 この後、フランは丁重に忙しいと断りを入れて、村に案内することになった。

 

 この村は自然豊かな村だが、鍛冶屋、宿屋、酒場と冒険家が来ても問題ないくらいの設備が整っている。

 そしてその門をくぐり村に入ると、いい匂いが漂ってくる。パイ生地を焼いたような香りだ。

 

「いい匂いでござる」

「あら? 早かったのね。フランも彼のお世話ありがとね。もう少しでハチミツのパイが……ってあら?」

 

 入ったと同時に迎えてくれたのは薄黒くて長い髪を後ろで縛った大人しそうな女性。

 この村の経済状況。そして宿などの管理もしたりするこの村の中心的女性だ。

 

「この方は?」

「カイル・ハイトランド。冒険家だ。美しいお方だな。この村一番の美人が迎えに来てくれるとは……光栄の極みだ」

「むむ、シショー。この人はこんな人だったのでござろうか?!」

「違う。絶対違う。本当はもっといい人なんですごめんなさい」

 

 誰に対してだかわからないが謝りたい気持ちに襲われる。フランが当たり障りのないように口説いてる彼の姿を見て疑問の質問を投げかけたのは、僕達が話していたカイルと全く別人物だからである。

 

「そ、そうですか。私はヘレナ。すぐそこの酒場で働いています」

「お美しい方だ。なら今夜、一緒に一杯――おっとあまりの美しさに見とれてこの村に佇む一手を取りかけたよ。ふっ」

「なんだこいつ」

「違う、こんな人じゃない……こんな人じゃないんだ……」

 

 ヘレナさんまでジト目になるレベルである。

 それを知るよしもなく手を組んで足を微妙に曲げるという謎のカッコいいポーズをとるカイル。

 本来だったらこんな事はしないんです。この人は偽物なんです。多分。

 

「なんかイライラしてきたでござる」

「気のせいだ。気のせいなんだ……」

「ところで、飛行島、古代人の噂を聞いたことがないか?」

 

 やっと真面目な表情に戻して彼は欲しい情報を得るために行動する。……かっこいいポーズのまま。

 フランが何かを懐から取り出そうとしたため、必死で抑える。

 

「落ち着けフランんんん!!」

「乙女の敵にござる!!バトルにござる!! 」

「ひこうじま……? こだいじん……? ちょっと遠いですが、近くの病院をご紹介しましょうか?」

「約束されし〈最果ての地〉に人々を導く天空の船――」

「長い間この島に住んでるけど、そんなこと聞いたことも……」

「痛い!痛いよこの人!」

「がるるる!!」

 

 傍から見ればフランと取っ組みあって物理的に痛いと見て取れるだろうが、今感じているのはこの人の言動である。

 まるで、革ジャンを着てサングラス掛けてカッコいいことを当然のように言い放つ男に似た彼は、もう僕の想像できる悪いことのレベルをはるかに超えていた。

 

「そうだ。バロンさんなら何か知ってるかもー」

「ヘレナ殿の目が死んでるでござる!」

「おのれよくもヘレナさんをセリフ棒読みにまで堕としたなぁ!?」

「おいおい、俺が何をしたって言うんだ?」

 

 ふぁさっと髪をかきあげて話す彼はもう完全にキザキャラに落ち着いてしまっている。いつの間にこうなったんだろう……

 

「その方は美麗――おっとこれは失礼。貴方より美麗なお方はこの島には存在しないのは俺が誰よりもわかっているさ。その方はどちらに?」

「帰れよもう」

「オーララ!!ブロシェットにござる!!」

「あかん!! 落ち着けフラン!! どっから出したのかわかんないけど串刺しはあかん!!」

「ふっ、そんな事言わないでくれよ?」

「……村の北の工房です。貴方、フラン。連れて行きなさい」

 

 フランを羽交い締めして抑えていると、ヘレナさんが死んだような目でそう話す。

 普通だったら案内してあげたら? という慈悲に溢れた口調なのだけれども、今回はもう連行しろと言わんばかりの

 どす低い声であった。

 

「貴方に、連行されるならいいかもしれないな?」

「連れてけ」

「さーさー! 行きますよカイルさん!!」

「その依頼承りでござる!」

「はっはっは、人気者は辛いな!」

 

 襟首を持ってズリズリ引きずって連れていく。

 コイツはどこまで余裕があるんだろうか。

 

 

「うっ、首が。お前らが引っ張ったおかげで痛い。フランちゃんおんぶしてくれ」

「それとこれとは関係ないでござろうが」

「戦闘は任せろ」

「シショー!? 逃げるなでござる!!」

 

 フランはカイルに対して本気の敵意を抱いているらしく、彼女もまたどす低い声で彼に返す。

 貰ったウッドソードの実力。今こそ試す時です。

 

「おっ、星たぬきだ。相変わらず可愛いな」

 

 索敵も兼ねてバロンという人物に会いに行くにわたって道筋を確保していると、目の前に赤くて一頭身、そしてお腹に☆のマークのように見える毛皮が特徴的な魔物。星たぬきが現れた。

 この魔物はかなり可愛く、女子にも人気があるが魔物は魔物。討伐しなくては。

 

「さぁ来い!――って?」

「キャウ?!」

 

 物凄いビビっていた。魔物の体の震えがよく分かるぐらいものすごいビビっていた。おそらく対象は僕……の持つウッドソード。少々特殊だが、初期武器に怖がっていた。

 

「……プルプル」

「……だめだ。殺れない」

 

 うるうるとした上目遣いにはおそらく悪い道化師だって敵わないだろう。

 仕方なく剣をベルトの隙間に押し込めると、星たぬきはたいそう嬉しそうにそしてどこが安心したように倒れてしまった。

 どんだけ凄いんだよこのウッドソード。

 

 多分この剣を持っていれば大抵の敵が寄り付かないであろう。コボルトという山賊の刀を持った二足歩行で人型のネズミでさえ武器を地面に置いて両手を上げるレベルである。鍛冶屋さんはいったい何を素材に使ったのか。

 

「シショー……この人ウザイでござる……」

「フランちゃん、そんな事言わないでくれよ? この槍だってな、特別な素材を元に」

「行くぞカイル!! 目的地は目の前だ!」

「お前……やっと口調が柔らかくなったな」

 

 そう言って男の俺にもニッと太陽のような輝く笑顔を見せるカイル。こいつ実はいい人なのではないだろうか。

 ホントは元からいい人なのだが。

 

「さぁ! 運んでくれ!」

「だろうと思ったよ畜生!」

 

 笑顔に負けて仕方ないな……とか言いかけたが、こいつの作戦だったようだ。くそう、リセットする前のカイルさんはこんな人じゃなかったのに!!

 

 

 魔物と合うこともなく村から歩くこと数刻、やがてケムリを上げる小さな工房が見えてくる――

 

「誰かと思えばお前か。それに――」

 

 工房の中にいたのはライオンのような顔つき、体つきをした人。人はこれを獣人と呼ぶのだろう。そして片手には器械のような金槌を持っている。

 

「冒険家のカイルだ。あなたが島で一番の物知りだと聞いて来た」

「ほうほうほう、いいだろう。何が聞きたい?」

「良かったでござる……何も変わってないのがこれほど安心するとは思わなかったでござる……」

「そうだね……」

 

 Hpは減らされていないが、精神的にもう疲弊している。主にカイルのせいで。

 

 カイルが先程と同じ人物とは思えないほど丁寧、慎重かつ的確にこの島には来た目的、飛行島や古代人について説明すると、バロンがピクリと眉毛を動かすところが見えた。おそらく彼は何か知っているのだろう。

 

「ふむ。飛行島か……残念ながら教えられるようなことは何も無いな」

「教えられるようなこと事……だと?」

「ふん」

「! その金槌に刻まれているのは古代文字か!?」

「読めるのか……!?」

「その形からすると恐らく旧王朝時代の産物だな。マーケットに出せば、戦艦一隻ぐらいの金が手に入るはずだろうな。だが、出さないのはなんでだろうな? そんなに毛並みも綺麗であるのに……」

「カイルがおかしいでござる!!」

「いや、これでいいんだ! これでいいんだ!!」

 

 やっと元のカイルさんに戻った気がする。思わずフランとハイタッチしようとしたら……

 

「お前さん、ただの冒険者ではないようだな。気に入った。欲しいものを一本ぐらい打ってやろうか」

「有難い。あなたこそ、只の鍛冶屋ではなさそうだ」

 

 そしてこちらを見るカイルは――

 

「二ィィ……」

「ひぃ?!」

「完全に悪役でござるよあれ!?」

 

 三日月型に口を歪め、目鈍く濁っていた。そして目の開き方がこれでもかと言わんばかりの大きさで開かれていた。

 こいつ、これが作戦だったか……!?

 

「島の北部に小さな遺跡がある。お察しの通り旧王朝時代のものだ。道中、凶暴な魔物が住む深い森を超えなければならんから、村の者は殆ど近づかんがね」

「あなたが打った槍があればどこへでも行けますよ。それに、冒険家には危険がつきものさ。もし倒れたりしたら、武器が悪いのではなく、使い手が悪いからな」

「……ますます気に入った。いいものを打ってやる」

「くそっ! バロンさんまでやられた!!」

「オーララ! アイツいろいろヤバイでござる!!」

「ん?お前。まだウッドソードなのか?」

 

 そうして彼が見るのは僕の腰にある黒い筋の入ったウッドソード。

 

「お前もついて行くつもりなんだろう? 仕方ない。新しい剣を打ってやる。カイルにでも礼を言っておけ」

「いいんだ。別にそのために話したわけじゃない」

 

 そうしてバロンが後ろを向いた途端、悪役顔を決めるカイル。やばい。こいつはラスボスだわ。

 

「新しい武器を作るのには一五個の特別なアイテムが必要だが……カイルと共に今回は奢ってやろう」

「ふっ、よかったな」

「オーララ。シショー完全敗北でござる」

 

 数分後

 

 

「……え、なにこれ」

「すごくいいものな気がするでござる。オーララ……」

「こ、これは?!」

 

 出てきたのはクロスセイバーというクラスの専用武器。真・天霊剣クラウソラス。

 間違い用もなく現時点で最強の二刀であった。

 

「ウッドソード……お前……」

 

 黒く、ほのかに発光していたのを僕は見逃さなかった。

 

 




カイルさん……

それとついに限定2人終わってしまいましたね。
女の子は確保しましたが、あすれいさんは逃しました。
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