秋津洲ちゃれんじ   作:秋津洲かも

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秋津洲チャレンジ VS加賀 戦闘開始

「秋津洲さん。明後日の演習ですが、まず私がお相手致します」

 

加賀は言葉を発した直後に激しく後悔をした

 

彼女が私に敵うはずがない

 

決して慢心からではなく、ただ事実として、空母としての秋津洲の性能は加賀のそれを大きく下回る

 

そもそも秋津洲の二式大艇は偵察機である

 

これが加賀の戦闘機、攻撃機とぶつかればおのずと結果は見えている

 

これでは私が一方的に弱者を叩こうとしているように写る

 

提督にだけはそんな風に見られるのは嫌だ

 

加賀は心配になり、隣に立つ提督の顔を見る

 

提督、違うの。これは

 

私はそんなつもりで言ったのではないの

 

こんなこと言うつもりではなかったの

 

お願い。誤解しないで

 

「加賀さん」

 

一転して秋津洲の視線が加賀に突き刺さる

 

「な、何かしら」

 

視線の刃に加賀は怯む

 

加賀の心はすがるように提督の方へ向けられている中、秋津洲の返答は極めて理性的だった

 

「分かったかも、よろしくお願いします」

 

そう言って秋津洲はぺこりと頭を下げてきた

 

「んーそうだな。秋津洲の対空戦闘能力は知っておきたいし、いい機会だ。加賀、よろしく頼むな」

 

提督は二人のやりとりを特段に気にする風でもなく、演習を了承した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕張さん、私、明後日加賀さんと演習することになったかも」

 

秋津洲はベッドの上でうつ伏せになり、長い脚をぷらぷらさせながら思い出したかのように話しかける

 

視線の先には少女漫画、紙面上では二人の男女が抱き合っている

 

「へ?」

 

夕張は全く予想していなかった言葉をくらい、お茶を飲む手が止まる

 

「ねー聞いてる?夕張さん、加賀さんと演習するかも!」

 

「う、うん聞いてるよ、ってええええええ???」

 

 

 

「秋津洲さん、それ、ほ、本気で言ってるの?」

 

「うん、加賀さんがね、そう言ってきたの」

 

「加賀さんってあの加賀さん?」

 

「うん、あの加賀さん」

 

「・・・勝てそう?」

 

「ううん、分かんないかも。やるだけやってみるかも!」

 

夕張とて秋津洲が偵察機しか運用できず、他の兵装といっても駆逐艦以下の機銃しか装備できないことを知っている

 

対するはあの一航戦。足を痛めて水上走行は思うようにできないようだが、今回二人の勝負は航空戦となるだろう

 

獲物を狩る鋭い爪を持ち疾風のように空を駆ける鷹と優雅に空に舞う鶴がぶつかれば結果は明白だ

 

とても勝ち目など望めない。こてんぱんにやられるだけ

 

結果、夕張の思考は次のように着地した

 

 

(この子、何か加賀さんに恨みを買うようなことをしたのかしら)

 

 

 

 

 

 

 

演習当日 出撃ドック

 

大艇妖精さんは久しぶりの出番にはしゃぎまわっている

 

「おひさしぶりですー」

 

「でばんないかとしんぱいしておりました」

 

「きょうはなにするです?ていさつです?」

 

「みんな、今日は演習かも!相手は正規空母かも!」

 

「それはおめでたいです」

 

「おせきはんたくです」

 

「わーぱちぱちぱち」

 

大艇妖精さんは秋津洲に拍手喝采を送っている

 

「そうね、私たちの実力を見せつけてやるかも!」

 

「なにかさくせんあるです?」

 

秋津洲は一瞬、うーんと考える素振りを見せるも

 

「ないかも!いつも通りにやるだけかも!みんな出発かも!」

 

「「「おー!」」」

 

大艇妖精さんが二式大艇に意気揚々と乗り込む

 

それを見届けると秋津洲も自分の装備を確認する

 

砲とも呼べない機銃が片手に1つずつ

 

これがまぎれもない自分の装備

 

駆逐艦にも劣る、いつも通りの自分の装備

 

手のひらに汗を感じる

 

久方ぶりの戦闘に脳が興奮と緊張を繰り返している

 

 

 

 

 

 

 

 

秋津洲と加賀、二人の見る水平線の距離は約4.4キロメートル

 

演習はそれよりも遠く、距離6キロの位置から開始される

 

互いの位置は知らされておらず、先に敵を発見したものが機先を得る

 

雲一つない快晴、無風、海上は穏やかな凪

 

 

通信指令室には秋津洲の初演習を見学しようと多数の艦娘がモニターの前に集まっている

 

佐世保提督は鎮守府屋上に設置されたカメラからの映像で位置に着いたことを確認すると、無線へ呼びかける

 

「二人とも、準備はいいか?」

 

「「準備良し!」」

 

秋津洲は果たして加賀相手にどのように戦うのか

 

ここでどのような戦い方をするかで彼女の評価が決まる

 

「それでは始めるぞ。演習開始!」

 

「「演習開始」」

 

その声と同時に二人はその場から動くことなく発艦作業にかかる

 

加賀は流れるような所作で次々と矢を打ち出していく

 

構え 射 残心、構え 射 残心、構え 射!

 

空中の矢は光に包まれ、獰猛な狩人に形を変えていく

 

零戦52型20機、天山20機、彗星46機

 

索敵同時攻撃、敵を見つけると同時に襲い掛かり、力で捻じ伏せる編成

 

総勢86羽の狩人はそれぞれ編隊を組み、加賀を中心として全方位に満遍なく広がっていく、そして急上昇をかけると迷うことなく一斉に獲物を求めて向かっていく

 

 

 

かたや秋津洲は水上の二式大艇を緩やかに離陸させていく

 

二式大艇1機

 

波しぶきを上げながら翼が揚力を得る。機首が上を向き始め、離水

 

二式大艇は飛び立つと、力の限り高度を得ようと必死にもがく

 

エンジン出力を最大に保ったまま、悲鳴のような音をまき散らし空へ空へと向かう

 

 

 

離陸数十秒後、秋津洲の脚が先に動いた

 

大艇妖精がはやくも加賀発見を報告してきた

 

脚の艤装出力を最大限にし、加賀のいる方向へ海上を駆ける

 

 

 

 

(続く)




大艇ちゃん一緒に頑張るかも!


次回、「二式大艇」ちゃんかも!

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