秋津洲ちゃれんじ   作:秋津洲かも

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秋津洲さんは登場しません
いえ、できませんでした
すいません、なんでもするかも


秋津洲の出番まだかも?

「失敗した?」

 

男は作業の手を止めた

 

パソコンの画面から目を離し、驚きの表情を浮かべている

 

「はい、大本営から緊急連絡がありました。本日、0715横浜港に向かっていた輸送艦隊が敵の奇襲に遭い、横須賀正面海域において輸送船は大破。その他の被害状況はまだ入ってきていません」

 

対する女は冷静に報告をする

 

凛とした雰囲気に青い袴の弓道着、サイドテールがわずかに揺れている

 

「それで、うちの艦娘たちは無事なのか?」

 

男は思わず、椅子から立ち上がる

 

椅子が反動で後ろの壁に当たる

 

「はい、10分程前に通信にて安全を確認、佐世保到着予定1100です」

 

それを聞いて、男は肩の力が抜けたのか、ふうと息をつく

 

腕の時計を見る

 

「あと2時間か、分かった、ありがとう、情報収集を続けてくれ」

 

「はい、提督。では私は司令室に戻ります」

 

女は踵を返し、扉に向かう

 

何かに気付いたのか、提督と呼ばれた男がそれを止める

 

「すまん、待ってくれ加賀、ひとつ頼みがある。護衛機を飛ばして、護衛隊を迎えに行ってやって欲しい」

 

「あの子たちのことが心配なのですね。分かりました。零戦52型を1スロット、帰還援護に向かわせます、お任せください。鎧袖一触よ」

 

加賀と呼ばれた女は決め台詞が決まったことに満足し、柔和に微笑みながら、ドアノブに手にかける

 

 

 

 

 

加賀は執務室を出ると、しんとした廊下を足早に階段の方向へ向かった

 

その姿はどこか不自然だった

 

わずかに左足をひきずっている

 

だが痛みはないのか顔をしかめることもなく平然としている

 

階段に差し掛かると少し慎重に何かをかばうように、手すりをたよりに下っていく

 

下りきった正面、木板に達筆な文字で通信指令室と書かれた部屋に入る

 

入室と同時に一人の少女と目が合う

 

「戻りました、夕張さん、何か情報は入りましたか?」

 

夕張は通信卓に座り、何かを台帳に記入している途中だった

 

見渡すと、この部屋には彼女一人

 

様々な通信機器が並び受信機が雑音を拾っている

 

「秘匿回線でFAXが3枚、はい、これです」

 

秘匿の印が右上にある用紙を手渡される

 

目を通し、内容をつかむ

 

輸送船の沈没が確認された

 

敵潜水艦を全て撃破

 

被害状況は現在、確認中

 

今回の事案を受けて、各鎮守府は深海棲艦の今後の動向に注意されたし

 

特に潜水艦には厳重に警戒を

 

大まかにいえば、こんなところだろう

 

左上にホチキス留めされた書類をぱらりとめくり、最後の3枚目、情報元を示す注釈のところで目が止まった

 

〈水上機母艦 秋津洲 隷下 二式大艇〉

 

本人に会ったことはないが、聞いたことがある

 

超長時間且つ超長距離運用可能な飛行艇を持つ艦娘の存在を

 

同じ飛行機を運用する者として興味があった

 

そういえば、ここ、佐世保提督も彼女に是非着任して欲しいと子供のように散々駄々をこねていた

 

秘書艦である私にところかまわず彼女の有用性を熱弁していた

 

しかしそれは叶わず、彼女は日本最大の鎮守府である横須賀鎮守府へ着任した

 

それを聞いた佐世保提督は落ち込み、数日間、書類仕事をおろそかにし

 

それを見とがめた加賀は執務室を爆撃した

 

あの時は頭に血が上りまるでどこかの五航戦のような真似をしてしまいました

 

まだ見ぬその水上機母艦に嫉妬していたのだろうか

 

嫌なことを思い出してしまい、ふと感情が口に出る

 

「頭にきました」

 

「ひっ」

 

隣の夕張がおびえた声を出す

 

いけない、落ち着きましょう

 

書類を夕張に返す

 

「私はこれから輸送船護衛隊の帰還援護のため護衛機を飛ばします。彼女たちの現在位置を教えてもらえるかしら」

 

「はい、えっと、ここです」

 

夕張はパソコンを操作し、画面上の地図にプロットされた点を指さす

 

「ありがとう、それでは、少しの間、司令室を任せます」

 

 

 

 

鎮守府正面玄関を出る

 

玄関から鎮守府正門まで一直線に石畳が続いている

 

その道に沿って植えられた桜の木が揺れている

 

今日は少し風が強いようね

 

湿度もかなり高い

 

けれど雨の心配はなさそう

 

機体のエンジンスタートを慎重にやりましょう

 

正規空母として生まれた彼女は天候の変化に敏感だった

 

加賀は鎮守府の出撃ドックではなく、海に面した運動場へ向かう

 

開けた場所まで行くと、歩が止まる

 

芝生の上から海の方向へ目をやり、体の力を抜き、自然な姿勢をとる

 

なめらかに唇が動く、そうして何かをそっとつぶやくと

 

光と共に艤装が展開された

 

長弓と矢筒、胸当て、右手には弓懸けそして左に飛行甲板

 

 

 

発艦準備に入る

 

ピンと背筋を伸ばし、射法に従い、1点を見つめ、構える

 

コンタクト、エンジンスタート、油圧・回転計チェック、各種動翼の動作を確認、ランナップ完了、全て良好異常無し、チョークアウト

 

素早く手順を終える

 

呼吸が止まる

 

完全に矢の先端が静止した

 

「零戦52型、20機、発艦します」

 

 

 

 

(続く 次はなにがなんでも秋津洲出すかも)




痛感したかも
文章を書くのって下準備が大切なんですね
設定ってむずかしいかも

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