秋津洲ちゃれんじ   作:秋津洲かも

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お読み頂く前に正直に言いますが

また、秋津洲ちゃんの姿が見えません




秋津洲の出番ないかも?

執務室に一人となった佐世保提督は立ったまま天井を仰ぎ、大きく息を吸い込む

 

そしてため息、下を向いて首を振りひとごこちつく

 

「やはり、急ぎすぎたのか」

 

誰に言うでもなく口に出す

 

執務机の引き出しの奥から煙草の箱を取り出し、窓を開ける

 

ぬるい空気が部屋に流れ込んできた

 

今日は少し、風が強い

 

ライターの火が消えないよう、左手で囲う

 

ふと音のする方向に目を向けると

 

離陸していくレシプロ戦闘機が見えた

 

ぐんぐんと高度を上げ、空中集合が完了すると、編隊を組み南の方角へ消えていった

 

加賀に命じた輸送船護衛部隊の帰還援護だ

 

艦娘たちが帰ってくるまであと2時間を切ったところだろうか

 

煙草を携帯灰皿に入れ、椅子に腰をかけ書類にむかう

 

 

 

 

先ほど通信指令室の当直を担当していた夕張から報告があった

 

輸送船の沈没が確認されたとのこと

 

『大快挙! 海自 シーレーンを奪還!!!』

 

『1年ぶり!横浜港に大型輸送船到着す!』

 

こんな感じになるはずだったのだろうか

 

自嘲気味に思考をくゆらせる

 

明日の新聞一面を埋めるはずだった大戦果は失態の二文字に変わった

 

大本営は事を急ぎ過ぎた

 

目の前にぶら下げられたニンジンにつられ、足を踏み外し

 

取り返しのつかないことをした

 

これでまた、状況はふりだしに戻った

 

結果論にはなるが、私は反対したのだ

 

ほころびだらけの輸送作戦を

 

こんな作戦に私の艦娘を使いたくなかった

 

 

再び煙草を手に立ち上がった

 

 

 

深海棲艦の出現により世界各国は混乱に陥った

 

船舶を使用した世界貿易は一時、完全に麻痺し、世界は恐怖と恐慌に包まれた

 

特に甚大な被害を受けた大国が2つある

 

イギリスとそして日本、いずれも資源の無い島国である

 

その2つの国にとってシーレーンの破壊は国の崩壊と同義である

 

いや、事はもっと深刻だ

 

シーレーンという土台の上に、国家という家が建っている

 

その土台が失われたのだ

 

この惑星の8割の面積を占める遠い異国へと延々と続く穏やかで〈 安全な海原 〉

 

これを前提条件としてはじめて南北3000キロに伸びる縦に細長い列島は、国家として成り立つ

 

そう、本来であれば民間の船舶は世界中どこであっても安全に航行することができる

 

いかなる国家であれ、それを妨げてはならない

 

深海棲艦は船舶の無害通航権という人類共通の国際ルールを破壊した

 

 

そして

 

我々は第二次世界大戦で学んだ

 

石油は、資源は国の血潮であると

 

それは技術の発達した今でも大して変わらない

 

体中の血管をふさがれた日本はどう動いたか

 

このまま黙っていれば、やがて体は死んでいく

 

飛行機による輸送では積載できる重量・体積共に圧倒的に少ない

 

そこで細かい血管を犠牲にし、大きな大動脈を1つ確保することにした

 

その一端はここ、佐世保港、そしてもう一つが上海

 

大陸からの物資を上海港に集積し、東シナ海を突破して、最短経路で佐世保に向かう直線

 

「佐世保・上海ライン」

 

これが現在の日本の大動脈である

 

 

 

 

ここ、佐世保鎮守府はこの生命線を死守するために設置された

 

 

 

 

突然

 

執務室の扉がノックもなしに開かれる音がした

 

「提督さん!大変っぽい!」

 

煙草をくわえたまま、振り返る

 

「どうした、夕立?あと、ノックはするように」

 

ここまで走ってきたのだろうか

 

上気した顔で息を切らしながら、駆逐艦夕立が部屋に入る

 

「それどころじゃないっぽーい!」

 

何かを訴えかけるように、両手を広げつつ息を整えている

 

ふわっと黄金に輝く髪が照明に反射し、見る者を釘付けにする

 

「落ち着け、何があった?」

 

夕立の息が整うのを待ち、大人しく要件を聞くことにした

 

「て、テレビが、ニュースが大変なことになってるっぽい!」

 

思い当たる

 

輸送船の襲撃から2時間、国民には事前に知らされていなかったとはいえあれだけ巨大な船だ

 

横須賀沖ならば人目につかないはずもない

 

マスコミがかぎつけたのだろう

 

「とにかく、テレビのところに行くっぽい!」

 

「と!こらこら」

 

夕立に手を取られ、引っ張られる

 

「あらあら、夕立ちゃん。あわてて飛び出していったと思ったら、執務室に来ていたのですね」

 

開いたままの扉から声がする

 

「提督、申し訳ありません。夕立ちゃんたらテレビを見ていたら、突然、提督に知らせると駆け出してしまったのです。ね、夕立ちゃん、提督を離して差し上げて」

 

「ああ、鳳翔さん、良いんです、気にしていません」

 

夕立の提督を引っ張る手が片手から両手になり、んー、と言いながら駄々をこねている

 

引っ張られる力が2倍になった気がする

 

「あの、提督、一つよろしいでしょうか、その口にくわえているものは?」

 

鳳翔さんは微笑みながら、首を少しかかげ、私の口元をじっと見ている

 

感覚を自身の唇に向ける

 

 

 

しまった!!!!!!

 

 

私は禁煙をしてから2ヶ月ということになっているのだ

 

気管支炎をこじらせ、床に伏せたとき、本当に心配そうに見舞いにやってくる艦娘たちを見て心に決めた

 

確かに私は皆に宣言したのだ

 

復帰してすぐの朝礼のときだったか、1日の流れを皆に伝え、最後の締めくくり、きょうのひとことで、

 

『私の自己管理が足らず、皆に迷惑をかけたことを申し訳なく思っている。今後はこのようなことが無いよう、私はここにひとつ宣誓する!二度と煙草はやらない!』

 

私の宣誓を懐疑的に見る者もいたが、多数は喜んでいた

 

その多数の中で、一番、喜んでいたのが鳳翔さんだったのだ

 

「こ、これは・・・」

 

頭をフル回転させようとするが、鳳翔さんの私を見つめる目をみると、

 

う・・・

 

微笑みの鳳翔さんの首を傾げる角度が10度ほど増えた

 

「はい、何ですか?」

 

人生、時にはあきらめが肝心である

 

「煙草です」

 

「はい、お煙草です。いけませんね?」

 

私の敗北Dが確定した

 

 

 

 

娯楽室

 

艦娘の憩いの場所

 

普段であれば、おしゃべりをしたり、DVDを見たり、一心不乱に少女漫画を読む艦娘がまばらにいるくらいだが、今日はいつもと様子が違った

 

部屋に入りきれないほどの艦娘であふれている

 

多数の視線は一か所に注がれていた

 

通信指令室以外では唯一、設置されているテレビに

 

離れている者にも聞こえるように、音量が大きい

 

面々を見ると

 

息を忘れ、じっと見る者

 

怒りを押し殺す者

 

青ざめる者

 

互いの手を繋ぎあう者

 

「ひ、ひどい・・・」

 

誰かが呟くがその声に反応する者はいない

 

 

 

通信指令室

 

艦娘たちと同じ情景を見ている

 

夕立がテレビテレビとあまりにも騒ぐので、鳳翔さんのお説教は持ち越しとなった

 

公共放送が伝えている

 

画面の上にはテロップが流れ、市民への避難指示や鉄道の運行情報が流れている

 

『繰り返しお伝えします。現在の映像は、神奈川県横須賀市浦賀水道の様子です』

 

『先ほどまで1隻の船舶が炎上していましたが、およそ1時間半前に船体が見えなくなりました。いまだ、周辺は焦げたような匂いが立ち込め、こちらからは、自衛隊の艦船が2隻見えます』

 

『横須賀港周辺では、自衛隊と警察により厳重な警備がしかれ、ものものしい様相となっています』

 

 

映像から、冷静に状況を把握する

 

確かにもやがかかったように煙の痕跡がある

 

護衛艦2隻のほかに、海上に浮かぶ船舶は無い

 

海上にはコンテナが浮かび、海面の色が平常とは異なる

 

深い緑ではなく黒

 

輸送船から漏れ出した重油だ

 

ああ海が汚れていく

 

 

 

映像が上空に向かい、ズームがかかる

 

資料でみた覚えがある

 

大きな翼

 

 

 

ああ、あれが二式大艇か

 

 

 

 

(続く)

 

 

 




ここまでがプロローグです
シリアス路線なのかどうか情緒不安定です

次回、秋津洲 決断の時 かも?
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