強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百五話「謎の男」

「レムオルっ! さぁ、仕事開始なのであーる」

 

 透明化呪文を完成させるなり、俺は額を右の中指で突くようにして仰け反るポーズをとった。

 

「言わば、お仕事開始のポーズなのであーるっ」

 

 透明になって全く見えなくはあるのだが、ここまで幾つものキャラを演じ分けてきた俺だ。

 

(きゃら が どっかにぶっとんでない と きぞん の べつ きゃらくたー と こんどうしちゃいそう なんですよね)

 

 キャラのかき分けが苦手な物書きには良くあることなんだと、作家志望の知り合いが零していたのを俺は覚えている。

 

(だから「ポーズと語尾が違うだけでマシュ・ガイアーと殆ど変わらないじゃねーか」何て文句は受け付けないのであーる)

 

 そも、マシュ・ガイアーとして動いていた頃にはトロワとはまだ出会ってもいなかったのだから、問題はないと思う。

 

「ドーサ様、そのお仕事開始のポーズですが……私もやった方がよろしいでしょうか?」

 

「おおう、時間差で聞かれてしまったのであーるな。まぁ、今は透明になっていてポーズも教えづらいし、やっても見えん。よって今回は必要ないのであーる」

 

 参っちゃったのポーズをとりながらそう答えると、ポーズを解き、足を前に一歩踏み出す。

 

「さ、透明化呪文の効果は短い。効果が切れないうちに門番の横を通り過ぎるのであーる」

 

「はい」

 

「ただ、透明になっているからお互いが見えない、衝突には注意スルであーるよ? では、ここからは私語厳禁であーる」

 

 頷いたであろうトロワに忠告すると、口を噤んで塀に挟まれた道を前へ。

 

(いよいよ、かぁ。他の国がそうだったように、この国もおそらく原作通りの造りはしてないだろうな)

 

 面影を残し人口に合わせた拡張、施設の増加、本来はないが暮らしには必要不可欠な施設などの追加辺りはまずされてると思う。

 

(迷わないと……いいな。数日間の船旅を無駄にしたくない)

 

 隣室のカップルが大ハッスルして壁越しの声にトロワと気まずい雰囲気を味わった夜。

 

(最初は隣じゃなかったのに、ああなったって事は別の船室でもやらかしたんだろうけど)

 

 壁を殴ろうとして怒られる船員を見ないふりし。

 

「ちくしょう陸に着けば……陸にさえ着けば」

 

 とか繰り返してた船員も居た記憶があるが、あの船員は俺達に遅れて上陸する気なんだろうか。

 

(何処の国にも男性の何かを発散させる店は存在するって何処かで読んだ気はするけどさ)

 

 いや、深く考えては駄目か。

 

(……と言うか、何でそんなこと考えてるんであーるか、私)

 

 ロクでもない船上での思い出に引っ張られすぎた結果だというのは解ってる。

 

(ああ、「こうなったらもうアッサラームのぱふぱふ親父でも良い」って死んだ魚みたいな目をして道を踏み外しかけてた船員もいたからなぁ……って、だぁぁ、あのカップルに当てられた被害者はもういいって!)

 

 と言うか、サブリナさん、カルロスの名前呼びすぎ。

 

(……じゃなくて、ええと……ああ、そうだった。自重ゼロバカップルのせいで地獄と化した船の人達を救うためにもさっさとかわきのつぼを盗み出さないと)

 

 あのままでは血迷った船員がトロワに襲いかかってくるかも知れないのだから。

 

(えっ、おれも? あはは、なに を いってるんですか、そんなこと あるわけないじゃないですか。やだなぁ)

 

 誰かがお前は大丈夫なのかと聞いてきたような気がしたので、心の中で笑い飛ばしてみる。

 

(「こうなったら、おとこどうしでも」なんて つぶやいていた せんいん なんて いなかったんだ)

 

 百歩譲っていたとしても、このドーサ・ルマーノがかわきのつぼを盗み出して戻れば次の訪問先はイシス、船泊じゃないから襲われないのであーる。

 

(ま、イシスに着いたら着いたで色々やらないと行けないんだけど)

 

 まず気になるのは気になるのは別れたムール君達の成長具合。

 

「しかし、暇だな……」

 

 完全にこちらへ気づかない様子の門兵の横を通り抜け、俺達は城内へ至り。

 

(確か、パズルの部屋は地下だったはず……)

 

 流石にそれが別の階に移動はしていないだろうと思いつつ前を見れば、真っ直ぐ続く通路の左手に幾つもの入り口が並んでいる。

 

(門兵の詰め所……もあるだろうけど、それだけではないだろうなぁ)

 

 入った先に地下への階段がある可能性もある。

 

(……やっぱりか)

 

 最初に覗き込んだ部屋は、想定していたとおり兵の詰め所。椅子に腰を下ろした兵士が机に向かい何か書いているところだった。

 

(次は……っ)

 

 二つめの部屋を覗き込んで俺は立ち止まる。

 

(下り階段、まさかこ、うおっ)

 

 直後に感じたのは柔らかなモノがぶつかってくる衝撃。たたらを踏む程ではないが、それは俺の話。

 

「すまん。無事であーるか? 無事なら二度何処かを叩くのであーる」

 

 ぶつかってきた誰かを抱き支え、自ら禁を破って囁けば、太もも辺りが弱く二度叩かれ。

 

「つぼは地下にあるらしいと聞いたのであーる。故に階段を見て足を止めてしまったのであーる」

 

 俺は理由を話すのに続け、階段の先を探索してみる旨をトロワに伝えたのだった。

 




辛い船上の夜を越えた思いを胸に、主人公は今、窃盗するッ!

次回、第百六話「not千年」

そのパズルを完成させた時……あ、遊戯王復活するんでしたっけ?


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