強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百八話「意外な答え」

「やっぱり、壺を包んでた紙のことをトロワが気づいたんじゃないかって不安か」

 

 結局結論が出たのは、エジンベアを出て変装を解き、船に戻ってからだった。

 

(まぁ、そうだよな。旧トロワの時から下心満載で猛アタックはしてきてたんだし、異性として意識するって言うならとっくに意識してた筈)

 

 きれいなトロワになったのだって、昨日今日ではない。

 

(犯罪行為のために忍び込んでたから、そっちの緊張を勘違いしたってセンもないし)

 

 ただドキドキの原因探ししつつ船まで戻る訳にも行かず、本格的に考え出したのは船に戻ってからではあるものの、ほかに思い当たることが無い以上、少々腑に落ちなくても出した結論が正解なのだろう。

 

「まぁ、それならそれでいっか。あの壺を包んでいた紙がえっちな本のページで、見てしまったから中途半端に影響受けたとかそんな笑えないオチより……は?」

 

 なら、ドキドキの話はこれまでとふいに思いついたよりロクでもない話で笑い飛ばそうとして、俺は固まった。

 

(ちょ、ちょっと まってくださいよ?)

 

 掌から嫌な汗が滲み出てきた。

 

(いや、ない。ありえない。手を繋ぐ、からその先にあるモノを期待してのドキドキだったとか)

 

 そもそも、百歩譲ってあれが忌まわしき書のページだったとしても、性格を矯正する程の力は無いはずだ。

 

(だいたい、性格を変える本は読めばなくなってしまう消耗品だった)

 

 もし、仮にあれが本の一部で俺の精神にまで影響を及ぼしたなら、ページはなくなってしまわないとおかしい。

 

(まさか、ページと言う一部であるため、使ったと見なされずになくならず、それで居て一部とはいえ中身を見たからハンパに効果が現れたとでも?)

 

 なんですか、その しゃれにならない かせつ は。

 

(本の一部だったとしても、壺を包んでいたのはほんの数枚。効果はかなり弱まってるよなぁ)

 

 いや、弱まってるのは間違いない。オリジナルと違わぬ効果なら、ドキドキなんてレベルでは済まないはずなのだから。

 

(短い時間だがオリジナル同様の効果とかだったら、壺を見た時点でアウトだったな。それを考えればまだ運はいいか)

 

 トロワの前でむっつりすけべになった俺。旧だったら既成事実が出来ていて間違いない。

 

(最悪の事態は、避けられたんだ。ただ――)

 

 置いてきてしまったが故にあの「えっちなかみきれ」の効果は不明でもあり。

 

(効果自体は弱まったモノの半永久に効果が続く、なんて事も考えられる訳だ)

 

 もし そうなら、ひとつ やね の した で ぼんきゅっぼん の おんなのこ と ねる おれ としては しんろう が ばいかする というわけで。

 

「これから まってる のは さら に おんなのこたち との ごうりゅう と いうわけですよ。 いやぁ、まいったね」

 

 うん、本当に参った。と言うか、参ったで済む問題じゃない。

 

(なにこれ。凶悪すぎだろ、エジンベアトラップ!)

 

 俺を非紳士にする気か、紳士の国っ。おのれ、せかいのあくい。

 

(拙い、激しく拙い。ムール君が成長してるようなら今度こそモシャスして奥義伝授も良いかなって考えてたけど……)

 

 ムール君にモシャスした自分の下着姿に大興奮とかしてしまったら、俺が終了する。

 

(どうする? 恥を忍んでトロワに打ち明けて何とかして貰うか……)

 

 それとも何処かから性格を変える本を探してきて読み、上書きを試みるか。いや、流石に本を確実に入手出来るアテはないし……それなら性格の変わる装飾品で一時的に取り繕う方がまだ現実的だ。

 

(とは言え、市販されてる性格を変える装飾品って何があったか……そもそもイシスで扱ってるかどうかって問題もあるし)

 

 アッサラームならぼったくり価格で性格の矯正出来る装飾品を売っていることは知っているが、売っているのは、性格をむっつりスケベに変えるネックレス。

 

(うん、状況を悪化させるだけだしな)

 

 寄り道するぐらいなら、まだトロワに打ち明けてすがりついた方がマシだろう。アイテム作成にかけては本当に天才的なのだ。

 

「……トロワに頭が上がらなくなるけど、やむなし、かぁ」

 

 こちらの声も聞こえない様子で針を片手に布地と取っ組み合ってるトロワの横顔を見た俺は嘆息すると作業中のトロワの方へと歩き出し。

 

「あ、マイ・ロード。何か御用でしょうか?」

 

「ああ。下着の方はどうだ?」

 

 流石にある程度近づけば気づいたらしく、布から顔を上げるトロワへ問う。俺としては、流石にいきなり切り出せず、会話するきっかけのつもりだった。

 

「あ、はい。イシスに着くまでにはマイ・ロードの分を含めて二着まではなんとか」

 

「そうか」

 

 ただ、真面目に返してくれたトロワが今も既に俺の依頼で下着を縫っていることに思い至ると、それ以上の言葉が出て来ず。視線は縫いかけの下着を経由して大きな胸へと。

 

(って、胸へとじゃない!)

 

 まさか、とは思ったが、これで確定した。やっぱりあれはえっちな本のページだったのだろう。本の形をしていないから油断したなんてただのいい訳だ。

 

(しかも、きっちりまだ効果が続いてるって証明までしちゃとか。やらかした……)

 

 近年まれに見る失態だと思う。

 

「マイ・ロード?」

 

「い、いや何でもない」

 

 いささか呆然としすぎたらしく、怪訝な目で見てきたトロワへ頭を振ってみせる。

 

(つーか、ここからどうやって切り出せと?)

 

 中身は一般人の俺にとって、ここからトロワに打ち明けて協力を仰ぐというのはハードルが高すぎた。

 




今作最大のピンチか、主人公、むっつりスケベる?

主人公は、果たしてトロワに助けを求められるのか?

次回、第百九話「主人公、煮え切らない」

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