強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百二十四話「まかり通る」

「おう、これは……」

 

 覆面(マスク)、ただ布か革で出来たそれを付けただけで、どうして見えてくる景色はこんなに変わった気がするのか。

 

(そして、気持ちまで変わったような気がするのは何故なのかな?)

 

 思いこみ、所謂プラシーボ効果なのか、それとも性格矯正アクセサリよろしく、この覆面(マスク)にも実は何か効果があるのか。

 

(違って見える方は、冷静に考えれば当然なんだけど、さ)

 

 覆面しても視界が変わらなかったら、逆におかしい。

 

(ま、何にしても、これだけやればスミレさんとかにばったり出遭ったとしても俺だとは気づかれないだろう)

 

 準備は調った、少なくとも俺側は。

 

(で、問題はトロワか。胸とかお尻は例の袋で小さくできる。となると、問題は耳、だな)

 

 エピちゃん達もそうだったが、エビルマージやアークマージの耳はエルフよろしく尖っており、トロワもその例に漏れない。

 

(お揃いの覆面(マスク)って訳にもいかないけど、トロワはデフォが覆面ローブだからなぁ……)

 

 耳を隠すために覆面をしてはかえって正体を連想してしまいそうだし、かといって先端の尖った耳を白日の下に晒して往来を行く訳にもいかない。

 

(なら無難なのはカツラ、かな)

 

 長い髪のカツラなら耳に被せることで尖り耳を隠すことは可能だと思う。

 

「となると移動は結局呪文が頼りかよ、しゃーねーなぁ」

 

「マイ・ロード?」

 

 あらくれ者になりきってボヤくと何でもないと言いつつも、覆面を買った店を出て人気のない路地へトロワの手を引いて歩き出す。

 

「へっ、ここなら良いだろう。ワリィな。あそこじゃ人の目と耳があったモンでよ。実はな――」

 

 危惧をトロワ自身に説明しない理由はない、となると言い過ぎだが、説明した方がスムーズに事が運ぶのは確か。

 

「なるほど、カツラですか。良いお考え……かと」

 

 顔を赤くし視線を逸らしつつもトロワは俺の話に幾度か頷いた。

 

「まー、お前って言うと覆面のある無しはあるもののいつものローブがイメージ強いからなぁ。ただ、耳を隠すとなるとフードか覆面って元のお前を連想させちまうようなモノになりがちだ。兜なんかは装備出来ねぇだろうし」

 

 そんな状況をカツラなら払拭出来ると俺は踏んだ訳だ。

 

「髪の毛の色が変われば印象も随分変わってくる、そう言った意味でも自画自賛になっちまうが、カツラって発想は使えるぜ」

 

 もっとも、髪色だけならトロワお得意のアイテム作りの延長でぱぱっと完成させてくれそうな気はするが。

 

「ともあれ、そう言う訳だから次はカツラ屋に向かう。手は放すんじゃねーぞ? レムオルっ」

 

 トロワの変装が完成していない以上、透明化して移動するのは仕方なく。

 

「おっし、このままカツラ屋近くまで直行だ! まかり通るぜ!」

 

 謎のテンションのまま、俺は駆け出した。ただし、警戒は怠らず。

 

(宿を出てから随分経ってるもんな。まぁ、そうでもないと覆面屋だって開いちゃいなかったんだろうけどよ)

 

 ただ、そんな時間帯だからこそ会いたくない人物とばったり鉢合わせするなんて事も考えられる。

 

(世界の悪意は油断も隙もねぇからな。しかもここんとこうまく行きっぱなしと来てやがる。こういう時こそ、持ち上げて持ち上げて持ち上げといて落としてくるってな)

 

 この状況下で考えられる最悪の展開は、変装がまだで不完全体のトロワがスミレさん辺りに見つかり、トロワの存在からとなりに居る謎のあらくれ者が俺だとバレ、連鎖的に隠しておきたかったことが全部バレる展開とかか。

 

(あとは、ごうけつの腕輪を無くしちゃって探し回ってる元女戦士と遭遇したとか)

 

 何となく別人になりきっちゃってるかのような俺だが、流石にせくしーぎゃるの相手は荷が重い。

 

(出くわしたら、こっちは透明だしスルー確定だな)

 

 念のため、気配と足音も殺し人気のない道を選んで俺は路地を進み。

 

「へへへへへ、なぁ、良いじゃねぇかよお?」

 

「離して下さいっ」

 

 聞こえてきたのは、女性が絡まれてるかのような、やりとり。

 

(最悪でもねぇけど、見過ごせない状況を持ってくる、か。よくよく考えたらこういうパターンの方があり得るじゃねぇか)

 

 それで居て、介入したら変装の終わってないトロワを見られる可能性が高いのでタチが悪い。

 

(確か、魔物相手では効果がなかったと思うが、やってみるのもいいか、透明のままもめ事介入)

 

 絡んでる男の方がめんどくさい相手だったら、死なない程度に叩き伏せてやっても良い。

 

(俺一人なら謎のあらくれとして直接助けにも行けたけど)

 

 この状況では望むべくもない。

 

「トロワ、流石に放っておけないから助けに行くぜ? 変装前だからお前はなるべく物陰に隠れてろ。一応透明化呪文(レムオル)はかかってるけど、効果時間切れって事もあるしな、念のためだ」

 

「は、はい」

 

「よしっ」

 

 言い含めたトロワからの返事を茎なり、俺は声の方へと走り出し。

 

「なんだいアンタら? その娘から手を離しな!」

 

(ちょっ)

 

 俺は嫌が応にも思い出させられた、世の中には合わせ技というモノも存在するのだと言うことを。

 

 




案の定と言うべきか、出くわした元女戦士。

主人公は果たしてどうするのか。

次回、第百二十五話「と言うかこの状況、俺、要らないんじゃね?」
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