強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百二十九話「静かな戦いへの――」

「今日も日差しが強ぇぜ」

 

 なんて独り言を言いつつ空を仰いで現実逃避したかったが、自重した。変装はしているとは言え、自分の人形買ってる人の側で声を発すとかそんな迂闊なことが出来よう筈もない。

 

(人形買ったって事は、俺を意識してる真っ最中ってことだろうし)

 

 それが、アンタの人形売ってたよ随分人気者なんだねと俺をからかうためだったとしても、その時、脳裏には俺が居る筈だ。

 

(ご本人の声が至近距離でしたなら、声が原因で正体がバレたって不思議はないし)

 

 世界の悪意が大ハッスルして俺を狙ってくる世界だ、用心に用心を重ねるぐらいできっと丁度良い。

 

(まぁ、いずれにしても、だ。あの元女戦士が何で俺の人形買ったのかは考えないでおこう)

 

 主に俺の精神衛生的に。

 

「ほら、店にはいるぜ?」

 

 ようやく声を出してアニスを促せたのは、すれ違い、宝飾店の前まで来た直後のこと。

 

「あ、すみません。今――」

 

 慌てて俺に続こうとしたのは、きっとアニスも気づいていたからだろう、すれ違った元女戦士(ようちゅういじんぶつ)のことに。

 

(気持ちはわかるというか俺も相当気になったもんなぁ)

 

 だから、きっとしかたないんだ、なぜか あにす の てにまで あのにんぎょう が にぎられてる こと とか も。

 

(うん……って、えぇぇぇえええ?!)

 

 なに それ。

 

(買った? あの短い時間で?)

 

 マスク越しでも俺の驚愕は伝わったのか。

 

「ご安心下さい、ちゃんと人数分買いましたから」

 

 微笑みつつ見せられたシャルロット人形と元バニーさん人形、更に一個じゃなかった俺人形を見せて、アニスは微笑み。

 

(違う、そうじゃ……あ、いや、そう言うことか)

 

 シャルロット達と会うことは既にアニスも知っている、だからこの買い物はきっとシャルロット達との再会後の話し合いを睨んでのものなんだろう。

 

(まったく、俺って奴は……)

 

 少しでも邪推した自分を俺は恥じた。

 

「そっか、離れていても心は一緒ってやつだな」

 

 シャルロットと一緒にゾーマを倒しに行くことは出来ない、だが、こういう形で一緒にいることなら叶う。

 

「はい。お二人の心の支えになれば――」

 

「ありがとな」

 

 人に聞かれては拙いと思ってか、小声で囁くアニスに俺は感謝の言葉をかけ、ふたつの人形を受け取った。

 

(へぇ、思ったより良くできてる。けど……)

 

 元バニーさんの大きな何かとかは強調する必要あったのかと思わずツッコんでしまいそうになる。

 

「ギストールさま?」

 

「お、あ、なんでもねぇ。ちょっと他の人形の出来が気になっただけだ」

 

 俺の人形なんてとてもじゃないが言えない。もっとも、アニスも俺の言いたいことは理解してくれたのかそれでは後で見ましょうかと続け。

 

「じゃ、いいモン見つけねぇとな」

 

「はい」

 

「さってと、良さそうなのは……」

 

 このままではヤな客でしかない、目的を果たすためにも、ちゃんとお客さんするためにも俺は顔を上げ、首を巡らせる。

 

「おっ」

 

 最初に目を留めたのは、羽を広げた鳩らしき鳥が二羽、水晶かダイヤか、ひし形の宝石を挟み込む様に配置された金色の草食が美しい水色の指輪だった。

 

「ああ、お客さんお目が高いですな。それは愛情が沸々とこみ上げる不思議な指輪を模して作られたレプリカとなっております。ただし、使われている石も金銀も全て本物、値段は勉強させて頂いて、今なら350ゴールドと致しますですが……」

 

「なんでぇ、レプリカかよ」

 

 俺が目を留めた理由は、わざわざ説明するまでもない。探し求めていた性格変更装飾品がしれっと展示台の中に並んでいたからに他ならなかったのだが、やはり世の中そんなにうまい話はない。

 

「じゃあ、こういった性格の変わる指輪ってのはこの店にゃ、置いてねぇか?」

 

「おお、これは失礼を。特別な効果のある指輪をお探しでしたか。でしたら、こちらへ。特別なルートから手に入れた稀少な品なので些少お値段は張るのですが……」

 

「なっ、本当か?」

 

 うまい話はないと言った直後にまさかの返答、俺は思わず身を乗り出し。

 

「は、はい。『いのりのゆびわ』と申しまし」

 

「そいつは性格変える指輪じゃねえだろ」

 

 持ち上げておいてから落とす発言へ気が付けばツッコミを入れていた。

 

「いや、まぁ、そんなオチだと思ってたぜ……」

 

「……ギストールさま」

 

 優しげなアニスの視線が痛かった。

 

「ま、いい。買う予定のモンは他にもあるしな」

 

 こんな所で挫けていられない。

 

「おっ、こいつなんかいいかもな。店主、これと同じデザインの指輪は他にもねぇか?」

 

 後々もめ事の種になっても拙いし、あの二人は仲が良かった気もするからお揃いなら尚のこと良いだろう。

 

「はい、そちらでしたらここに」

 

「おう、だったら三つくれ。箱つきでな」

 

「かしこまりました」

 

 注文すれば、頭を下げて屈み込む店主を見つめて待つこと暫し。

 

「お待たせしました、こちらがご注文の」

 

「おう、あんがとな。……アニス」

 

 差し出された小箱を左右の手で二つと一つにわけ、一つの方を差し出す。

 

「ギストール、さま?」

 

「いつもありがとな。感謝の気持ちに足りるかわかんねぇけど、貰ってやってくれ」

 

 少なくとも目的の一つは、これで果たせたと思う。

 

(けど、こっからだ)

 

 素材を買い終え、戻ったあとこそが静かな戦いの始まり。

 

(アニスは俺の側を離れられない、つまり……部屋に二人っきりでじーっとしてなきゃいけねぇんだからな)

 

 むろん、俺にもシャルロットと会った後話すことという考えておかなければいけないことはある。物事を考えるのには丁度良い時間だ、ただ。本当に考え事に集中出来るのか、紙切れの影響はわるさをしないのか、そんな不安は残ったままだった。

 

 




次回、第百三十話「作業用BGMってモノによっては逆に妨害してくる気がする」

ふぅ、ようやく買い物が終わりそう。

あと、全然関係ないですが、ヒーローズ2、トルネコの声がロリコ……フェミニストの人で吹いた。
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