強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第十三話「決意ってしてみたけど果たされないこと意外に多い」

「これは……」

 

 岩の影から覗いていた布の一部には見覚えがある。汚れ、色あせているが、ここに来て初めてあった誰かの服、その袖の部分とそっくりで。

 

「あーあ、見つかっちゃった」

 

 悪戯を見つけられたかのような当人の声がすぐ後ろでしたが、俺は振り向かなかった。

 

「えーと、驚いてないね?」

 

「トロワがお前の姿を知覚していなかったからな、可能性の一つとしては考えていた」

 

 当たって欲しいとは思わなかったものの、同じ服を着た白骨とムールの口ぶりからすると、まず間違いはないと思う。

 

「これが、お前だな?」

 

「うん。何とか魔物に見つからずに鍵の所まで行こうとしたんだけどさ、ドジ踏んじゃって……」

 

 それでも鍵の事が心残りとなってここに縛られてしまっていたのか。

 

「そもそも、怪しいところだらけだったからな。一部の者に姿は見えず、先人が要るにもかかわらず俺達が接岸した場所に他の船もない」

 

「あー、そうだよね。……と言っても、オイラ帰りはキメラの翼で別の出口から脱出するつもりだったからさ」

 

「成る程な。見たところ即死でもない。空が見えていればキメラの翼で逃げられたか」

 視線を再び白骨にやりつつ問えば、少年の幽霊は「たぶんね」と頷く。

 

「しかし、姿を認識しないモノが居るというのは面倒だな」

 

「えっ」

 

「……問題点はそこなのかと言わんがばかりの顔をしてるが、譲れんぞ?」

 

 現状も俺はトロワからすると独り言を言い続ける変な人と見られているかも知れないのだ。

 

「まぁ、幽霊だろうが死人だろうが、約束を違えるつもりはない。だが、黙っていたんだ、追加条件ぐらいは呑んで貰う」

 

「追加……条件? まさか、えっちなこととか?」

 

「待て」

 

 はっ と かお を あげるなり なんてこと を いいだすんですかね、この ゆうれい は。

 

「何をどうしたらそうなる?」

 

「え、だって……そっちの姉ちゃんに胸押しつけられてたし、そう言うの好きなのかなぁって」

 

「ま、マイ・ロード?」

 

 言いつつムールが指さしたのは困惑気味の変態娘。

 

(そうか、とろわ。おまえ の せい か)

 

 連れが変態過ぎて同性の幽霊に身の危険を感じさせるとか、どういうことですか。

 

「はぁ……とりあえず、この娘はただの変態だが、見境はあると思うから気にするな。俺が要求するのは、これから行うことを口外無用に――」

 

「口外無用? じゃ、じゃあやっぱりオイラもここでそっちのお姉さんみたいに初めてを奪」

 

「だああっ、何故そうなる!」

 

 いや、一応の予想はつく。

 

(あれか、もっと向こうの方での会話まで聞いてたのか)

 

 だからって、ま に うける ほう も ま に うける ほう だと おもいます。

 

(世界の悪意ってあの腐った僧侶少女に賄賂でも握らされたんですか?)

 

 少年と俺の絡みとかあの僧侶ぐらいしか得しないじゃないですか、やだー。

 

(ともあれ、さっさと誤解を解いてしまおう)

 

 もう、すぐに合流することは諦めるしかないとは思うが、そっちは仕方ない。

 

「要求は一つ、俺の仲間になれ」

 

「え」

 

「言っておくが、ホモ仲間とか曲解はするなよ?」

 

 これ以上エクストリーム誤解とかをされても面毒臭いので驚く幽霊には釘を刺す。

 

「っ、うん。約束を守ってくれるなら……オイラ」

 

「待て、何故そこで苦渋の決断をするかのような表情をする?」

 

 ごかいしてますよね、あきらか に ごかいしてますよね、これ。

 

「ま、マイ・ロードがほっ、ホモ? それであんなにアピールしてるのにいっこうに」

 

 と いうか、へんたいむすめ も だまれ。

 

「ったく、揃いも揃って貴様等は……まあいい」

 

 仲間になったなら、やることは一つだ。実際に行動に移した方が説明するよりずっと早い。

 

(大人になるって悲しいことだな、こう……知識が増えるから変な深読みをしてしまう)

 

 何とも言えない感情を胸に、俺は再び口を開いた。

 

「おお、我が主よ! 全知全能の神よ! 忠実なる神の僕ムールの御霊を今此処に――」

 

 白骨からの蘇生となるとグロ映像になる事は学習している。

 

「呼び戻したまえっ、ザオリクッ!」

 

 目を閉じたまま唱えた呪文は完成し。

 

「えっ、こ」

 

「な」

 

 驚いた様子の声が途中で途切れ、変態娘も声を上げ。

 

(っ、この何とも言えないモノが持ってかれる感じは……うん)

 

 おそらく成功したとみて良いだろう。

 

「……え、ええと、これって……オイラ、生き返」

 

「ふ、上手くいったか」

 

 先程と変わらず、ただ声の聞こえてくる方向が変わったことで、蘇生の成功を確信した俺は目を開ける。

 

「ふむ、蘇生はとりあえず成功と言ったところのようだが」

 

 開いた目に飛び込んできた光景に一つ問題があるとすれば、少年の着ていた服が色あせ若干ボロボロであると言うところ。

 

(蘇生呪文じゃどうしようもないもんなぁ、染みとか変色とかは)

 

 もっとも、収穫はあった。

 

(見たところ盗賊だし、編み出した奥義の後継者候補ゲット。その上で一緒に行動してれば隣の変態娘も情が移るかも知れない)

 

 そのままトロワとくっついてくれれば、逆セクハラされる日々ともおさらばである。うん、そんなにうまく行くかは微妙だけど。

 

(ゆめ を みたって、いいじゃない)

 

 逃亡劇は終わったのに、俺はまだ逃げ続けてるのかも知れない。

 

(ま、それはさておき、さっさと合流しよ)

 

 何だかんだで時間を浪費してしまった。

 

「さて、戻るぞ。他の皆と合流する」

 

 歩き出した俺は一度だけ振り返って立ちつくす二人に声をかけた。

 




バレバレだったかも知れませんが、新キャラは幽霊さんでした。

まぁ、名前が解って交渉出来ればあっさり蘇生させちゃうんですけどね。


次回、第十四話「そしてしれっと何もなかったように」

違いは一見するとムールの服だけ。

さて、誰か気づくかにゃー?
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