強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百四十話「決断」

「トロワはどうしたい?」

 

 効果が薄いなら転職するというのもありだと思うが、まずは当人の意思確認と考え、尋ねる。

 

「マイ・ロードのお考えをお聞きしても?」

 

「お前の後で良ければ、な」

 

 返ってきた答えは予想の範疇であったからこそ、俺は即座に言った。

 

「お前のことだ、俺と意見がかち合えば自分の方を引っ込めるのは容易に想像がつく。だが、他人からやらされるモノより自分から進んでやることの方が普通は熱意が籠もると言うのが俺の持論でな」

 

 だから先にお前の意見が聞きたいのだと補足もする。

 

「更に言うなら、俺は一般的なアークマージを越えて強くなった例を知らん。よって、新たに呪文を会得するのか、特殊能力を獲得するのかなど強くなった結果自体も知らんと言うことがある」

 

 それこそ、今後の重要な局面で戦局を良い方にひっくり返すようなモノを覚えるとすれば俺の意見だってこのまま修行続行一択と変わるだろう。

 

「つまりだ、こっちは判断を下すのに必要な情報が足りん。そこを踏まえるという意味でもお前の答えが先に聞きたい。先程、あの修行についておそらくは効果があるとは聞いた。その先に何か掴めそうなモノはあるのか?」

 

 この世界には戦士の様に成長しても能力が上がるだけという転職前提では微妙すぎる職業もある。何も覚えずレベルだけ上がって行くという可能性も残されている以上、俺としてはこう質問するしかなく。

 

「……今より強力な吐息を使えるようになるのではないか、と。そんな気がするだけですが」

 

「ほう」

 

 少し間をおいて口を開いたトロワの言葉に胸中でブレスかぁと漏らす。

 

(MP吸い取れない魔物がブレス攻撃してきたことがあったし、そうするとブレス系は精神力を消費せず範囲攻撃出来るよな)

 

 今のトロワが吐くことの出来るブレスは冷たい息という威力の心許ないモノだが、上位互換のブレス攻撃が出来るようになるのなら、このまま修行を続けるのも悪くはない。

 

(回復呪文とか補助呪文が使えない欠点はあるし、後で転職しないといけなくなるかもしれないけど、アークマージに再転職出来るかはまだ未検証だし、レベル上げも二度手間だからなぁ)

 

 やはり、トロワにはアークマージのまま、もう少し修行を続けて貰うべきだろう。

 

「それで、お前自身の意思は?」

 

 ただし、当人がそれを望めばの話。自身の意思まで口にしていないトロワへ俺は続いて問い。

 

「このまま、続けさせて頂きたいと思います」

 

「そうか」

 

 大好きな母親と同じ職業なのだ、何処かでそうなるだろうなとも思っていたからこそ、驚くこともなく、すんなり受け止め。

 

「そもそも、職業を変えるとなると、今までのローブが着られなくなるかも知れませんし」

 

「あ」

 

 続く言葉で自分の無神経さに気づかされた。確かに、今までアークマージ一筋であったと思われるトロワが他の職業用の服を持っているとは思いがたい。

 

(で、唯一着られそうな神秘のビキニも上の方がきつくて戦闘さえ出来ない有様だったもんな)

 

 装備の方は買いそろえても良いが、そうなると、今まで着ていたローブが装備出来ないのに場所をとる荷物になってしまう。

 

(こりゃ、後々に備えて色々用意しておく必要が理想だな。それから――)

 

 シャルロットと再会したら、あの袋を見せて貰って、トロワに再現品の完全版を作ってもらう必要もありそうだ。やはり、体積と量を無視して物の入る袋は、欲しい。

 

「マイ・ロード?」

 

「いや、たいした事ではない。今後の事を少し、な。とりあえず、ビキニの方は修理に出すとして……参考にお前の下着を同封してそれにサイズを合わせて貰えば良いか」

 

 ルーラで時間を使い、ジパングでサイズ合わせ出来る程時間に余裕はない。だからこそ、ビキニに関して出来るのは、それが精一杯であり。

 

「はい、そうですね。それから……今日の修行はいつものローブで行おうかと」

 

「それが良い。いつかはビキニに慣れて貰わねばならんかもしれんがな」

 

 俺にとっては生殺しパーティー完成への道と同意味だが、敢えてそこはスルーする。

 

「……と言うか、ああ言うモノが作れるだけの技術力があるなら、それこそ真っ当なローブや服にあの技術を活かしてくれればとも思うのだが」

 

 スルー出来なかった分が愚痴として零れるがそれぐらいはご容赦頂きたい。

 

「まぁ、まずは着替えて修行だな。さて、俺はここで待つ」

 

 話しながら歩いていた為か、いつの間にか辿り着いていた更衣室の前で、俺はドアの前から横に退き。

 

「はい。申し訳ありませんが、この布、もう少しお貸し下さい」

 

「あ、ああ」

 

「では、失礼します」

 

 胸を示したトロワは俺が頷くのを見て更衣室に消える。シャルロットにせよ今のきれいなトロワにせよ、無自覚とは思う、だが。

 

(もうちょっと、おれ と いう だんせい を けいかい して くれないか と せつ に おもう きょう このごろ です)

 

 旧トロワだったら意識してのことだろうが、あくまで俺が渡した布は応急措置だ。それもあるのだろうがトロワの胸が大き過ぎて、布は食い込んでいる上全てをカバーしきれず肌色をいくらか覗かせていたのだ。

 




次回、第百四十一話「せいちょう」

どこがかは、うん。お察し下さい。
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