「ふむ」
ただ、トロワの予想外な成長を見て、思うこともある。
(エピちゃん達も転職せずに修行したら何か覚えていたのかな?)
それは、あくまで俺の好奇心から来るただの疑問。エピちゃん達の転職はあくまで当人達の意思だったのだ。エピちゃんはカナメさんに近づくためで、そのお姉さんはそんなエピちゃんの気を惹くため。
「どうされました、マイ・ロード?」
「いや、他の仲間になった魔物も鍛えれば強くなれるのかという疑問が湧いてな」
強くなれるなら、ジパングにいる元バラモス親衛隊の皆さんに声をかけてイシスまで連れてくるのも手ではある。
(一歩間違えるとバラモスとの戦いで俺が助けたエビルマージの子が第二のトロワになるんじゃないかって危険性はあるけど)
修行すれば心強い味方になってくれる逸材を遊ばせておくのは勿体ない。
「他の仲間になった魔物と言いますと?」
「ん? ああ、そう言えば色々居たし、お前より古株の魔物も居るからな……」
丁度良い機会だと思った俺は、覚えてる限りの魔物と、その仲間になった経緯を簡単に話し。
「成る程。結論から先に言わせて頂くと、可能性はあります。そもそも、私がここまで短期間でこれほどの力を付けることが出来たのは、マイ・ロードがシャルロット様のお仲間であり、私も同理由で広い定義での勇者一行と見なされているからかと愚考させて頂きます」
「勇者一行と見なされているから?」
「はい。この国の兵士や立ち寄った冒険者の力量をマイ・ロードならご存じでしょう? もし束になってかかってきたとしても、私なら呪文で一掃出来ます。ですが、国を守ろうと長年厳しい訓練をしていると言うのに人間の兵達は、冒険者になって半年も経っていないミナヅキ様達クシナタ隊の方々に力量で遠く及びません。これだけお話しすればだいたいおわかりだと思いますが――」
「ふっ、そういうことか」
密度の濃い日々であり、倒せば膨大な経験値の入る
「つまり、勇者一行に何者かの与えた恩恵が、技術の熟練と戦士や魔法使いなどとしての成長を後押ししているのでは、とお前は言う訳だな?」
「はい。マイ・ロードにお仕えする前からこれほど簡単に強くなれるようであれば――」
「ゾーマ城は劣化版ゾーマで溢れかえっている、か」
「ごく希に血の滲むような修練によって頭一つ抜けた実力を持つ者が出てくることもありますが」
「ごく希な例外と言うことだろう? そちらにも心当たりはある」
シャルロットと一対一で戦ったじごくのきし、ディガスとか名乗っていた気がするが、あいつとか。
「戦闘力という面で限定しなければお前やウィンディもそちら側と言うことか」
そして、その希に見られる傑物に勇者一行限定サービスの成長チートが加わった結果、今のトロワになった訳だ。
「となると、大化けしそうなのはウィンディとディガス、それにあの元親衛隊長ぐらい、か」
なんて名前だったっけと胸中で呟くが、思い出せない、だが。
「いいえ」
トロワはすぐさま首を横に振った。
「ママンをお忘れ無く」
「あ、すまん」
「それから、心の支えになる人物がいればそれを糧に成長出来る者も居るかも知れません」
「つまり、エピニアにも可能性はあると?」
「はい」
そのながれだといつぞやのばくだんいわも大化けしそうな気がするのは気のせいだと思いたい。
「しかし、エピニアは転職してしまっているし、ウィンディは既にジパングでミリーのおじさまと幸せに暮らしてるだろうからな」
消去法で残ったのはあの元親衛隊長とディガスのみ。
「うーむ」
ただ、この内ディガスの方は外見が三対の腕を持つ人骨の剣士である上、この国に侵攻した軍に加わっていた。適正があったとしても連れてくるのは難しい。それこそ、使った者とその仲間の姿を変えるへんげのつえでも持ち出すか、消費する精神力の割に効果時間の短い透明化呪文を多用でもしない限りは。
「もっとも、あの元親衛隊長を連れて来るにしても往復で二日、そんな時間的余裕はない、か」
実際に試すなら、後回しにせざるを得ないだろう。今は、合流したメンバーの修行と、シャルロットへの説得についてが最優先だ。
「とりあえず、今日の修行についてはキリの良いところで切り上げるか。気が付けば随分時間が経っているようだしな」
「……はい」
「トロワ、お前も疲れただろう。戻ったら先に風呂に入ると良い」
ただ考え事をしていただけの俺と違い、トロワのローブにはあちこちに汗の染みが出来ている。
(ローブが有れば問題ないと思ってたけど、失敗だったなぁ。ここは砂漠の国だし、他のみんなはもっと涼しい格好してるってのに)
やはり、俺には気遣いというモノが足りないのかも知れない。
「す、スー様、それって……」
「えっ、うそっ」
「ん?」
いや、気遣いだけではないのか。回りの反応にきょとんとした俺は何が起こったのか、まだ分かっていなかった。
れ、れ、れ……そうだ、レタ……何とかさん!
次回、第百四十四話「あるぇ?」