強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百五十二話「俺は」

「ふっ」

 

 元バニーさんと遭遇した時点でその予想は出来ていた。

 

「ご主人様ぁぁぁっ」

 

 もたれかかるようなシャルロットに加え、元バニーさんまでが抱きついた状態で俺は視線をここではない何処か遠くへ向けた。

 

(と言うか……これ、どうしろと?)

 

 自分のやったことを鑑みれば、胸中での呟きはあんまりかもしれないが、ちゃんと理由はある。シャルロットだけでなく元バニーさんも水着とマントの組み合わせだったのだ。こんな格好で男性に接触して騒いでるところが見つかったら、被害を被るのは俺だけではない。まして、ここは二人にとって故郷なのだ。いくら師匠と言えど、異性に際どい格好で抱きついているところを見られたらどうなることか。

 

「とりあえず、中に入るぞ?」

 

 一応二人に断りを入れ、歩き出そうと試みる。

 

「そ、そうですね」

 

「えっ、は、はいっ」

 

 最悪二人を持ち上げることも考えていたが、意外にも二人からはすぐに答えが返ってきた。

 

(ただなぁ……まぁ、宿にはいるのが先決か)

 

 抱きついていた元バニーさんが肩をビクンとはねさせた上、顔を染めたのが気になるが、入ると言っておいて立ち止まっている訳にも行かない。

 

(えーっと……うん、気にしちゃ駄目だ、きっと)

 

 抱きつく場所を胴から右腕に変えてくれた元バニーさんと、反対の腕をきっちりホールドしたシャルロットを伴い宿に足を踏み入れる姿はまるで二人に連行されているような気もしたがあえて考えないことにすると、一端ロビーで立ち止まる。

 

「シャルロット、お前達の部屋はどうなってる? アンも同室か?」

 

 説得をするのはルイーダさんの酒場の個室のつもりだが、宿泊先を尋ねた時ダシに使った手前、おばちゃんのことを聞いておかないのはおかしい。

 

「あっ、い、いえ……最近はボクとミリーだけ二人部屋ってこともあるので……」

 

「ほう」

 

「け、けど大丈夫ですよ? ベッドもそこそこ広いですし、ボクとお師匠様とミリーぐらいなら……じゃなくって、聞きたいのはアンさんの部屋ですよね?」

 

「そ、そうだが……」

 

 そう言えば二人は仲が良かったなぁと思いつつ相づちを打った俺に若干錯乱しつつシャルロットが確認してきたので勢いに押されつつも肯定し。

 

「じゃ、じゃあ、こっちです。ついてきて下さい」

 

 肯定したと思えば、腕を急に引かれる。

 

「な、シャル、ろっ」

 

 強引さに面を食らうが、案内してくれるなら都合はいい。

 

(や、都合は良いんだけど……この強引さは何?)

 

 ひょっとして、俺はまた何かをやらかしたのだろうか。

 

「シャルロット、その、何だ……話が、ある、の、だが」

 

「わかってます。トロワさんをアンさんのところに案内したら、ボクとミリーの部屋でゆっくりと……それで良いよね、ミリー?」

 

「は、はいっ」

 

 何時の間にやらシャルロットに並んで俺を引っ張る元バニーさんがやけに物わかりの言いシャルロットの声に答え、なすがまま連行された先。

 

「アンさんのお部屋はここです。今ならお部屋にいると思いますよ?」

 

「そうか、トロワ。制約を暫く解く。母娘水入らずでのんびりしてくるといい」

 

「マイ・ロード、よろしいのですか?」

 

 シャルロットの言わんとすることを察した俺が振り返り許可すれば、トロワは驚きの声を上げ。

 

「ああ、ただ……程々にな?」

 

 頷き、きれいになった今は大丈夫だろうとは思いつつも一応釘は刺す。

 

(シャルロットや元バニーさんがこうだとするとおばちゃんまでビキニってのも考えられるけど……うん)

 

 大丈夫だと思いたい。

 

「さて、では俺達も行くか……」

 

「「はい」」

 

 二人が何故か気合いを入れまくっているような気がして解せないが、とにかく酒場の方に足を運んでくれるように話す必要はある。

 

(宿屋の壁の防音性についてはちょっと疑問が残るしなぁ)

 

 いつぞやの隣室カップルの件といい、エピちゃんがつるし上げられてたどこかの宿の件といい。

 

「ここです」

 

「っ、そうか」

 

 同じグループでとった別の部屋だからか、気づけばシャルロットはドアの前で立ち止まっており。

 

「先程の部屋の隣では無いのだな」

 

「あっちはサラとアランさんが借りてるお部屋ですから」

 

「……成る程な」

 

 カップル専用で別に個室を借りていると聞いて心の内面が波立つのは俺が非リア充だからか。

 

(わかってる……他者から見たら俺も充分妬まれた衣装だと言うことはね)

 

 両腕に押しつけられた感触は俺にとっては生殺しではあるのだけど、そんなこと説明もせずに理解出来たなら、驚きを通り越して恐怖だ。

 

(つーか、そんなこと考えてる場合でも無いんだよなぁ)

 

 アリアハンの入り口で出会ってしまった時点で、計画を一部変更はやむを得ないとして、どうやって話を本格的にする場所へと二人を誘導するか。

 

「部屋の防音性……」

 

 やっぱり、万人を納得させるなら、持ち出す理由はそれか。

 

「お師匠様?」

 

「ん? ああ、すまんなシャルロット。以前泊まった宿で隣の部屋の音や声が漏れていたのを思い出してな」

 

 ポツリと漏らしたのが聞こえたのか、それとも着いたというのに部屋に入ろうとしないことを訝しがったのか、声をかけてきたのを渡りに船とばかりに俺はその辺りが気になってなと続けたのだった。

 




主人公、わかってるのか? 今、お前さん大ピンチなんだぞ?

次回、第百五十三話「逃がさん……お前だけは……」

ええ、間違えてセーブしちゃったことなんてないですよ?

ないですとも。

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