強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百七十九話「もう君は一人前だシャルロット、ゾーマ大魔王を倒す日も近いな~」

「……着替えが終わったなら、修行に移るとするか」

 

 下手に何か言おうとすると墓穴を掘りそうな気がして、敢えてフォローの言葉は口にせず、俺は二人を促した。

 

(わざわざ装備を持ってきてくれたシャルロットの時間を無駄に浪費させる訳にはいかないからな)

 

 ついでに言うならスミレさんとかに見つかるとめんどくさい事になりそうだって言うのもある。

 

「おや、勇者様じゃないのさ」

 

「えっ」

 

「な」

 

 ひょっとしたら、それはフラグだったのか。声の方を振り返ると、そこに居たのは、開いたドアに手をかけた元女戦士の姿だった。

 

(しまったぁぁぁぁっ)

 

 確か記憶が正しければ元女戦士が出てきた先は水場。

 

(模擬戦を終えて汗を流しに来た人とかが居ても不思議じゃないから気配は感じてもスルーしてたけど、ピンポイントに遭ったらめんどくさい人とか……)

 

 これがあの腐った僧侶少女とかスミレさんでも別のベクトルでめんどくさいことにはなったと思う、だが。

 

「そっちに行くって事は、はぐれメタル風呂かい?」

 

 この(ひと)もめんどくさいと言うことをかけられた言葉で再認識し。

 

「ちょっ、違いますよ、何でそうなるんですか」

 

 そこがどんな設備かは知っているからこそ慌てつつ否定するシャルロットにそいつは入り浸っていたからだとは言えない。

 

「だな。何故そっちを選ぶ……模擬戦だ、模擬戦」

 

 だから、弟子の言葉に同意すると額に手を当てつつ俺は答えた。スルーしてシャルロットをあの発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)風呂に入浴させる外道師匠とか妙な誤解をされる訳にはいかない。

 

「ふぅん……模擬戦ねぇ」

 

「はい。お師匠様に、どれだけ腕を上げて貰ったか見て貰うんです」

 

「……へぇ」

 

 シャルロットがちょっと嬉しそうに頷けば、元女戦士の視線はこちらを向いた。何を考えてるかはわかる。いや、正確にはわからないしわかりたくないが、まぁピンク色一色のお子様には見せられない妄想だろう、きっと。

 

「面白そうじゃないのさ。そう言うことなら、あたいも混ぜさせて貰いたいね」

 

「えっ」

 

「いや、話の流れからしてそう言うと思ったがな」

 

 勘違いしていても、実際模擬戦を始めれば誤解は解ける。

 

(下手に参加お断りなんかした日にはどうせ淫らがましい隠し事でもあるとか勘ぐられるんだろうから)

 

 ここは、拒まないのが正解だ。ただの実力確認兼トレーニングだってわかれば興味も失うだろうし。

 

「来たければ来るがいい」

 

 若干突き放す形だが、許可を出し。

 

「話がわかるじゃないのさ」

 

「おししょう、さま?」

 

「……良いのですか、マイ・ロード?」

 

 喜ぶ元女戦士とは違い、驚きの表情を浮かべた二人に、俺は肩をすくめてみせる。

 

「駄目だと言って引き下がるようならそう言ったが、な」

 

 水浴びをしたと言うことは、修行を切り上げるつもりだったはず。

 

「にもかかわらず修行に参加したいと言い出した。どういう理由かは知らんが、そこまでして参加したいと言って居るんだ。断っても聞き入れるかどうか」

 

 人数が増えると修行の効率も悪くなるが、そんな説明で納得してくれるとも思えない。

 

「だが、敢えて行っておく。今回の模擬戦はシャルロットの実力確認を兼ねている。なんと言おうと最初はシャルロット一人だ、いいな?」

 

 無論釘を刺すのは忘れなかったし、元女戦士からは即座に構わないよと答えが返ってきた。

 

「なら、いい」

 

 最初はシャルロットと言って承諾させた、これは大きい。

 

(何か勘違いしてるとしても、シャルロットが普通に発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)と模擬戦を始めれば、仮に勘違いしていたとしてもその時点で気づくはず)

 

 後はトロワも加わったパーティーで発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)と模擬戦し、経験を積んでいけばいい。

 

(奥義伝授も考えるなら、今日はこっちに泊まって貰って、寝る前に部屋で伝授ってとこかな)

 

 ここでも良かったが、今は元女戦士というありがたくないおまけが居る。

 

(服を脱ぎだしたところで変な誤解でもされたら面倒だしなぁ)

 

 つくづく祟ってくれるが、そもそもはフラグを押っ立てた上、めんどくさい(ひと)との遭遇を警戒していなかった俺の自業自得だ。

 

「では、その実力、確認させて貰うぞ?」

 

 そうこうしてるうちに、模擬戦用の部屋に着き、既に修行を始めていたクシナタ隊のお姉さん達が模擬戦を終えたところで前に進み出たシャルロットへ俺は言った。

 

「はい、お師匠様っ」

 

 元気に答えたシャルロットは、聞き手で棍棒を握り締め、もう一方の手には盾を装着し、身構える。

 

「始めっ」

 

 魔物の入った籠が開いたのは、俺が合図をした直後。

 

「ピキィィィッ」

 

「やあああっ!」

 

 飛び出してきた発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)に前のめり気味な体勢で飛んだシャルロットは、床にぶつかって行くかのように棍棒を叩き付けた。

 

「……そこまで! 会心の一撃、か」

 

 出オチと言いたくなるまでに、勝負は一瞬だった。

 

「メタルスライムとかとの戦いは、慣れてますから……」

 

「っ、そう言えばそうだったな」

 

 えへへと笑ってみせるシャルロットの言に俺も思い出す。シャルロットは元々ジパングでやまたのおろち協力の下、灰色生き物(メタルスライム)相手に模擬戦をやっていたという事を。

 

「だが、それでもあいつの動きには充分ついて行けていたし、一撃の重さも申し分はない」

 

 少なくとも一撃で発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)をのしたアレをくらいたいとは思えなかった。

 

(ま、喰らうのは大魔王か。あの威力なら、装備を調えればゾーマを倒す分には充分かもな)

 

 夜になれば、本来人が一行動する間に二度行動するあれも伝授するつもりで居るのだ。

 

(原作のように単独でシャルロット達を迎え撃つなんて事はしないかも知れないけど、こちらだってクシナタさん達というに二つ目のパーティーが存在する原作にはないダブルパーティー制をとっている)

 

 数には数だ。そして、クシナタさん達には覚えている限りの原作知識だって授けてある。

 

(こっちもうかうかしていられないな)

 

 トロワや他のお姉さん達が模擬戦に加わるべく動き出す中、俺は心の中でポツリと呟いた。

 

 




サービスシーン入れようと思ったのに、気が付いたら書き終わってた。なぜだろう。

次回、第百八十話「夜、宿の部屋ですること」

すいみんですね、わかります。


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