強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第十八話「想定外? ああ、仕様です」

 

「で、ようやく広い場所に出たと思ったら、これか」

 

 嘆息しつつ周囲を見回せば、転がっているのは褐色尖り耳巨人の骸とたき火の跡やら何かの骨、つなぎ合わされたでっかい毛皮。

 

「完全に住処ぴょんね?」

 

「だな」

 

 そこそこの広さがあるが故に、トロル達はここを居住空間としたらしい。

 

「しかし、本当にあっけなかったな」

 

 骸になったトロルの内一体は、繋いでつくったでっかい毛皮を敷き布団にして暢気に寝転けていたので倒すのは簡単だったが、他の褐色巨人達にしても食事の準備か、こちらに背を向けたまま蝙蝠を串刺しにしたり火を熾そうとしていたので、戦闘と言うより一方的な屠殺と言った感じだった。

 

「川の側で悲鳴も上がっていたし、もっと警戒してるかと思ったが」

 

 どうにも理解出来ない。

 

「マイ・ロード。推測でよろしければ、お話し出来ますが」

 

「そうか、言ってみろ」

 

「では」

 

 そんな俺に声をかけてきた変態娘は、俺の許可を受けて話し出す。

 

「おそらく食事の準備をしていた者達は我々とは反対側から戻ってきた所だったのでしょう。ここに在る骨などゴミには魚の尾や蟹の殻の欠片もありますが、野外で暮らす獣の骨もあるようです。そして、先程通ってきた側は海に通じている。トロル達が食料の調達を一箇所に固定していないとすれば、下り坂付近で遭遇したのは、魚介類をとるため海に向かっていた者達で」

 

「別の出口や洞窟内で食料を調達するモノが他にいて、調理中の二体はそちらの所属だったという訳か。成る程な」

 

 考えられる話しではあった、だが同時に面倒な話しでもある。

 

「ならば、別方面から狩りを終えて戻ってくるトロルが居る可能性もある訳か」

 

 周囲に敷かれた毛皮の数と倒した魔物の数を数えると、毛皮の方が若干多い。

 

「時間があれば毛皮の下に落とし穴を掘るなんて嫌がらせもアリなんだがな」

 

 それどころか今の俺達は溢れた水に追われてるかもしれない状況だ。

 

「まぁ、居ないなら重畳だ。ここがこの有様だとすると先にある広場も同様に奴らの居住区になっているやもしれん」

 

「うむ、可能性はあろうな」

 

「急ごう」

 

 オッサンに同意された俺は仲間達を促すと、死体の脇を抜けぽっかり口を開けた横穴へ足を踏み入れる。

 

(とりあえず前方に敵の気配は無し、かぁ)

 

 トロルが一体ようやく通れる程度の幅であることを鑑みると、先方にとっても長く留まりたい場所では無いからかも知れないが、こちらとしてはありがたい。

 

「……このまま、広場まで戦闘なしで行きたいところだが願望と現実は別、だしな」

 

「予期せぬ鉢合わせは充分あり得るぴょん。スー様の場合、別種の思わぬアクシデントも多そうぴょんけど」

 

「……言うな、と言うか言わんでくれ。ムールが後ろに行ってストッパーがなくなったからな。トロワがいつ良からぬ事を企むかと思うと」

 

「マイ・ロード?!」

 

 カナメさんの指摘に嘆くふりをしつつ俺は声を上げる変態娘をスルーする。いや、それが俺のお前に対する正当な評価だからね、トロワ。

 

(とは言え流石にカナメさんに変態娘の逆セクハラを押しつける訳にも行かないし)

 

 難しいところである。

 

(一番良いのは、変態娘(トロワ)が俺以外の異性に惚れてくっついてくれることなんだけどなぁ)

 

 そうすれば、ご祝儀代わりに側に侍る宣言を無かったことにした上で盛大にお祝いしてやるし、あの常軌を逸した変態っぷりだって落ち着くと思うのだ。

 

(うーむ、もしくは性格を矯正する本を手に入れて読ませるか、だな。今の性格はえーと「あまえんぼう」だっけ?)

 

 お前のような甘えん坊が居るかと総ツッコミを喰らいそうな変態さんではあるが、とりあえずせくしーぎゃるでは無かった気がする。

 

(逆に言うならもう一段階変態化を残してるって事でもあるんだけどさ、うん)

 

 トロワの前々任者であるエピちゃんのお姉さんとエピちゃんがせくしーぎゃるった時は酷かった。好きな相手のパンツを覆面にして覚醒するというぶっ壊れっぷりを見せてくれたのだ。

 

(ただ、同時に頭の回転も良くなったとかそんな事を言ってたっけ)

 

 ほんと に せくしーぎゃる って なに なんだろう。

 

(って、駄目だ駄目だ。性格を変える本がどうのって考えた後にこの思考とか、世界の悪意が最悪の結果を用意しかねない)

 

 洞窟探索中に偶然宝箱が見つかって、中にあの本が入っていた上、それをトロワが読んでしまうぐらいの展開があっても、この流れなら驚けない。

 

「あれ?」

 

「どうしたムール?」

 

「ちょっと待って貰ってもいい? 岩の影に宝箱が」

 

 わぁい、せかい の あくい しごと はっやーい。

 

「じゃなくて……待てムール! せめてインパスの呪文を使って貰え」

 

 中身が本かどうかはさておき、ムール君の見つけたそれが本当に宝箱とは限らない。宝箱に化けた魔物だってこの世界には存在するのだ。

 

(そう言えば、シャルロットについてったあのミミック元気かなぁ? って、んなこと考えている場合でもないっ)

 

 まず重要なのは、宝箱が魔物かそうでないか、だ。

 

「……インパス。スー様、大丈夫です中身はアイテムみたいですよ」

 

「そうか、すまなかったな、俺の杞憂だったらしい」

 

「じゃあ、開けてみるよ?」

 

「ああ」

 

 中身はまだ不明だが、流石に「俺の心配はこれからだ」とか言う訳にもいかない。詫びてみせるとムール少年の確認に頷きで応じ。

 

「さーて、何が入ってるかなぁ? え゛っ」

 

 蓋の開いた箱を覗く顔が思い切りひきつった。

 




果たして、宝箱の中身は?

次回、第十九話「ぱんぱかぱーん」

ふふっ、中身が何か知ったら主人公はどうするのかしらね? え、中身? やあねぇ、秘密よ~。

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