強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第百八十六話「挑戦の始まり」

「それでは、お師匠様。大魔王を倒したら戻ってきますね。それから――」

 

 暫く寄り添っていたシャルロットは、モシャスの効果が切れると俺に挨拶をして去っていった。

 

「マイ・ロード、宜しかったのですか?」

 

「ゾーマを倒して戻ってきたらの先か?」

 

 トロワの問いに、シャルロットが去っていった方向を見て、肩をすくめる。きっと側に侍っていたトロワには隠したつもりの動揺を悟られてしまったのだろう。

 

「是非もない」

 

 この地の修行で戦力は揃いつつあり、装備もシャルロットが持ってきてくれた。

 

「賽は投げられた。なら、最初に決めていたことをやるしかあるまい」

 

 クシナタ隊には箒で空を飛べる稀少な人材が居る。エリザにギアガの大穴の見張りは頼んだ。

 

「勇者クシナタ一行の情報も定期的に伝えて貰っているしな。決着がつけば連絡が来る」

 

 クシナタさん達の攻略度合いを参考に、ゾーマが倒される見当を付け、竜の女王の城へ移動。大穴の見張りをしているエリザが俺達の待機する女王の城に到着し次第、俺達は神竜への挑戦を始めるのだ。

 

「……始めにダンジョンを攻略し、神竜の元へ辿り着く」

 

 先に移動呪文(ルーラ)が使える中継点まで攻略しておこうかとも思ったが、呪文で飛べるのはあくまで中継点まで。

 

(エリザが飛んでくるのに一日かかるとしたら、そこから一日だもんなぁ)

 

 ゾーマが倒され、二日かけてようやく中継点に到着というのは時間がかかりすぎのような気がした。

 

(あのダンジョン、他のダンジョンの使い回してつなぎ合わせたみたいな構造だったし……)

 

 空間を歪め結合させてるとかだったら、徒歩で制覇した方が早い可能性もある。

 

(シャルロット達がゾーマを倒す前にダンジョンに潜って検証してみるのも手かな……)

 

 時間を無駄にしないという意味では一考の余地はありそうだ。

 

「後はムール達がどれぐらいで帰ってこられるかもあるか……」

 

 ハーフエルフのムール君にはあっちに行ったことのあるクシナタ隊のお姉さんと一緒にエルフの隠れ里へ向かって貰った。人間には物を売らない里の店でもムール君になら物を売ってくれるのではと考えたこともあるが、ムール君の母親があの里の出身だったからと言う理由もある。

 

(里帰り……って訳でもないけど、多分ムール君のお袋さん、あっちじゃ行方不明扱いだと思うし)

 

 最終的に行方不明にはなってしまっているが、ムール君という子供が出来たことは報告しておいても良いだろう。

 

「エルフの飲み薬の数が揃えば、確実性が増す」

 

 もし、連続挑戦を受け付けてくれるなら、一戦した後で精神力を完全に回復する飲み薬を使って消耗した分を補い、もう一度挑戦するというのもアリだろう。

 

(駄目だったら中継点までルーラで戻ってもう一度、かなぁ? ただ、あの中継点に宿屋なんて無かったし、出直したとしても飲み薬は必須なんだよね)

 

 準備は順調に、着々と進んでいた。

 

「おや、こんな所にいたのかい」

 

 こう、唐突なタイミングで苦手な相手に声をかけられるまで概ねは。

 

「お前か……」

 

 城下町の出入り口のすぐ外だ、人の気配が近づいてきていたのは察していた。だが、旅人だと思った気配の主が見知った相手だったとは思わずつい振り向いた俺に元女戦士は言った。

 

「で、何時なんだい、出発するのはさ?」

 

「なっ」

 

「なんだいなんだい……あんだけ周りの人間が忙しなきゃ、あたいだって気づくさね」

 

 驚きの声を上げた俺に何処か気分を害した態を見せた元女戦は鼻を鳴らす。

 

「賢者になって沢山の呪文も覚えたし、足手まといにゃならないよ。今までの借りを返すって意味でもそのまま行かせるってのはね……それとも何かい、勇者様を見送ったんでハメを外しに歓楽街にでもしけ込もうって算段だったかい?」

 

「っ」

 

 脊髄反射で叫びたいところだったが、ぐっと堪えた。

 

(とは言えここで肯定して追っ払うなんてのは下策だしなぁ)

 

 こっちはトロワを連れているのだ。お子様はご遠慮願うようないかがわしい店に行くなんて話は無理があるし、無理を押し通そうモノなら、ついて来かねない。腕輪がなきゃせくしーぎゃるだもの。

 

(こっちに恩義を感じてるって面でもな)

 

 スミレさんとかと比べればまだやり込めやすい相手のような気もするが。

 

「一夜のお相手を探してるってんなら、あたいで良ければお相手す」

 

「やめろ、服を脱ぎ出すな!」

 

「おや、違ったかい。じゃ、何処か行くんだね?」

 

 前言撤回、充分タチが悪かった。

 

「お前……」

 

「冗談はあれぐらいでおいておいてさ。隣に連れてるそっちの人の格好と職業、ついでに同職だからこそわかる強さを鑑みればね、何かとてつもないことをやろうとしてるって事ぐらいあたいにもわかるのさ。だからね……」

 

 頼って欲しいんだよと、元女戦士は言う。

 

「ここに来て自分はかなり強くなったと、自惚れかも知れないけど、あたいは思う。だってのに、声もかけてくれないなんて……あんまりじゃないのさ。あたいは、そんなに使えないかい?」

 

 ここで使える使えないじゃなくて俺の貞操が不安なのでとか言えたらどれだけ良かっただろうか。

 

「はぁ……お前が、お前の実力ならわかっている」

 

 発泡型潰れ灰色生き物(はぐれメタル)風呂に入り浸っていた変態さんだ。原作で言うところのレベルカンストを賢者でやっていたって驚かないし、もし一ターン二回行動を会得したなら戦力としては申し分ない。

 

(ただ、なぁ。変態に技術を与えるとろくな事にならないって歴史は証明してる……)

 

 単に攻略だけを考えるなら、パーティに入れた上、シャルロットにもやったアレをして技術を会得させるのが一番だ、一番なのだが。

 

「今晩、俺の部屋に来い。そこで話す……」

 

 俺は選択を間違えただろうか。

 

「そ、それじゃ」

 

「ああ」

 

 せくしーぎゃるの前であれをやるとか。まったく、どれ程無謀な挑戦か。

 

「マイ・ロード、そろそろ来られるのでは?」

 

「そう、だな……ん」

 

 そして時間は流れ夜になり、元女戦士を部屋で待つ中、近寄ってくる気配を感じ取る。

 

「来たか」

 

 こうして、俺の挑戦は始まった。

 

 




あるぇ? ダンジョンにたどり着けなかった。


と言うか、その前に主人公の貞操はどうなっちゃうの? このまま元女戦士に襲われちゃったらいろんな意味で拙い流れになっちゃう! お願い、襲われないで主人公!


次回、第百八十七話「ダンジョンにせくしーぎゃると行くのは間違っているのだろうか」

デュエル、スタンバイ!


って、あれ?

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