「では、行くとしよう」
俺がクシナタ隊のお姉さん達や元女戦士、トロワ達を見回してそう言ったのは、元女戦士を同行者と決めた次の日の昼頃のこと。
「任せときな……しっかし、あんたにゃまた借りが出来ちまったね」
戦士時代の癖か力こぶを作るようなポーズで応じた元女戦士はポツリと漏らしてこちらを見る。そう、もはや元女戦士はせくしーぎゃるでなくなっていた。ムールくんが性格の変わる本を十冊ほど持って戻ってきたため、内一冊をこの元女戦士に渡したのだ。
(おろちの時みたいなオチはもう無いだろうし、これで一安心かな)
実際、件のダンジョンの中継点まで攻略が進んだ暁には、神竜のことだって教えても良いかもしれない。
「お前達には事前に伝えておいた通り、過酷な道のりが予想されるくれぐれも気は抜くなよ?」
「「はい」」
「いい返事だ。……誰か、ルーラを頼む」
人の目がある場所で俺が呪文を唱える訳にはいかない。
「わかりました。ルーラッ」
クシナタ隊に所属する魔法使いのお姉さんがこちらの要請に答えて呪文を唱え、身体は城下町の入り口から上空に浮かび上がるとある程度の高さまで来たところで移動の向きがほぼ真横に変わる。
「いよいよ、か」
流石にここで異動先を間違えるなんてポカをあのお姉さんがやらかすとも思えない。辿り着くのは竜の女王の城、そして向かうのは原作でクリア後にしか訪れられなかった洞窟だ。
(原作だと、ゾーマを倒したメンバーを総取っ替えしても洞窟には行けたはず……なら理論上、俺がいけないはずはない)
クリアが条件に含まれていた場合、それは俺の借りているこの身体が満たしている。
(クリアが、ゾーマの撃破が関係ないなら、ごく普通にあのダンジョンへ行けるだけだし)
何より、竜の女王の言葉がある。今より前のタイミングで神竜に挑めなかったら、叶える願い事が減ってしまうからと俺のために神竜でも病気は治せないと嘘をつく必要はなかったはず。
(洞窟には行けるんだ、それは間違いない)
では、洞窟に出る魔物には勝てるか。
(若干反則っぽい手段ではあるけど、装備も戦力も揃えたからなぁ)
問題は、ない。
(どっちかって言うと、バラモスもどきとの接触とかの方が不安な気がする)
元女戦士には調査だと嘘をついてしまっている。故に、本当のことを話すか、なぜあんな強い魔物が相応の調査をする必要が出てくるのだ。
(シャルロットがいれば仲間に出来ないか試す何て事も出来たかも知れないけど、ゾーマを倒して貰うってのにさらに手を煩わすとかないしなぁ)
魔物使いの心得とやらを誰かに学ばせておくべきだったか。
「ふむ、魔物との会話、か……そうなってくると、頼りに出来そうなのはお前だけだな」
魔物によってはエピちゃんの様に捕縛するというのもありだろうが、こちらにはアークマージだったトロワがいるのだ。
(確か、色違いの敵も居た筈だし、あっちだったら……あ)
そこまで考えて、ふと気づく。
「お任せ下さい、マイ・ロード。……マイ・ロード?」
「ん? あ、何でもない」
気づいたが、タイミングが悪かった。
(とは言えなぁ……)
俺が思い至ったのは、相手が昔のトロワみたいな女の子だったらどうしようと言うモノ。トロワを前にして平静でいられなかったとしてもしょうがないと思うのだ。
(つーか、今思い至ったってそれ自体フラグっぽいんだよなぁ)
どうかまともな相手でありますように、と俺は静かに祈った。効果があるか何てわからないけど。
「マイ・ロード、そろそろ到着のようですよ」
「っ、そうか」
祈りを止めたのは、トロワの声に顔を上げるのとほぼ同時。
「何を祈っていらしたんです? 随分真剣にお祈りされてたようですが」
「いや、探索が無事に成功するように、とな」
声には出していなかったというのに見られていたらしく、クシナタ隊のお姉さんの一人が声をかけてきたものの、俺は何でもないように答え、着地の体勢をとる。
(遭遇する魔物の性格だって探索が無事成功するかの要素の一つだし)
広い定義で見れば嘘はついていないんじゃないだろうか。
「っ」
着地したのは城の前。
「へぇ、立派な城だねぇ。で、ここからはどっちに行くのさね?」
「中だ」
確か馬の門番だか門兵が居た気がするが、前に一度中に入った城。
「どうぞお通り下さい」
元女戦士の質問に答え、そのまま中へと踏み居れば、喋る馬にはあっさり通過を許され。
「ふぅん、随分風変わりな城だねぇ」
平然としたまま元女戦士は俺の後ろをついてくる。
「驚かないのかって? まぁ、昨日たっぷり驚かせてもらったからね、今更馬が喋るぐらいどうってことないよ」
「そうか」
なら、ステンドグラスから降ってくる光の中に入るって移動法にも驚かないのだろうか。
「いや、取り乱さないなら好都合だな。このまま目的地に行くぞ」
「ああ、大船に乗った気でいな」
腕輪で性格が豪傑になっているからか、元女戦士は心強い限りであり。
「なっ」
それでも、流石に周囲の視界が急に歪み出せば驚くらしい。
(まぁ、俺は原作知識あるしなぁ)
俺が教えたクシナタ隊のお姉さん達もだ。
「ん?」
ただ、
(あー、移動する類のモノだから、離れないようにって)
思ったのかと思考するよりも早く視界は元に戻り始める。
「到着、か」
足は草の生えた地面を踏みしめ、左手に見えるのは大きな湖。右手には幾本もの木々が多い茂っているのが見えた。
(予想はしてたけど、ここも広いなぁ)
原作だったら画面一つで収まった記憶があるが、やはりここも町や村と同じで相応の広さを持っていた。
「洞窟はこのまま真っ直ぐ進んだ先にある。ちなみにここは空の上らしいからな。無いとは思うが縁に行って落ちるなよ?」
実際落ちることが出来たかは記憶にないが、原作とこの世界には差異がある。あっちでは大丈夫だったからとタカをくくって失敗もしたくない。
(まして、凶悪なモンスターが出るなら尚のことだよな)
俺は気を引き締めて歩き出し。
「ふむ、タカのめを使うまでもなかったな」
やがて視界に見え始めたのは、ぽっかりと口を開けた洞窟。
「隊列を整えろ。俺が先頭に立つ。奇襲に備えて最後尾も盗賊に。魔法使いが真ん中だ」
入り口の側まで来て足を止めた俺は振り返り仲間達に命じた。
いよいよ、クリア後ダンジョン突入です。
果たして胸の大きな女の子モンスター登場となるか?
次回、第百八十九話「アナザーディメンジョンかな?」
銀魂の怪談聖闘士パロディ回、爆笑したなぁ、うん。