強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第二百六話「挑戦の時」

「あと一息……だな」

 

 階段を上りきった先は、見たところ通る者を迷わせるような構造ではなく、ほぼ左右対称の構造をしているらしい。

 

「見たところ、行き止まりはなさそうだが、このフロアが終点とも思えん。おそらく神竜が居るのはこの上の階だろう。各自、心の準備はしておくようにな」

 

「「はい」」

 

 流石にここまで来るとスミレさんもふざける気はないのか、返事は綺麗に重なり。

 

「では、行くとしよう……む」

 

 右手に見える壁を回り込むようにして歩き出そうと思った直後だった。

 

「マイ・ロード……敵、ですか?」

 

「ああ。とは言っても、鉢合わせになるのはこのまままっすぐ言った場合だけだがな。反対側から回るぞ」

 

 ここまで来て戦闘で無駄に体力や精神力を使いたくはない。遠目にちらっと見えた金ぴかの体躯に少しだけ助走を付けて強襲したくなったが、あれは見た目の似たとある元凶(グレゴリック)ではない。

 

(為すべき事を見失っちゃ駄目、だよな)

 

 ぐっと堪え踵を返した。

 

(さてと……柱にしては太すぎるし、おそらくこの壁の向こうは小部屋かな)

 

 お宝の匂いもしないし、何もないか、あるとすれば上へ向かう階段だろう。

 

「ほう」

 

 回り込んでみれば、案の定。壁の途切れ目から中を覗けば、そこには一回り明るい色の草が生えた四角い地面の片隅に上り階段があり。四隅には茂みがあって、それらを囲うように部屋の中を若干濃い色の草が茂る。

 

「空中庭園、と言ったところか」

 

 ぼそりと零して見つけた階段へ向かい、俺はこのフロアを後にする。

 

「あれは……」

 

 そして、階段を上りきったところにそれはあった。

 

「篝火、か」

 

 神殿にでも使われていそうな円柱の柱が並ぶ手前に幾つかの篝火が赤々と燃えていたのだ。

 

「いかにも、だな」

 

 周囲を見回せば、すぐ目に飛び込んできた。連なる段が作り出す祭壇。最上部へのぼる階段の左右にも篝火は焚かれ。下からでは全貌こそ見えぬながらも、空をたゆたう緑の竜の上半分ははっきり見て取ることが出来たのだ。

 

「神の竜は己と戦い、己を倒すまでの時で挑みし者が願いを叶えるに足る者かをはかる……となると、事前に呪文で強化しておく訳にもいかんな。反則ととられかねんし……」

 

 何より神竜はかけられた補助呪文をかき消す凍てつく波動を放つことが出来る。

 

「やはり、小細工は不要だな。神竜と戦闘になったら、一名がスクルトとフバーハを担当、残りはひたすらメラゾーマをぶちかませ。補助要員は最初はトロワで以後は一人ずつ後ろにずれる。ダメージを受けたり、眠らされた者の回復は次に補助する者とその次に補助する者が担当、どちらも寝ている場合は起きている者で一番素早い者が呪文で起こせ。ただし、俺が起きているようなら、俺がザメハの呪文を使う」

 

 だから、俺は祭壇を登り始める前、神竜には聞かれないであろう位置で指示を出し。

 

「メラゾーマ、ねぇ」

 

 元女戦士はどことなく不満げだったが俺にも理由は察せた。

 

「ああ。お前は武器が使いたかったかもしれんが、相手は硬い鱗に身を包んだ竜だ。武器で手傷を負わせるならバイキルトでの強化が欠かせんが、神竜は補助呪文の効果をかき消す術を持つらしいのでな。補助呪文をかけてはかき消されてのいたちごっこになるよりは、きっぱり武器での戦闘は諦め、攻撃呪文の火力で押した方がシンプルな上、手間がかからん。それに今回は実際神竜と戦ってみて、その強さを確認するという狙いもある」

 

 再戦の機会はあるから最初の一回は譲ってくれと頭を下げれば、誠意が通じたのだろう。

 

「そこまでされちゃ仕方ないね」

 

 ため息を吐いた元女戦士は手にしていたはかいのてっきゅうの鎖を束ね、輪を作って背中に背負う。

 

「さ、これでいいだろ?」

 

「すまん」

 

 譲ってくれた元女戦士へもう一度頭を下げ。

 

「スー様」

 

「ああ」

 

 背にかけられた声に振り返らず応じると、階段を上り始めた。

 

(しかし、けっこう幅があるな。まぁ、当然と言えば当然なんだろうけど)

 

 原作と比べるとかなり幅広な階段だったが、この幅の倍が戦場になる祭壇最上段の横幅のだいたい半分と言う見方をしたら、広いとは決して言えない。

 

「スー様、あちら様、あたしちゃん達ガン見してない?」

 

「明らかに見てはいる、な。まぁ、無理はなかろう」

 

 神竜の向こうにあるのは青い空。スミレさんの言うあちら様からしてみれば、俺達は自分に会いに来ているとしか思えないのだ。そして、今まであの神竜は願いを叶えて貰う為にやって来る訪問者と何人も出会っているはずでもある。

 

(こっちは原作知識でうろ覚えとはいえ、あちらさんのことを知ってるけど向こうは情報がほぼない訳だしなぁ)

 

 俺達を観察し、別の挑戦者達と戦って得た情報を元に強さやとってくる戦法を予想しているのだとしても驚かない。

 

「ほほう……。ここまでたどり着ける人間が居たとはな」

 

 そんな神竜による俺達の観察は、祭壇の最上段に豪奢な絨毯が敷かれていることに俺が気づいても続いていた。

 

「まぁ、ご覧の通りだ。そして、あなたのことは色々と聞いている。ここまでたどり着き、自らを倒した者に褒美として願いを叶えてくれると言うところまで」

 

 これ以上の会話は必要ない。

 

「なるほど、では用意は出来ていると思って良いのだな?」

 

 確認してきた神竜に言葉では答えず、俺は首を縦に振る。何故なら、口は呪文を紡ぎ、完成させる直前だったのだから。

 

「メラゾーマッ!」

 




神竜のHPはだいたい41メラゾーマ弱ですので、フレイザードが八体居れば1ターンで片が……つくのかなぁ?

主人公達の場合、一人二発撃てますので、(パーティー人数-1)×2が1ターンに飛んで行くメラゾーマの数になります。

主人公、カナメ、スミレ、で6発。他にも居ますから……うん。

次回、第二百七話「神竜」


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