強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第二百七話「神竜」

「「メラゾーマ!」」

 

 俺に倣うように唱えられる呪文、飛んで行くいくつもの大きな火球。

 

「ぐ」

 

 俺の撃ち出した火球が炸裂し漏れかけた神竜の呻きが爆音にかき消されるが、視界にある巨大火球(メラゾーマ)全てが命中してもまだ倒せないことを俺は知っている。

 

「っ、来るぞ!」

 

 連なり炸裂する火球の中、微かに緑の体躯がかいま見えた時、反射的に叫んでいた。

 

(さて、何が来る――)

 

 予想した通りでありますようにと密かに願いつつ身構えた直後。

 

「フシュオオオオッ」

 

「ぐっ」

 

 腕を叩き付けられ、俺は吹っ飛ばされた。

 

「スー様!」

 

「マイ・ロード!」

 

「気をとられるな、次が来るぞ!」

 

 確か神竜もこちらと同じで常人の倍動くことが出来たはず。

 

「は、はい。スクルト!」

 

 声をかけた甲斐はあったのだろう、我に返ったトロワが呪文を完成させ。

 

「フシュアアアッ」

 

「ちぃっ」

 

 耳を塞ぎたくなる程側であがった咆吼に顔をしかめ、床を転がる。

 

「きゃあっ」

 

「かはっ」

 

「うくっ」

 

 後方であがったのは、トロワを含む複数の悲鳴。

 

「いきなり、のしかかってきたか。かろうじて間に合ったスクルトでダメージは幾分減ってるはずだが……」

 

「ベホマラー! みんな、大丈夫?」

 

「メラゾーマ。ん、なんとか」

 

 ちらりと振り返れば、顔をしかめつつ範囲回復呪文を使うクシナタ隊のお姉さんと火球を飛ばしつつ答えるスミレさんの姿が見え。

 

「「メラゾーマ」」

 

 俺の撃ち出したモノを含め、再びあちこちから飛んで行く火球。

 

(まぁ、しょっぱなから「いてつくはどう」を無駄撃ちしてくれるのを期待するのは、ムシが良すぎたかな)

 

 おおよそ想定の範囲内で動く戦況に安堵しつつも都合の良い結果を望みすぎていた自分に苦笑し、そもそも神竜は俺の願いを叶えてくれる為に存在している訳じゃないんだと戒める。

 

(それに、シャルロット達の働きに報いる為にも――)

 

 神竜に勝ち、願いを叶えて貰わなければいけなかった。

 

(神竜のHPなんて覚えちゃいないけど、二回行動と原作を越えた人数であることを考えれば、ゲームの時より短い時間で勝利出来るのは間違いない)

 

 手数だけなら倍を越える、理論上半分以下の時間で勝てたっておかしくはない。

 

(そして、神竜が願いを叶えてくれるかどうかの条件は規定のターン以下で勝利することだったはず)

 

 人数が多いことで条件が厳しくなっている可能性はあるが、それでもありったけのメラゾーマを撃ち混み続けたなら。

 

「フバーハ」

 

「……これでブレスも半減、だな」

 

 神竜ののしかかりで少し遅れたものの、トロワによる補助呪文が完成し、口の端をつり上げた俺は声には出ささず次の呪文の詠唱を始める。

 

「メラゾーマっ!」

 

 唱えたのは攻撃呪文。飛んで行く火球と入れ違いにこちらへ放たれたのは、補助呪文の効果を消すいてつくはどうだった。

 

「想定通り。補助呪文が重なればそうでるとは思っていた……それに」

 

 視界の中で爆発が生じ、直撃を受けつつもアギトを開いて突っ込んできた神竜を見た俺は開いた口に向けて手を突き出した。

 

「メラゾーマっ!」

 

 呪文の効果は補助呪文がなくなろうが、変わらない。火球は神竜の口の中に飛び込み。

 

「ぐうっ」

 

 閉じた口に生えた牙が俺の腕を噛み砕く。痛いと言うより熱いと言った方が正しい感覚は、果たして痛みからくるものだけだったのか。

 

「シュゴッ」

 

「う、ぐぅ」

 

 咀嚼の途中、口の中で生じた爆発に吹き飛ばされ。

 

「ベホマっ! スー様、なんて無茶を」

 

「くっ、すまん。だが、今の一発は外皮に当てた時の比ではなかったようだぞ……」

 

 回復呪文をかけてくれたお姉さんに非難され、謝りつつも倒れた神竜を示して見せた。

 

「これは……」

 

「あたしちゃん、ドラゴラムしてる時に同じ事はされたくないなぁ」

 

 口の中を燻らせた神竜の内より立ち上る黒煙。絶句するクシナタ隊のお姉さんが居る一方で、スミレさんは本当に嫌そうな顔をし。

 

(腕をやられるのを覚悟した一発だったし……相応のダメージは与えられたみたいだなぁ)

 

 口から漏れた爆風と言うおつりを貰いはしたが、砕かれた腕も含め、先程の回復呪文が全快させてくれ、今の俺には傷一つない。

 

「このまま畳みかけるぞ!」

 

 視界の中で神竜はまだ地に伏していたが、これで勝ったと思う程俺は自惚れていなかった。

 

「メラゾーマっ!」

 

「「メラゾーマ!」」

 

 放たれる火球。着弾し、巻き起こる爆発。

 

「フシュアアアアッ」

 

 だが、身を焼かれ炎の花を身に咲かせても尚、怯まず突っ込んできた緑の竜は腕を振るい、口から灼熱を吐く。

 

「くっ、ゾーマとやり合った時よりはマシの筈だが……」

 

 味方は居るし、かなりのダメージを与えてもいるはずだというのに顔が歪むのは確実と思いつつも何時勝利するかがわからないからか。 

 

「メラゾーマっ!」

 

 考えても仕方はないただ一発でも多く当てれば勝利は寄り近づくと信じ、呪文を唱え。

 

「みごとだっ! この私をこれほど短時間で打ち負かしてしまうとは……」

 

 身を起こした神竜が俺達へ賞賛を送ったのは、それから数度の応酬が終わった後のこと。

 

「ならば、願いを叶えて貰おう。俺が願うのは――」

 

 そして、俺は言った。勇者とその仲間達の身内で他者によって命を奪われた人達を生き返らせて欲しい、と。

 




遂に神竜に打ち勝ち、願い事をする主人公。

だが、挑戦し願い事を叶えて貰える回数はまだ二回残っており――。

次回、最終話「ありがとう、そしてさようなら」

再び神竜に挑んだ主人公は願う。

あ、次が最終話としましたが、そのあとにエピローグ書くかもしれませぬ。
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