強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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ご注意:このお話は前作の『強くて逃亡者』に掲載されるものと全く同じものになります。ご注意下さい。


ばんがいへん・すぺしゃる「(???視点)」

「今日も良い天気にゃ」

 

 目覚めて窓の外を見れば、地平線からお日様が顔を出してたにゃ。雨の日は気持ちもどんよりしちゃうから、リシアとしてはお天気は大歓迎にゃ。

 

「今日は良いこと有るといいにゃあ」

 

 ご飯がちょっと豪華だったり、ルイーダさんがお酒を飲ませてくれたり。

 

「リシア、もう起きてる?」

 

「あ……はいにゃ! 起きてるにゃよー?」

 

 階下から聞こえたルイーダさんの声にリシアは返事をすると、急いで服を着替え始めたにゃ。

 

「おっしごと、おっしごと♪」

 

 ここ、アリアハンにとんでもない大ニュースが飛び込んできたのは、それなりに前のこと。この酒場に住み込みで働いていた同じ遊び人のミリーという先輩が、勇者様と共にバラモスを倒すため旅立ったそうにゃ。

 

(それだけでも驚きだったのに、そのミリー先輩が賢者になっちゃうなんて)

 

 続報が届いた時はみんなビックリしたにゃ。

 

「経験を積んだ遊び人は賢者になれる」

 

 それを知ったお客さん達は今まで使えないなんて馬鹿にしてたのが掌を返したようにリシア達遊び人に声をかけるようになって、職業訓練所に足を運ぶ人の中にも最初から遊び人になりたいという人が増えた。

 

(まぁ、それは一過性のものだったけどにゃ)

 

 遊び人を極めるのがどれ程苦難の道なのかは、リシア達遊び人が一番良くしってるにゃ。

 

(それでもみんなと冒険したくて誘われてついていった子の気持ちも……リシアはわかる)

 

 だから、誘われて冒険に出た子達が賢者になって戻ってきたらリシアも嬉しいにゃ。

 

(中には賢者目当てじゃない人も居たけどにゃ)

 

 女の子みたいに可愛い顔をした盗賊の男の子と、恥ずかしがり屋の遊び人の女の子。

 

「では、よろしくお願いしますね?」

 

「うん、よろしくね?」

 

 ルイーダさんに引き合わされて丁寧な口調の盗賊さんに恥ずかしげにはにかんで答えた遊び人さん。

 

(何とも初々しかったにゃぁ。元気でやってるといいけどにゃ)

 

 出会いと別れの酒場と言うだけあって、ルイーダさんのお店はいろんな出会いと別れに満ちあふれてるにゃ。

 

(リシアもいつか……あ、けどここのまかないけっこう美味しいからにゃあ)

 

 ミリー先輩が住み込みで働いていたのは借金があったからって聞いてるにゃ。一緒に働いてる友達は第二のミリー先輩になりたいかららしいにゃ。

 

(人それぞれ、皆違うにゃね)

 

 リシアは美味しいご飯のため。これで美味しいお酒まで飲めたら言うことはないにゃ。

 

(まぁ、前に飲み過ぎて失敗したのはリシアだから今お酒飲めないのは仕方ないのにゃ)

 

 過ぎたことは反省して次に活かす、殊勝な態度で居ればきっとルイーダさんもいつか許してくれるにゃ。

 

「にゃふん、その為にも……今日もお仕事頑張るにゃ!」

 

 気合いを入れて、まずするのは――。

 

「うへへ、駄目ですよぉ、ヒャッキ様ぁ。リシアが見てるのに、そんな……ああっ、んっ」

 

「この、寝ぼけて人に見せられない顔になってる人を起こすことにゃね」

 

 ぶっちゃけ、人を夢の中へ勝手に出演させないで欲しいにゃぁ。

 

「ほら、起きるにゃよ?」

 

「あ、ああっ、そんな激し、んあっ」

 

 けっこう激しく揺さぶってるのにねぼすけさんの顔はだらしなくなる一方。

 

「うにゅう、筋金入りだにゃぁ」

 

 幸せな夢を見るのがいけないとはいわにゃいけど、このままだとリシアまでルイーダさんに怒られちゃうにゃ。

 

「……仕方ないにゃあ」

 

 これだけはしたくなかったけど、怒られるのは嫌にゃ。

 

「んぶっ」

 

 人は口と鼻を塞げば呼吸が出来ない、当然の理なのにゃ。

 

「ん、んぐーっ、ん、ん゛っ」

 

 あとは起きたところで鼻を摘んだ手と口を塞いだ手をどけるだけ。

 

「ぷはっ」

 

「おはようにゃ。リシア、ルイーダさんに呼ばれたからそろそろ起きないと拙いにゃよ?」

 

 そして、言うことだけ言ったら退散が正解にゃ。

 

「リシアは先に行ってお仕事始めてるにゃ」

 

 お掃除にお使い、お料理の仕込みのお手伝い、朝だからってやらなきゃいけないことは多いのにゃ。部屋を出て、階段を下り、あちら側からは解らない隠し扉を開けてくぐると、ルイーダさんはもうカウンターに立っていたのにゃ。

 

(リシアを越えた早起きさんにゃけど、夜は遅くまで起きてるみたいだし、いったいいつ寝てるのにゃ?)

 

 誰に聞いても解らないこの酒場の永遠の謎にゃね、それはさておき。

 

「ルイーダさん、おはようございますにゃ」

 

「おはよう。早速だけど、そこで酔いつぶれてるお客さんを運ぶの手伝って貰えるかしら?」

 

「はいにゃ」

 

 ルイーダさんに言われて、リシアはテーブルに突っ伏した武闘家さんの身体を起こしたにゃ。

 

「これでいいにゃ?」

 

「ええ、それから左側の肩を頼める? こっちは右から支えるから」

 

「わかりましたにゃ」

 

 ルイーダさんとの二人がかりになったのは、武闘家さんが男の人で大きかったからにゃけど。

 

「……泣いてるにゃ?」

 

「ええ、この人ヒャッキって言うんだけど、ちょっと色々あったのよ。酒場で飲んでる分にはお客さんだから、プライベートなことはあなたにも話せないけど」

 

「ふーにゅ」

 

 しかし、この人がヒャッキさんだとしたら同室のあの子、それこそ寝てる場合じゃなかったと思うんにゃけど。

 

「ええと、そうね……とりあえずはここでいいわ。それじゃ、戻りましょ」

 

「はいにゃ」

 

 ヒャッキさんを商談用の個室に置くと、リシアはルイーダさんの後に続くにゃ。

 

「そうそう、戻ったらテーブルの上を拭いて貰えるかしら?」

 

 そして、お願いされる新しいお仕事。

 

「わかりましたにゃ」

 

 全ては美味しいご飯のため、リシアの一日はまだ始まったばかりなのにゃ。

 

 




と言う訳で、洞窟攻略の途中ですが、この世界における主人公の身体の持ち主の恋人さん視点のお話でした。

元バニーさんの活躍で遊び人の地位が向上し、増えた遊び人や以前からの遊び人が、元バニーさんの抜けた穴を埋めてるんですよと言う裏話。

アリアハンの今としてシャルロットがどんな具合かとか、メダルおじさんってまだ井戸ごと主人公に爆破されていないのかとかも描写しようかと思いましたが、流石にそこまで書ききれなかったようです。

元バニーさんの転職が知られてるのは、主人公が張った交易網が情報を運んできた為。

バラモスが倒されたことに関しては勇者一行が凱旋してるので、みんな知ってる風味。

次回、第二十一話「奥へ更に奥へ」

こんどこそ、洞窟攻略の続きの予定です。
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