強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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EX3・番外編S&K「(スミレ視点/カナメ視点)」

●スミレさんとスー様

 

「スー様、お待たせ。そろそろご飯にする?」

 

 あたしちゃんが尋ねれば、こっちに背を向けていた旦那さんはああと言いつつ手を止めると立ち上がってこちらへ来る。

 

(こんな日が来るとか)

 

 あたしちゃんにも予想外だった。やまたのおろちに生きたまま喰い殺されたあたしちゃんやみんなに新しい人生をくれた人。自棄に自己評価が低くて、そのせいか、鈍いというよりも頑なに自分が好意を向けられていると思わないフシがあるみんなの恩人は、あの日、元の世界に還っていった。

 

(まぁ、責任は取れないって口が酸っぱくする程言ってたし、そうなることはわかってたんだけど)

 

 だからこそ職業訓練所で仕込まれた遊び人としてのキャラには本当に感謝している。遊びやおふざけに偽装して本当の気持ちを言ったり、どさくさに紛れて密着出来たりしたのだから。

 

(ふざけて、からかって、あたしちゃん的にはそれでじゅうぶん……って思ってたのにな)

 

 思慕は遊び人の仮面の裏に押し込んで、いつものように見送る。例えそれが今生の別れでも、別行動の為旅立って行くスー様をおちょくり半分に見送って、後は何事もなかったかのようにお気楽にいつも通りの日々を過ごす、そんなつもりだったのに。

 

「あーあ」

 

 スー様の姿が消えてから、大泣きした。みんなに慰められた。あたしちゃんとしたことがとんだ黒歴史をを作ってしまった。おのれ、スー様。

 

「スミレ?」

 

「あ」

 

 いつの間にか感傷に浸ってご飯を準備する手が止まっていたらしい。いちど ならず、にど までも。

 

「しまった、スー様のご飯に一服漏らないと」

 

「おい」

 

「んー、まいった、まいった。死んでた分はノーカンだとしても、あたしちゃんもそれなりにお年頃。クシナタ隊のみんなに会う時にも、赤ちゃん出来たって話を良く聞くし出来ればお母さんがあたしちゃんを産んだ歳にはあたしちゃんも母親になっていたいなとおもったのです」

 

 

 やっぱり、このキャラはいい。昔の、何も知らない娘だった頃のあたしちゃんだったら、こんなこと口が裂けても言えなかっただろう。

 

「なっ、ちょ、おま」

 

「ふふん、褒めてもいいよ?」

 

 と言うか、素面で言うのも恥ずかしいのであたしちゃんもおふざけをいれて誤魔化さざるを得ないのだが。自分に配布されたスー様に金のネックレスをかけつつ即座に押し倒した猛者が隊には一人居たけど、流石にあたしちゃんもあれは真似出来ない。と言うか、話を聞いた隊の子何人か、うわぁって顔してたし。

 

「まぁ、隊の中ではおめでた第一号だったりするけど」

 

「……お前は誰に説明してるんだ?」

 

 気づくと、復活したスー様があたしちゃんにジト目を送っていた。

 

「いやん、てれちゃう」

 

「はぁ」

 

 また巫山戯たら嘆息された、解せぬ。けど、これで良いのかも知れない、あたしちゃんと旦那様の距離感は。

 

「まだお昼なので、夜になったらがーたーべると装着しておそいかかるんですけどね?」

 

「だから、誰に……って、待て! がーたーべると?!」

 

「スー様は最終形態になったあたしちゃんを見て恐怖すべし、もしくはムラムラすべし」

 

「最終形態って何だ?! つーか、色々待てぇ?!」

 

 うーむ、今日のスー様は良く叫ぶなぁ。ちなみにがーたーべるとってのは大嘘だ。見た目だけ似たものをこっそり夜なべして作りはしたけれど。いかにもがーたーべるとなモノを身につけたあたしちゃんでスー様をドキドキさせちゃおうというあたしちゃんのサプライズでもある。

 

「そもそもがーたーべるとは知る限り全て処分し……ん?」

 

 そして、取り乱しつつも喚いていた旦那様が急に振り返り。

 

「御免下さい」

 

 玄関の方から声がしたのはその直後。

 

「今の声は、トロワか?」

 

「あたしちゃんにもそう聞こえた。何の用かな?」

 

 顔を見合わせたあたしちゃんとスー様はお昼ご飯を一時中止し、とりあえず玄関へ向かうのだった。

 

***************************************

●カナメさん、来客です

 

「そう、アレフガルドに行けるようになったのね」

 

 来客を前に表情を取り繕いつつもあたしは内心でかなり驚いていた。独力で世界を繋ぐなどあたしにはとても考えられない。やろうと思って出来るモノでもない。だが、目の前にそれを可能にした姉弟が居る。

 

「凄いですね、お姉様ぁ」

 

「……はぁ」

 

 かって覆面とローブを身につけていたという共通点であればあたしの腕に抱きついてる娘も同様の筈なのだけれど、やはり個人差はあるのだろう。この娘の姉も趣向の方は色々問題があったが、才能面では突出し、あの魔王バラモスの軍師やイシス侵攻軍の総司令官まで任されていた訳だし。

 

「ともあれ、話はわかったわ。あたしの装備なら遠慮なく持っていって。エピニア、あなたのも良いわね、どうせ当分は着られないでしょうし」

 

「……着られない? どう」

 

 おそらく、どういう事だとでも言おうとしたのは、訝しげな顔のおそらくトロワさんの弟。

 

「簡単な事よ。この娘、妊娠してるの」

 

「「な」」

 

 姉弟の声がハモるが、気持ちはわかる。

 

「あたしとしても複雑なんだけど……」

 

 事の起こりはずいぶん前にまで遡る。スー様がこの世界を去り、複製されたスー様が配布された日。あたしは真っ先にあたしを慕うこの子(エピニア)の所へ向かった。思ったのだ。

 

「あたしの複製をくれ」

 

 と、神竜に願うんじゃないかと。

 

「その予感は的中。何とか止めさせたんだけど、この娘、だったらあたしと暮らしたいと言い始めて……」

 

 あたしは条件を出した、エピニアが断るであろうと思う条件を。

 

「今思うと、甘かったのね。この娘は断ることなく条件を呑んだ。夫の二人目の妻になるなら考えても良いって条件を」

 

 そして、妻としての役割もきっちり果たした結果が、これだ。

 

「まさか、この娘に先を越されるとは思ってなかったわ」

 

「すまん」

 

 話を聞く限りトロワさんは複製のスー様とくっついては居ないようだから、ひょっとしたら、スー様と魔物との間に出来たと言う意味で初めての子供なのかも知れない。隣でしょげてる旦那様には今晩辺りフォローするとして。

 

「……話を戻すわね。神竜に挑むなら見たところトロワさんと同じ賢者を目指して――」

 

 あたしは思いつく限りアドバイスを口にし始めた。

 




と言う訳で、今回はスミレさん達の新婚生活回でした。

カナメさんの方はごめんなさい。
エピちゃんが黙っていないだろうなと思ったら、結果的にちょっと微妙な感じになってしまいました。どうしてこうなったのやら。

ちなみに、隊でのおめでた一号さんは、名前も決まってない元魔法使いのお姉さん(せくしーぎゃる)です。アッサラームで主人公にきんのネックレスをかけてクシナタさんに説教されたのと同一人物でもあったり。

さて、次は誰の近況話にしたものか。思いつかなかったら、時間を一気にジャンプして、トロワ編の神竜に願いを叶えて貰う所からはじめるつもりです。


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