「よ、ようやくここまで辿り着きましたね」
修復の跡は消えないが、それでも元の形を取り戻した建物が建ち並ぶ村を見下ろしてあたしはすぐ隣にいるだんな様に声をかけた。
「そうだな。まぁ、資材はまだまだ必要になるとは思うが……これなら、テドンの村も復興したと言って過言はなかろう」
あたしの言葉に頷きつつ、だんな様は後背の崖から切り出した石材に手を置き、軽く押す。
「す、凄い……あ」
思わず口から漏れた言葉が、過去の自分と重なる。確かあれは、今のだんな様とは同じで違う、複製元だったスーザン様と最初にあった時のこと。
(ミイラ男を素手の一撃で倒したのを見て――)
本当に驚いた。そして、今でも時々驚かされる。最初に石材を呪文で強化したとは言え素手で切り出した時は思わず
(堅い石の壁をあんな風にしてしまえる手。だけど、あたしに触れる時は優しくて……下に丸太を敷くとは言え、大きな石材を一人で押して運んでしまえる程力のある方なのに)
以前、丸太に足を取られて躓いたあたしを支えてくれた時も痛みなど感じなかった。その時は、今は大事な時期なんだから気をつけろと怒られもして、暫く同行禁止を言いつけられてしまったけれど、あれはあたしが悪いのだから仕方ない。赤ちゃんが出来たことを支えて貰った直後まで黙っていたのだから。
「あ、あの子も随分大きくなりましたし――」
「え゛」
そろそろもう一人、と耳元で囁くと、だんな様の顔がひきつった。だんな様が平時とっている態度は、内心を隠す仮面であることを知ったのは、神竜様のお力で、今のだんな様と出会い、夫婦となった後のこと。
(素のだんな様でもあたしは構わないんですけど……)
常に自分を隠して振る舞っていたからなのか、もう一つ理由が出来てしまったこともあるのか、仮面を外すのは抵抗があるようで、素の表情が見られるのは、こうして不意打ちした時だけだ。
「し、しかし……本当によそ者の俺で良いのだろうか? 村長などという大任を」
「だ、大丈夫ですよ、だんな様でしたら。だ、だんな様が凄いこと、あたし……沢山知ってますし」
「っ、そう言ってくれるのはありがたい、ありがたいが」
だんな様は複雑そうな表情で言う。自分は複製であって、大したことはしていない、と。
「そ、そんなことありません! こうして大きな石を切り出したり、む、村のみんなではとても出来ないことをして下さってるじゃありませんか!」
攻撃呪文で、交易や物資運搬の為の道を開くのに邪魔になる大岩や小さな山を吹き飛ばしたりもして下さった。あたしも協力したので、働きぶりは一番よく知っている。
「っ、すまんな……気を遣わせてしまったか。ただ、な。俺の中では村長というと、こう、もう一つ、老人というイメージがあるのだ。いや、一応老人のフリが出来ない訳でもない。むしろ得意だったというか、散々使い回してはいたのだが、変装して村長やるのも何か違うような……」
「だんな様?」
「あ、いや、何でもない」
時々、こうして変なところであたふたもされるけれど、そんなところをひっくるめてあたしはだんな様が大好きで。
「ま、まぁ何にせよ、この石材をまずは下まで運ばんとな」
「は、はい」
何処か誤魔化された気もするけれど、構わず、あたしは頷き、箒に跨る。
「で、では……あたしは一足早く下に降りて村の人に石材のこと伝えてきますね?」
伝言しておけば、石材が辿り着いてから連絡するよりも早く、加工の人員が揃えられるし、準備も出来る。
「ああ、頼む」
「い、行って参ります」
だんな様に挨拶し、あたしを乗せた箒は空へと。
(風が気持ちいい。あの子がもう少し大きくなったら、教えてみましょうか……箒での飛び方)
男の子だから嫌がるかも知れない。だけど、飛び方を覚えた経緯はともかく、これを誰にも伝えないのは勿体ないような気がして、そんなことを考えつつあたしは村に向かって箒を飛ばすのだった。
お久しぶりです。そして短くて済みませぬ。
今回はエリザさん編と言うことで、テドンで複製さんと復興に尽力してる所を書いてみました。
女戦士さん編も書こうかと思いましたが、年齢制限必要そうになるので自主規制。