強くて挑戦者   作:闇谷 紅

24 / 248
第二十一話「奥へ更に奥へ」

 

「すまん、待たせた。前方の敵は排除した」

 

 前にいたトロルの数からすれば殲滅して戻ってくるまでにかかった所要時間は許容範囲だと思うが、敢えて頭を下げる。これ以上時間を取られるのは避けたかった、勢いで会話の主導権を獲りたかったのだ。変態娘のことにツッコまれて説明するのも面倒だし。

 

「このまま一気に進むつもりだが……ムール、水や魔物は?」

 

「えっ? あー、大丈夫。今のところ水音もしないし、足音もないかなぁ。まぁ、オイラで知覚できる範囲ではだけどね?」

 

「そうか、それは重畳」

 

 今のところ後方にも問題はないらしい。だからといってゆっくりする気はないが。

 

「ではゆくぞ。今は問題が無くとも進んだ先で時間を取られる状況が待っている事もある」

 

 ここまでは順調だが、ムール君の知らない落盤が起きていて道が塞がれてるだとかはあっても不思議じゃない。

 

「と、所でスー様、そちらの」

 

「行くぞ?」

 

「あっ、はい」

 

 だから口に布突っ込まれたままの変態娘については結局突っ込まれたものの視線と声で握りつぶした。

 

(トロワはここまで散々変態っぷりを見せてたんだから、流石に看過出来なくなってお仕置きしたとか、察してくれても良いと思うんだけど)

 

 それを要求するのは甘えだろうか。

 

「さて、この先だがそれなりの数の魔物を倒した。おそらく全て死んでいるとは思うが、警戒は怠らんようにな」

 

 割と凄惨な殺戮現場にもなってはいるが、最初にトロルの死体を作った場所を通過しているのだから今更だと思う。

 

「ほう、それなりの数と。ならば死体を避けねば通れぬと言うことは?」

 

「いや、それは大丈夫だ。幸い戦場が開けた場所だったからな」

 

 今思えば、遭遇があの場所になって助かったとも思うべきかもしれない。

 

(通路であれと戦ってたら、詰まってただろうしなぁ)

 

 トロルからすれば仲間の死体が邪魔で近寄れず、こっちからすれば死体が邪魔で進めず。死体と天井の間を上手く使えば、呪文やブーメランで更に奥の褐色巨人を攻撃出来たかも知れないが、それをやってしまうと死体が増えて更に通路が詰まってしまう事になっただろう。

 

「やはり、あのでかい図体と狭い場所で戦うのは拙いな。ただ戦うだけならそうでもないのだが」

 

 頭も良くなさそうだし、身動きがとれない程狭い場所に誘い込めば、一方的に攻撃することだって可能だとは思う。レベル上げならそれでも良い。だが、時間制限有りで先に進まないといけない今、敵の巨体は邪魔でしかなかった。

 

(通路で出くわしたら最悪、また転がすしかないかなぁ? ……ん、待てよ)

 

 相手を強制的に本拠地へ送り返すバシルーラの呪文や光の中に消し去るニフラムの呪文を使ったらどうなるだろうか。

 

(とりあえず、ここがあいつらの住処だとするならバシルーラの方はちょっと微妙かもなぁ天井に頭をぶつけるオチで終わりそうな気もするし。となると、期待したいのはニフラムの呪文の方だけど)

 

 当然ながら、原作における魔物の呪文耐性なんて覚えていない。

 

(と、言うか……そもそもニフラムって消し去れるの生きてる魔物限定なのかな?)

 

 動く腐乱死体が消せるなら、動かない死体だって消せても驚かない。

 

「……試してみるべき事が増えたな」

 

 うまく行けば、精神力と引き替えだとしても死体の問題が解決して進みやすくなる。

 

「スー様、どうしたぴょん?」

 

「いや、ニフラムの呪文で死体を光の中に消し去れたらあんな作業をしなくても良かったんじゃないかとつい今し方思い至ってな」

 

 カナメさんに問われた俺は、時間を見つけて試してみようと思っていると明かし。

 

「うーん、賢者でも僧侶でもないから何とも言えないぴょんね。スミレがここにいれば答えてくれたと思うぴょんけど」

 

「いや、流石にそれはな……」

 

 いくら さんこう に なった と しても、ひきかえ に へんたいむすめ の やらかしたこと で からかわれつづける のは おことわり ですよ。

 

(オッサン達に見られないところでこっそり試すしかないかぁ)

 

 蘇生させたムール少年には今更だが、同行するオッサンには俺が僧侶と魔法使いの呪文を使えることは教えていないし、見せても居ない。もし、シャルロット達とこのオッサンが再び出会うことになって、その時俺が呪文を使っていたなどと語られては困るからだ。

 

(あのオッサンはシャルロットも面識がある上、会った時俺も一緒にいた訳で……)

 

 俺がシャルロットだったら、あの時自分と一緒にいた盗賊を見ませんでしたかぐらいは言うと思う。俺みたいに連絡要員を貼り付けて居る訳じゃないのだから。

 

(クシナタさん達がついていれば間違いは無いだろうし、俺は自分のやれることをまずやらなくちゃな)

 

 この洞窟の攻略、そしてさいごのかぎの回収と神竜に挑むメンバーの育成。

 

「ぬっ」

 

「これは」

 

 考える内に、さっきの戦場にさしかかり、散乱する骸に同行者が声を上げるも、それはまぁ仕方ない。

 

(派手にやったのは事実だし。お陰で前方に敵の気配が全く無いんだけどね)

 

 この調子なら、ここから鍵のある場所までは魔物との遭遇回数ゼロでいける可能性もある。

 

(ま、油断は禁物だろうけどね)

 

 洞窟を奥へ、更に奥へ。俺は進む。

 

 




なかなか進まない話、それでもようやく一個間の鍵とご対面か?

次回、第二十二話「かくされたもの」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。