宿題していたら空からエルフ耳のお姉さんが降ってくる。ドキッとしたけど、人妻であると発覚、主人公の長男、はーとぶれいく。目撃した姉の誤解により家族会議がほぼ確定だドン。
「それじゃ、ただの誤解で――」
危なかった。本当に危なかった。父さんの従者だと聞いていたが、トロワさんは本当に有能だった。絶望に動けない俺より早く復活し、部屋を出ると階段を下りて行く足跡を追いかけてくれた。
(うん、何やってるんだ俺と思わなくはないけど……)
こんな突発自体に対処しろとか、要求のハードルが高すぎると思う。
(逆に何であんなに素早く動けるんだって……止そう。聞きでもした日には藪から蛇が出かねない)
そもそも今はそんなことを考えている場合じゃない。誤解を解こうと動いてくれたトロワさんに感謝すべき場面の筈で。
「はい、私には夫も子供も居りますし……その、子供を産んで間もないからこうなってしまっている訳でもありますが」
「あ、あはは……あたしったら」
ただ、二人の会話に割って入るのも邪魔にしかならないと思い、俺はまだ口を開かずにいる。姉のルシアはちょっと見ていて気の毒になりそうな程顔が真っ赤だった。流石にこの状況を弟に見られているとは思いたくないだろうなぁと言う気持ちも今だ口を噤んでいる理由の一つではある訳だが。
「それよりも、実はご両親に相談したいことがございまして、こちらのお宅にお邪魔したのです」
「ご両親? 父と母のお知り合いですか?」
「ええ、トロワが来たとお伝えして頂ければ、私が誰かはおわかりになるかと」
オウム返しして問う姉に頷きを返しつつ伝言を頼むトロワさんはマジ有能。
(すご、これじゃルシアの立場なら父さん達を呼びに行かざるをえない)
結果的に俺に見られていたという黒歴史を負わずに済む。
「あ、はい。ちょ、少々お待ち下さいね。父さーん! 母さーん!」
俺の予想違わず、姉は慌てた様子で父さん達を呼びに行き。
「……あー、えっと、ありがとうございました。色々と」
もう家族会議は確定だと思っていた俺は、つっかえつっかえだったが、心の底から救いの主に感謝した。
「いえ、元はと言えば私が座標をミスしたのが原因ですから。申し訳ありませんでした」
にもかかわらず、謝ってくれるのだから俺としては恐縮するしかなく。
「あ、いえ……」
しどろもどろになりつつも、心の中で嘆息した。結局何も出来なかったのだ。
(元アークマージってことは攻撃呪文とかも使えるんだろうし、アークマージってゾーマの城に出たモンスターだもんな)
あの世界の魔族で言うところのエリート中のエリートって事になる。
(スタイル抜群で戦闘力があって、しかも有能……くっ)
ここまで完璧だとトロワさんの旦那さんが羨ま妬ましくもある。
(いや、これだけの人の夫なんだから、輪をかけて凄い人なんだろうけど。んー、母さん達と親しくしてるなら、勇者様ご一行の一人とか?)
こっちの世界でバカップル継続中の父はまずあり得ないとして、母のパーティーメンバーに男性は一人。
(ん? けど、その人って魔法使いのサラさんって人と一緒になったんじゃなかったっけ?)
母の糖分過剰思い出話という拷問に晒された記憶の中からかろうじて候補を拾い上げてみるが、明らかな矛盾があり。
(うーん、相手が人間ってのが間違ってたとか? 大魔王は母さんが倒してるから、違うだろうし、同僚のアークマージ辺りなのかなぁ?)
とりあえず、バラモスブロスとかビジュアル的にアレなモンスターは考えたくない。
(自分勝手なのは承知だけどさ)
これだけの人を妻に持つのだから容姿も優れた相手であって欲しいというのは俺の我が儘だ。ビジュアルで劣る相手がトロワさんの夫だと、敗北感がハンパないといったとても人には言えない類の話でもあるのだ。
「あの」
「え」
「あっ、あ、ああ、すみません……お、俺ったら考え事を」
だからと言えばいい訳になる。恩人が声をかけていた事に相手側の感覚からすればおそらく「ようやく」気づいた俺は自分の失礼さに狼狽しつつも慌てて謝罪し。
「いえ……お気になさらず。慣れておりますから」
「へっ?」
きょとんとする俺にトロワさんはこっそり話してくれた。夫にも似たような癖があると。
(うーん、何だろ……まだ見ぬこの人の旦那さん像が悪い方向に壊れたと言うか……)
本当にどういう人なんだろうと興味が湧いたが、同時に第六感が警鐘を鳴らす。
(あ、うん。だよな……パンドラの箱って言うか実情を知って後悔することってあるものだし)
検索してはいけないキーワードとかってトラウマ製造器だと思う。
(こういう第六感は馬鹿にしちゃいけないからなぁ)
父がよく言っていた危険は予期せぬしかも身近な所に潜んでいるのだと。
「お、お待たせしました。父と母が待っています。どうぞこのまま下に――」
結局問いただすことも出来ず、姉が戻ってきてしまったのは、良かったのか悪かったのか。
「ありがとうございます、では――」
礼を言い、姉の後にトロワさんが続く。俺も気にはなっていた、父と母にトロワさんが会いに来た理由。
(さっき、知らない方が良いこともあるって言っておいてなんだけど)
世界を越えてまで母さん達を尋ねてくるとなると、寄ったついでにご挨拶とかそう言うお気楽な線は考え辛い。
「本当にトロワさんだ。えっと、お久しぶりです。ミリー達は元気ですか?」
「トロワか……久しいな」
後に続いて食堂に足を運ぶと、割と軽い調子で確か親友の名を口にする母とは違い、見たこともないぐらい真剣な顔をした父が一呼吸置いて何があったと問う。
「実はそのミリー様も関わっていることなのですが……是非ともお力をお貸し頂きたいことがあり、こうしてマイ・ロードの元にまかり越した次第なのです」
空気は重く、いきなり床に片膝をついたトロワさんは、言葉を絞り出すなりちらりと俺の顔を見る。
「へっ、俺?」
「息子がどうかしたのか?」
「それが――」
意味もわからずあっけにとられる俺を前に尋ねた父に頷いたトロワさんが取り出したのは一枚の人物画。
「な」
描かれた金髪の少女に俺の目は奪われた。
無性にあのガンダム種運命のOPを口ずさみたくなる流れ。
うーむ、トロワのお話、全部書ききれなかったなぁ。
まぁ、多忙時の現実逃避に僅かな時間を見つけた結果ではやむを得ないのか。
次回、IF・C→A4「私は君の存在に心奪われ(以下略)抱きしめたいなガ○ダム!(Chalotteルート・???視点)」
あ、サブタイにどこかのMS入ってますが、内容には全く関係ないお話の予定です。