強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第二十五話「名誉挽回」

 

「えーと、お待たせ」

 

 まるでてるてる坊主のように首から下をくるんだマントに隠すムール君を前に俺が出来たリアクションは、ただ短く「ああ」とだけ言い頷くことだけだった。

 

(ここで謝ったら不自然だし、仕方ない)

 

 やらかしたポカはここからの行動で埋め合わせてみせる。

 

「では出発するか」

 

 寄るべき場所は、ムール少年が鍵をとってきた場所のみ、だからここから先は分岐まで戻ったらただ村を目指せばいい。

 

(油断は禁物だけど、この先にあの褐色巨人が住処に使っていたような開けた場所は殆どないし)

 

 進むルートは、腐乱死体やら骨の剣士が出没すると見られる地下墓地に繋がっているとは位置関係と構造上考えられない道だ。

 

(今のところ他者の気配を感じないってとこも、魔物は出そうにないって裏付けになってる)

 

 と、不安要素もほぼ無く。

 

(けつい した はし から うめあわせ の できそうな きかい が しょうめつしてる のは きのせい ですか?)

 

 村の封印にしても人前で俺が解錠呪文を使う訳にはいかず、おそらくクシナタ隊のお姉さんの出番になる。

 

(口笛で魔物は呼べるけど、マッチポンプとかそれをやるのは人としてやっちゃいけないことだし)

 

 とりあえず、やる事があるとすれば、一つだ。

 

「ここまで来れば良かろう、通してくれ」

 

「スー様?」

 

「あの忌まわしい場所を封印せねばと思ってな……よし」

 

 訝しむカナメさん達の間を通り抜けつつ事情を説明すると、俺が装備したのは鎖分銅。

 

「すまん……服のフォローを忘れていた」

 

「えっ」

 

 すれ違い態、ムール君に小声で謝罪すると、地を蹴り。

 

「でやあっ」

 

 すくい上げるような腕の振りに上を目指した分銅が洞窟の天井を打ち砕く。

 

(よしっ)

 

 手応えはあった。降り注ぐ土や岩が忌まわしきあの場所の入り口を埋めて行き。

 

(……眩しいな)

 

 ぽっかり口を開けた天井からは、下された正義を祝福するかのように陽光が差し込む。

 

「ふっ、これでいい……」

 

「えっ、え、えっ、え?」

 

 もう、あの絵や像が人目にさらされることはないだろう。口をパクパクさせて居たムール少年が俺と穴の開いた天井を交互に見て「え」を連呼しているが、俺としても流石に地上まで貫通させるつもりは無かったので無理もない。

 

「ふむ、少しやりすぎたか?」

 

「えーと、やりすぎたかって言うかさ。……あの穴、洞窟の構造からすると登れば村の外れに出る気がしてさ」

 

「は?」

 

 くび を かしげて たずねてみたら とびだしてきた のは とんでもない じじつ だったでござる。

 

「しぜん の どうくつ を りようしてるから ここ、かなり だこう してるんだよ」

 

「……すまん」

 

 棒読みで遠い目をするムール君に、少し迷ってから俺は頭を下げた。こちらとしても天井ぶち抜いたらショートカット作っちゃったは想定外である。

 

「どうする? 俺達が通った後にもう一度崩落させて塞ぐか?」

 

 偶然開いた穴に鉄格子は存在しない。よって、すぐに出来る措置となると復旧を考えず壊して塞いでしまうと言うモノになる。

 

「……ちょっと、相談しても良いかな?」

 

「無論だ」

 

 やれることをやろうとした結果、やらかしてしまった俺には否と言えるはずもなく、言う気もなかった。

 

(と いうか、どうしてこうなった)

 

 ただ、卑猥なモノを埋めてしまおうとしただけだというのに、これも世界の悪意か。

 

「……まぁ、そう言うことなのだろうな」

 

 ポツリと呟くと、俺は武器をほのおのブーメランに持ち替え、開けた穴に投げる。

 

「お゛ば」

 

 両断されて落ちてきたのは、一体の腐乱死体。

 

「……まったく、後ろから来ないと思っていれば、これか」

 

 穴が開いて格好を付けてる時、感じたのだ魔物の気配を。

 

「あちらからすれば、崩落の音に気づいて寄ってきたところで俺に倒されたのだろうが」

 

 状況は少々拙い。

 

「ここで腐った死体が現れるのだからな」

 

 おそらく、村は地下墓地から溢れだした魔物が闊歩してる不死者の村と化していることだろう。

 

(予定より前倒しで村にはたどり着けそうだけど、大掃除は確定だよね、これ)

 

 元を断たないと駄目って話になって地下墓地の魔物一掃までがセットになる可能性も出てきた。

 

「お待たせ。とりあえず、ここから行けるならまず村の様、うっ……えっ」

 

 丁度このタイミングで戻ってきたムール君は、腐臭に鼻を覆い、続いて転がる死体に気付き声を上げる。

 

「見ての通りだ、どうやら村はこいつらに占拠されてると見て良さそうだな」

 

 肩をすくめ、ブーメランをボロ布で拭って腰のベルトに差すと、俺は鞄を漁ってフック付きのロープを取り出した。

 

「トロワに伝ご……の必要はない、か」

 

「ん、ん゛んんーっん」

 

 相変わらず猿ぐつわをしたままだが、変態娘の呪文に頼らなければ良いだけの話だ。

 

「俺はこれから上に登って、周辺を確保する。ついてくるのは構わんが、足は引っ張るなよ?」

 

「んっ、んーんーんっ」

 

「ふ」

 

 その返事を了解ととった俺はロープの先端にあるフックを天井の穴目掛けて投げ。

 

「よし」

 

 フックが引っかかった事を確認すると、何度かロープを引いて安全確認をしてから洞窟の壁面を登り始めた。

 

 




想定外のショートカットが発生。それは不運か幸運か。

倒した魔物を前に、主人公は思う。

「投石とかで倒すべきだった、と」

次回、第二十六話「村には着いたよ」
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