強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第三十話「合流」

「これで、終わりだっ」

 

 結論から先に言うと、最後だけちょっと手間だった。残っていたくさったしたいの大半は見つけるのも倒すのも容易な位置に居たのだが、一体だけ登る手段の見つからない狭い屋根裏部屋に潜んでいたのだ。

 

「何とか終わりはしたが……あ」

 

 たった今、その一体を一撃で仕留めロープで居りようとした俺は吹き抜けから下を見て思わず声を上げた。

 

(あー、そういうことね……これは気づかないわ)

 

 眼下に見える一階の床に散らばっているのは、おそらく簡易な取り外し式階段の残骸。何かのはずみで外れ、吹き抜けを落下、床に激突してバラバラになったと言うことらしい。

 

(椅子の残骸だと思っていたからなぁ)

 

 と言うか、椅子の残骸もあったのだ一階に散らばった木片には。他にも最初から動かない死体が倒れていたので、吹き抜けから椅子の上に落ちた腐乱死体が破壊したものだろうと判断したのが間違いだったらしい。

 

(取り外し式の階段を上ってる最中に階段ごと落ちたとか、そんなところかな)

 

 何故屋根裏まで登ったかは謎だが、壁の穴に挟まったりシャンデリアからぶら下がるフリーダムさを見せたこいつらの行動を真剣に考えても仕方ないと思う。

 

(あの悪霊といい、腐乱死体達といい……どっと疲れたけど、それももう終わりだ)

 

 戻って皆と合流出来れば、魔物自体は大したことないのだ、しかも村の何割かに潜んでいた魔物は俺が排除済み。幾つかの班に分かれて行動すれば村の中はあっさり片が付くし、魔物が居なくなったなら、ムール君が居る以上、鍵の確保も簡単なはずだ。

 

(ただ、地下墓地だけはめんどくさそうだけど、そっちもあんまり魔物がうようよしてるって気はしないんだよね)

 

 村の中にこれだけ魔物化した骸がうろついていたのだ。

 

(今居る場所が村であり、地下墓地が村人用で、かつ他にも墓地が存在することを鑑みるなら、納められていた村人の亡骸の総数が膨大であるとは考えにくい……全てが魔物になっていたとしても――)

 

 村にさまよい出てきた個体と地下の川に流された個体で数は減っていると見ていいだろう。

 

(詳細はオッサンとかムール君に確認をとらないといけないだろうけどね)

 

 予想だけで安易な判断を下して痛い目を見るのはゴメンだ。

 

「ついでだ、このまま下まで降りるか」

 

 本来なら二階まで降りるために屋根裏から吊したロープだったが、長さには余裕がある。

 

「ふっ、とっ」

 

 身体のスペックに助けられ、するするとロープを降り。

 

「ふんっ」

 

 丁度真下にあった骸を踏んづけないよう、最後にロープを揺らし、揺れの勢いを借りて横に飛ぶ。

 

「さて、戻ろうか」

 

 屋根裏に腐乱死体が残っているので、ロープはそのまま残しておくつもりだ。

 

(後始末、しないと拙そうだもんな)

 

 傷んで民家がもう使えないとしても死体をずっと放置は拙い、いろんな意味で。

 

(けど、ファンタジーの世界って大変だなぁ、死者が魔物になるなんて)

 

 個人的には魔物になる可能性があるなら、防ぐために死体は火葬にしろよとも思うけれど、やってないという事は宗教的な理由とかこの世界の人にしか解らないルールがあるんだろう。

 

(遺体を出来る限り損壊させなければ生き返らせることが出来るかもしれないって思ってるとか?)

 

 この世界には蘇生呪文が存在する。誰でも生き返らせることが出来るような万能さはないが、ひょっとしたらに縋ったのが、今の埋葬方法なら、少なくとも俺には非難出来ない。

 

「死体の処置……その辺りも二人に確認、だな」

 

 何にしても、まずは合流だ。

 

(魔物の気配は変態娘自身のモノを除けばゼロだし、あっちに魔物を通した覚えもない)

 

 俺が精神的に疲労したものの、周辺の魔物の一掃には成功している。

 

(そして、人の気配が幾つか……これはクシナタ隊のお姉さん達とかオッサンやムール少年だろうな)

 

 水が追いかけて来なかったとしてもあの洞窟にはトロルが居た。長居は危険と見て上に登ってきていても不思議はない。

 

「あ、マイ・ロード、お帰りなさいませ」

 

「スー様、お帰りなさい」

 

 そして、戻ってみたなら予想通りというか、崩落して出来た入り口の前で共に洞窟を通ってきたメンバーが勢揃いしており。

 

「とりあえず、ここに近い民家や店の中にいた魔物は一掃してきた。そして、そのことで話がある。ムール、少し良いか?」

 

「えっ、オイラ?」

 

「ああ。正確にはこの村のことで話したいことがあるんだが……」

 

「成る程、承知した」

 

 補足しつつちらりとオッサンを見れば、言いたいことは伝わったらしい。

 

「まず、俺が倒してきた腐乱死体……つまり、地下墓地からさまよい出てきた者達の骸、元の死体に戻った者をどうするか、と言うことだ」

 

 地下墓地の死体が魔物になったのだ、そのまま戻せば最悪また魔物になって出てくる可能性がある。

 

「そして、地下墓地に安置されている遺体をどうするかもあわせて聞きたい」

 

 魔物化を避けるなら何らかの処置は必須であり、俺は口を閉じると二人からの返答を待った。

 




次回、第三十一話「話をしよう」

あれは今から1年と七ヶ月ちょっと前だったか……まあいい。

主人公には、お師匠様、ご主人様、スー様、盗賊さん、いくつかの呼び名があるから何て呼べばいいのか……たしか、最初に会った時は――。

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