強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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ミリー「や、やめて下さいシャル」
シャル「ミリー、放してっ! ボクはこれをつけなきゃいけないんだ! せくしーぎゃるにならなきゃお師匠様が、ボクのお師匠様がっ!」
ミリー「だ、駄目です、そんなことをしては――」


 ……なんてことはありませんが、最後にシャルロット出したのいつだったかなぁ?





第三十八話「現実逃避をしたいお年頃なんだよ、察してくれ」

「でやぁっ」

 

 投げた石は狙い違わず腐乱死体の顔面を破壊する。

 

「……予想通りではあるが、多いな」

 

「そう、ですね」

 

 トロワが着替え終えるなり自分から言い出した、一番厄介そうな場所の魔物退治に向かった訳だが、地下墓地に至る道に一番近い場所だけ有って辟易する程魔物の数が多かった。

 

「民家の中で無ければ私の呪文でマイ・ロードのお役に立てると思うのですが」

 

「気にするな」

 

 放置されて傷んだ民家の中で強力な爆発呪文を使う訳にも行かず、屋内の動く腐乱死体退治には結果として俺の投石が主力と言うことになっている。

 

(もういっそニフラムの呪文でも良いかなぁ)

 

 光の中に邪悪なものを消し去るあの呪文は、文字通り消し去ってしまうため死体を片付ける手間が省けるという利点はあるが、葬られていた人達の遺体を消してしまうのと同義というデメリットもある。

 

(俺達にとっては他人でも、ムール君達にとってはご先祖様かも知れないし)

 

 せめて消しても良いか確認すべきだったかと密かに後悔する。

 

(どこか抜けてるんだよなぁ、俺って)

 

 地下墓地に納められた死者が魔物になって居ることはもっと早く、トロルでせき止めた地下の川のところで知ったと言うのに、確認を怠った。

 

(いや、死体に戻すためとは言え投石でヘッドショットしまくってるんだからいまさら、かな。そもそも――)

 

 押しかけでついてきた俺達が居なければ、ここに来たのはオッサンとクシナタ隊でアバカムの呪文が使える魔法使いのお姉さん一人、場合によってはプラスすることの護衛の冒険者が数名という形になったと思う。その場合、今の俺のように死体の状態に関わる余裕なんて無かったはずだ。

 

(動く死体に即死呪文はまず効かないと見ていいだろうし、攻撃しなきゃ魔物は倒せない。出来るだけ綺麗な死体を残して欲しいとか、ただの我が儘か)

 

 村を徘徊する魔物を駆逐しようとしているのは俺とトロワだけでもないのだ。

 

(いけない、いけない。考えすぎて迷走したり考えがひっくり返ったりしてる)

 

 これが下手な考え休むに似たりという奴だろうか。

 

「何にせよ……為すべきは魔物を倒すこと、だな」

 

 口を挟む暇がない程正確迅速に倒せば余計な会話も発生せず、それを目指していれば敵を見つけ倒すことだけを考えていられる。

 

(ある意味現実逃避だけど、良いよね?)

 

 自称次期村長の変態ゴーストによって時間を浪費させられ生じた遅れも取り戻さなくてはいけない。

 

「移動するぞ、トロワ」

 

「はい、マイ・ロード」

 

 告げれば返る答えに頷きで応じ、元民家を出て、気配を頼りに次の建物に足を踏み入れる。

 

「お゛ぉぉぉおぉ」

 

「う゛ぉおお゛ぉ」

 

 咆吼とも呻き声ともつかないものを発しつつよたよたと部屋から出てくるのは、複数の人影。そのどれもが腐臭を伴い。

 

「ふ、早速お出迎えか」

 

 手の中で石を弄びつつ足音を知覚し、奥にある階段を一瞥すると骨の擦れる音を立てつつ降りてくる多腕の骨剣士の足が見えた。

 

「ここも、数が多いな」

 

 視界に入るだけでも敵の数は片手の指の数に至りかけたが、上階からの足音は一人分で留まらない。

 

「あの、マイ・ロード……」

 

 そんな時だった、トロワが俺を呼んだのは。

 

「何だ?」

 

「石を拾っておきました、これを」

 

 振り返り尋ねれば、歩み寄ってきたトロワの両手には言葉通りいくつもの石があり。

 

「そうか、すまんな」

 

「いえ、お役に立てたなら嬉しいです」

 

 俺の謝礼に笑顔を浮かべたのだと思う。覆面の下からの声は嬉しそうで。

 

「では、早速っ」

 

「お゛ぉぉばっ」

 

 左手に貰った石を投げ、一番近くにいた動く腐乱死体を倒す。

 

「次だ」

 

「う゛ぼっ」

 

 こういう時、一ターン複数回行動は本当にチートだと思う。

 

(と言っても、トロワが居なきゃ投げる石が全部倒す前に尽きてたと思うけれど)

 

 こうして戦いで協力してくれると今のトロワになって良かったと思えてくるから現金なものだ。

 

(それでも、ずっとこのままで居てくれたらいいと思ってしまうのは事実だし)

 

 石の供給はありがたかった。

 

「お゛がっ」

 

「お゛ぶっ」

 

 一投で敵を屠れる力と標的までの距離が俺に味方した。

 

「これなら、いけるっ」

 

 動く腐乱死体の攻撃は主に引っ掻きや噛み付きと俺達に近寄らねば不可能。回避が不要なら攻撃に徹すことで手数は増やせる。

 

(そして、骨相手なら武器を使うことを躊躇う必要もないっ)

 

 気配を探る限り、一階にいた動く腐乱死体達はただの屍に戻り。

 

「このまま勢いを借りて二階まで駆け上る」

 

 宣言した時には石を片手に集め、もう一方の手にチェーンクロスの柄を握っていた。

 

「せいっ、でやあっ」

 

 クロスするように振るった鎖分銅で一階の廊下に降り立った骨の剣士と会談を降りつつあった二体の骨剣士を薙ぎ払い。

 

「……この階にはあと三体、か」

 

 気配を頼りに向かうは廊下の先、突き当たりを左に曲がった先の部屋だった。

 

 




今回は難産でした。しっくり来ず、30%程書き直してます。



次回、第三十九話「順調すぎて怖いぐらいよ、けど」


こう言う時ほど落とし穴が口を開けてるものなのよね
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