強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第三十九話「順調すぎて怖いぐらいよ、けど」

「まずは貴様だ!」

 

 部屋に踏み込んだ瞬間、目に飛び込んできたのはぼーっと立ちつくす腐乱死体とよたよた歩く腐乱死体、そして剣の切っ先を下にむけ腕を降ろし佇む六本宇伝の骨剣士。距離は一番あったが、俺が真っ先に石を投げつけたのは、骨の剣士にだった。

 

「お゛ぉあぁお」

 

「もう一つ」

 

「お゛べっ」

 

 最寄りのくさったしたいが近寄ってきたのでトロワから受け取った石で仕留め。

 

「お゛?」

 

「仕上げだっ」

 

「おお゛ぼっ」

 

 ようやくこちらにきづいた最後の一体も一投で倒す。

 

「ふぅ……これでこの家の魔物も片づいたな」

 

 この村へ到着してからまわった数軒と比べると一軒当たりの魔物の数が数倍になっているが、元凶に近ければこれも無理のないことなのだろう。

 

(ただなぁ……他の町や村も原作に比べるとやたら大きかったし、人も多かったけどさ)

 

 それは、今居る村も同様だった。つまり、やたら広く、それに相応しい人口を備えていた過去が、魔物の数という形で俺達の手を煩わす。

 

(人が暮らしてた頃、少なくとも二百人ぐらいはいたんじゃないかな、村人)

 

 今居る二階建ての家も、廊下を進む時壊れた扉の向こうに見えたものと、先程戦闘を終えたこの部屋でダブルサイズのベッドが二つあり、この階には他にも気配がないからスルーした部屋がある。

 

「こう家が広いと盗賊の居ない班は大変だろうが……」

 

 逆にこの身体が盗賊であることもあって、魔物退治はサクサク進んでいる。

 

(トロワがフォローしてくれるから石を拾う手間がかからないし、逆セクハラに時間を奪われることもないし)

 

 変態ホロゴーストの駆除にロスした時間もこの調子なら取り返せるだろう。

 

「この調子なら日が落ちる前に村内は片が付くか」

 

 問題は地下墓地だ。

 

(まだ魔物が中にいた場合、全部倒してもお代わりされちゃう可能性があるからなぁ)

 

 何らかの方法で一旦地下墓地の入り口を塞がなければ、ノルマをこなして合流後ここに戻ってきた時地下墓地から出てきた腐乱死体と骨剣士が新しく入居してるなんてオチになりかねない。

 

(俺に思いつくのは、もう使えそうもない家具を運び出してバリケードを作るぐらいだけど……まともになってるし、こういう時こそトロワに相談してみるのもいいかもな)

 

 魔物退治自体は順調に進んでいるからこそ、出来た余裕で考え。

 

「トロワ。移動するぞ。次はここと北隣の家だ」

 

「はい、マイ・ロード」

 

「それから、今こうして魔物と化した村人の骸を倒している訳だが、発生源となった地下墓地を放置しては元の木阿弥にもなりかねん。俺は使えない家具を持ち出してバリケードを築いてはどうかと考えたが、お前ならどうする?」

 

 移動する旨を告げ、応じたトロワに問う形にしたのは、俺のバリケード案を採用する場合、材料になる使えない家具を外に出るついでに運び出しておけば時間の短縮になる為。

 

(トロワに名案が有ればそれを採用すれば良いだけだし)

 

 今のトロワなら頭を抱えるようなへんてこ案が出てくるとは思えない。

 

「私なら……マイ・ロード、それはマイ・ロードに……マイ・ロードにお力を貸して頂けるという前提で良いですか?」

 

「力を? 俺に出来ることなら構わんが」

 

 若干の好奇心とともに振り返ると、トロワは言う。

 

「罠を、仕掛けます」

 

 と。

 

「……罠?」

 

「はい。マイ・ロードは数多くの呪文を使えるのですよね? でしたらその中から条件にあった呪文を選んでバリケードにする予定の家具に付与、中からくさったしたいなどが出てきた時に反応するよう設定して、自動で死体に戻す機能をバリケードに付け加えようかと」

 

 うわぁい、なんだか とんでもないこと いってるよ、このひと。

 

「ちょっと待て、そんなことが可能なのか?」

 

「理論上は。ただ、私だけだと付与呪文がイオナズンになってしまいますので、発動と同時に地下墓地の入り口が埋まってしまう可能性がありまして……心苦しいのですが、マイ・ロードの力を貸して頂かないことには」

 

「それなら問題ない。が、力を貸してどれ程かかる?」

 

 手放しで凄いと思ってしまったが、何時間も拘束されるなんてことになると話も変わってくる。

 

「時間はそれ程かかりません」

 

「ほう、ならば杞憂だな」

 

 うまく行きすぎて怖いぐらいだが、地下墓地の入り口が封鎖出来るのはありがたい。

 

(魔物のおかわりがなくなるってのは本当にいいなぁ)

 

 力を貸すだけで良いなら、いかようにも貸そうというものである。

 

「ただ……その、服を脱いで頂く必要が……あるのですが」

 

「ほう……えっ」

 

 なにそれ。

 

(おかしい、まともになった筈。トロワはまともになった筈だよね?)

 

 それがここに来て呪文付与のために服を脱げとか。

 

(はっ、まさか……聖水の効果が切れたのか?)

 

 魔物除けとして使った場合だが、聖水には効果時間があった。

 

(トロワをまともになってたのもあれと同じだったとしたら――)

 

 さようなら、きれいなとろわ。おかえり、へんたいむすめ、ってことなのですか。

 

(なにそれ。このトロワなら大丈夫って思え始めた所だったのに……)

 

 おのれ、せかいのあくいめ。もちあげておいて、おとすのか。

 




本日のNGシーン

主人公「なにそれ。このトロワなら大丈夫そうって思えたっぽいのに。もうお終いっぽいぃぃ~」

気が付いたらどこかの駆逐艦化したっぽい。

次回、第四十話「俺とお前で――」

果たしてトロワは効果時間切れで元に戻ってしまったのか、それとも。

あ、オーバー○イはしません、たぶん。
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