強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第四十三話「こういう時こそレミラーマが輝くんじゃね、と私は思った」

 

「さてと、とりあえず入り口の側から順に調べて行くか」

 

 そう言い放ち、実際入り口に近い場所から調べ始めたのには理由がある。

 

(目的の品が見つかってしまえばここには用なし、入り口に家具を運び出した元民家の並ぶあの場所に戻って付与作業となる。つまり、がーたーべるとスルーの可能性はまだ残って居るんだっ!)

 

 往生際が悪いと言いたければ、言え。

 

(せっかくトロワがまともになったんだ。こんなところで、せくしーぎゃらせてたまるかぁぁぁぁッ!)

 

 ようやくゆっくり眠れる夜が来ようとしているのだ。

 

「トロワは左側を頼む。俺は右を探してみる。目的の品が見つかったら言え。こちらもそれらしきモノがあればお前に声をかける」

 

 再び口を開き、指示をしつつ店に残された商品の一つに手を伸ばす。

 

「ふむ、流石に一度目から当たりはないか」

 

 大きさに比べて恐ろしく軽い商品だが、手応えからして宝石の類とは言い難く。

 

「次」

 

 さっさと棚に戻し次の品にとりかかる。

 

「これもハズレ、か。一目で宝石じゃないと分かるのはいいんだが……」

 

 よろず屋だからだろうか、商品の種類は多い。

 

「ところで先に聞いておくが、既存の呪文付与アイテムから剥がした石は使えるか?」

 

 こんな辺境のよろず屋であることを鑑みると魔法の武器や防具が置いてあるかは微妙だが、洞窟の方で見た絵やら像やらを揃えるだけの手腕は持っていたのだ、商品の中に魔法の品が混じっていても驚きはしない。

 

(そもそもあのホロゴーストが守ってた忌まわしきアレだって着けた人間の性格矯正するアイテムだったしなぁ)

 

 普通の衣類や下着は着けただけで性格を変えない。だからこそ出来れば封印なり消滅させたいと思うのだが。

 

「……いえ、既に付与されてしまっていると上書きは難しいです。元のアイテムごとの強化は別ですが、石も取り付けた品で力を発揮するように調整されているでしょうから」

 

 思考が逸れかけたところでトロワから返ってきた答えは、説得力を備えて俺の希望を打ち砕いた。

 

「そうか」

 

 出来るだけ、平静を保ち、落胆が出ないよう呟く。

 

(まぁ、それが可能なら宝石部分を他の武器に填めるだけで簡単に魔法のアイテムが作れちゃうからなぁ)

 

 世の中はそう甘くないと言うことなのだろう。トロワの話からすると、呪文の付与には元の呪文を付与する者が使えるか協力者として必要であり、素材も呪文の使用に耐えうるモノでなくてはいけないとのことだが、それでも条件は緩い。

 

(たぶんトロワの方の才能が異常なんだろうなぁ)

 

 でなければ、この世界はチートな魔法の武器防具で満ちあふれてしまう。

 

「ならば、完成品は不要だな。既に形になった品ならレミラーマの呪文で見つけられるかとも思ったが」

 

「あ、申し訳ありません、マイ・ロード」

 

 自分の発言が俺のアイデアを一つ潰してしまったと思ったか頭を下げてきたトロワに気にするなとだけ声をかけ、俺は店の商品に向き直る。

 

「それに、素材の時点で有用な品と認識されるかも知れないしな」

 

 確か、どこぞの砂漠の町に落ちていたオリハルコンの欠片だか塊だかもレミラーマの呪文に反応したはずなのだ。

 

(逆に言えばあの呪文を改良出来たなら素材捜索呪文とかも出来ないかなぁ)

 

 鉱石の埋まっている場所が解る呪文とかがあれば鉱夫は大助かりだろうし。

 

「ともあれ、念のために唱えるだけ唱えてみるか」

 

 当たれば儲けもの。

 

(それに、呪文に反応したものは「何かあるぞ」って心構えが出来るからな)

 

 もちろん、心構えしようが中身が忌まわしいアレ十二着セットとかだったら、その程度の心構えで平静さを保てるか怪しいが。

 

「そうですね、お願い出来ますでしょうか?」

 

「ああ、レミラーマ」

 

 トロワの要請に応え、俺が呪文を唱えると隣の商品がキラリと光り。

 

「え」

 

「な」

 

 擬音で示すなら、キランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキラン、とでも言うところか。ちなみに回数は数え切れなかったので擬音にしたのは一部である。

 

「と、とりあえず……隣の光った品を見てみるか」

 

 気を取り直し、手を伸ばして包みをとり、広げるとそこにあったのはふさふさの金と茶の縞からなる糸玉。

 

「これは、確かまだらくもいと……だったか」

 

 使用すると相手に絡み付くことで動きを鈍らせ、素早さを下げる呪文、ボミオスの効果になる使い捨てアイテムだった気がする。

 

「糸も使いようによっては道具の素材になりますから、それで反応したのかと」

 

「むぅ」

 

 と言うことは今光ったモノの幾つかは組み合わせると道具になりそうなモノだと言うことか。

 

(紙とか布、木材に鉱物のインゴットなんかもあったら反応してそうだよなぁ)

 

 俺の探してるモノが素材であるから効果が変質したのか、それとも。

 

「謎が増えてしまったな。しかも、この店には何かの素材になりそうな商品が一杯だという事実のおまけ付きだ。次は……ッ、かしこさの……たね?」

 

 なんで きちょうな ひばいひん まで おいてるんですか、この おみせ。

 

(駄目だ、堪えろ。全力で欲しいが窃盗はNOだ)

 

 勇者シャルロットの師としても世間に顔向け出来なくなるようなことは出来ない。

 

「ふっ、俺が盗むのは魔物やダンジョンのお宝とかわいこちゃんのハートだけだぜ」

 

 とかすっとぼけられたらどれだけ良いだろうか。

 

(落ち着け、落ち着け、俺。次の商品チェックに移るんだ)

 

 物欲と良識の狭間で葛藤しつつも平静を装い、目は次の品へ。

 

「これは、何かのブラシか」

 

 光らなかった次の品はただの日用品であり。

 

「これは……種、か? 随分干からびてるが」

 

 次に手にした袋の中身は小さなつぶつぶ。

 

「マイ・ロード? あぁ、それは野菜の種だと思いますよ。随分日持ちする種で似たのを見たことがあります」

 

「そうか、ん?」

 

 首を傾げていると振り向いたトロワが教えてくれ、ふと気づく。

 

「どうされました、マイ・ロード?」

 

「いや、糸玉のあった段の隣が空だったからこの袋を手にしたのだが、たねの隣が種だと思ってな」

 

 ひょっとして、かしこさのたねがあった段の横列は日持ちする種で統一されていたのだろうか。

 

「幾つか光っていたし、この横列、食べると身体強化する貴重品がゴロゴロしてると言うことは……流石にないか」

 

 うん、無いと思いたい。俺の精神安定の為にも。

 

「と、とにかく続けるぞ。想定外の品はあったが、目的の品の発見はまだだからな」

 

 そうだ、こんな大掃除の最中に懐かしい漫画を見つけて読み始めちゃいましたクラスの脱線なんて要らないんだ。

 

(無だ、無我の境地だ。物欲は捨てるんだ)

 

 こんな時、お経を暗記出来てたらなぁ、とか思ってしまう。だが、覚えてないなら別のモノで補うしかない。そう決めて、俺はお隣にあったいのちのきのみを棚へ戻し。

 

(羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹……羊が四、違う! ああ、目をハートにしたマッドオックスが羊の群れに! どうなる、羊さん達? じゃねぇぇぇぇっ!)

 

 胸中で絶叫したのも無理はないと思いたい。本当にどうかしていたんだ。

 




よろず屋でゾクゾク発掘されるお宝、倫理観と物欲の狭間で頭を抱えちゃう主人公。

次回、第四十四話「そして俺は――を手に入れた」

何を手に入れちゃうんでしょうねえ、あ、解っちゃったらすみませぬ。
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