強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第四十七話「物作り系ゲームには気をつけろ」

「さてと、数は揃ったな」

 

 振り返ればバリケードを作るための呪文付与された複数の家具。ただ、バシルーラを込めた方だけは誤作動の可能性を鑑み、作成途中の段階で止めてある。

 

(運んでる最中に家具が起動、アリアハンに飛ばされましたとかは勘弁して欲しいもんなぁ)

 

 ニフラムの方は俺には効かないから大丈夫だが、まだ地下墓地の魔物退治が残ってる状況で俺が抜けるのは拙い。

 

(村長の息子とよろず屋の主人で二体のホロゴーストが居たんだ。あれで終わりって保証はないし)

 

 他の魔物は良いが、あの魔物が使う即死呪文に対処出来るのは反射呪文の使い手である俺とクシナタ隊所属の魔法使いのお姉さんのみ。俺が抜けた上でトロワのようにお姉さんが取り憑かれてしまった場合、状況は完全に詰む。

 

(その前にまずトロワがアリアハンに行きたいと主張するかな)

 

 とりあえず、どちらにしてもロクな結末にはならないだろう、それを避けられるなら、重畳だ。

 

「それで、いよいよこいつを運び込んでバリケード作成と言いたいところだが……」

 

 地下墓地の方から人のモノでない気配を感じた俺は、肩をすくめる。

 

「バリケードの完成を待ってくれない者がいるらしい。トロワ、無理はしなくていい、持てるサイズの家具を持ってついて来られるか?」

 

「はい」

 

「ならば、すまんが荷物持ちを頼む。俺は魔物の方を受け持とう、こいつの動作テストを兼ねて、な」

 

 頷くトロワの前でポンと軽く叩いたのは、最初に呪文付与を終えたダブルサイズのベッド。

 

「こいつを道具として使い、効果が見られるかを実証。ニフラムの効果を発揮して魔物全てを消してくれればそれで良し、何体か残ったとしても俺がそのまま倒してしまえば良いだけの話だ」

 

 複数残ったり呪文効果が効かなかった、そもそも効果を発揮しなかったと言う場合、石一つではとても始末しきれないがそれはそれ。

 

(今まで随分世話になってきたけど、こいつも買い換え時だしなぁ)

 

 最悪の場合、今まで酷使してきたチェーンクロスさんを使えば片はつく。

 

「では、いくぞ。戦いになれば、まずこのベッドを使う。ちゃんと機能しているかどうかのチェックならお前の方が適任だろう。ベッドを見ていろ。魔物の攻撃はお前には通さん」

 

「っ、はい」

 

 トロワが答えるまでに何故か一瞬呆けたような間があった気がしたが、ひょっとして何か別のことでも考えていたのか。

 

(まぁ、その辺りは強く言えないよなぁ。俺も現実逃避はしょっちゅうしてるし)

 

 ぶっちゃけ、せかいのあくい が ごくあくひどう を はたらかなければ、その かいすう も へるんですけどね。

 

(この世界って、俺に厳しいよなぁ)

 

 このハイスペックの身体でなかったら詰んでいただろうが、賢者の呪文を全部使えるレベルカンスト盗賊という反則級の存在だというのにピンチの連続なのだから。

 

(やっぱあれだよね。さっさと地下墓地の入り口封鎖してみんなと合流して、次の日を迎えたら全力でさっさと地下墓地の魔物掃討終わらせちゃおう)

 

 トロワの精神的負担も気になるし、ムール君達には悪いが、この村はある意味呪われていると言っても過言じゃない。

 

(村長の息子とよろず屋主人のアレとかいまわしきものの一件を除いても、死者が魔物になって村を徘徊してる何て異常事態な訳だし)

 

 大魔王が倒されればこの状況も好転するのだろうか。

 

(って、考え事してる場合じゃないだろうに)

 

 これではトロワのことを責められない。

 

(いや、そもそも端からその資格はないよね)

 

 セルフ突っ込みしつつベッドを持ち上げ、肩に担ぐ。

 

(出来れば大盾みたいな持ち方したいとこだけど、盗賊の戦い方じゃないしなぁ)

 

 そもそも、ベッドは装備出来ないし盾じゃない。ベッドを担いだまま俺は気配の元に向け歩き出し。

 

「う゛ぁぁぁぁ」

 

「ぉお゛おぉおおぉぉ」

 

「……やはり、こいつらか」

 

 漂う腐敗臭を伴い姿を見せた動く腐乱死体達を見据え、足を止める。

 

「いくぞ、トロワ。『還れ』」

 

 後方に声をかけ、片膝を地面につき、立ち上がらせたベッドを腐乱死体達に向け、直接起動用のキーワードを口にする。

 

「うぼぁぁぁ」

 

「お゛ぉおぉぉぉおぉ」

 

「成功、か」

 

 生じた光が腐乱死体達を呑み込み、光の彼方へと誘って行く。

 

「確か、ベッドの面に強く接触しても発動するのだったな?」

 

「はい。知能の殆どないくさったしたいがバリケードをどかそうと触れれば今のように光の彼方へと消し去る筈です。念のため、同じ様な処置をした家具で数段重ねにすれば」

 

「前のベッドに押された他の家具も反応する、と……凄まじい仕掛けだな」

 

 作動すれば複数回のニフラムとバシルーラがかかるというのだ。先程の動作テストは面白い程上手くいったが、本番であれほどの成果が出なかったとしても連鎖して起こる他の家具の作用にも耐えなければバリケードを撤去もしくは破壊することは能わないのだ。

 

「元が家具なのでがいこつけんしの剣による斬撃だけが気になりますが」

 

「どうする? あまりやりたくはないが、魔物を呼ぶことは出来る」

 

 遊び人が習得するくちぶえは魔物を呼び寄せる。そもそも遊び人から賢者になったこの身体は会得しているので、出てきた魔物を相手に実験することも可能ではある。

 

(ただなぁ、呼んだら凄い数が一気にとかありそうだし)

 

 くちぶえは相手を選んで呼べる類のモノでもない。延々とくさったしたいしか出てこなかったら、それの処置をどうするかって問題にもなる。

 

「ふむ、考えるのも良いが、時間の浪費は唾棄すべきか。今の魔物で入り口周辺の魔物は最後らしい。今の内に往復して家具を運ぶぞ? 考えるのは運びながらでも問題有るまい?」

 

「そうですね」

 

 ベッドを置いて歩き出せば同意したトロワもついてきて、俺達だけの運搬リレーはこうして始まったのだった。

 

 




バリケードの仕様を書いていて、某大冒険の死神さんが使うトランプなトラップを思い出したり。

トロワさん本気出した上で協力者がいればダイヤの何ちゃらとか再現出来るんじゃないかなぁ、うん。

次回、第四十八話「詰まずに積もう」
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