強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第五十二話「誘い文句って重要だと思うの」

(いや、落ち着け、俺)

 

 脳内に何の理由もなくホモ展開っぽいやりとりが浮かんでしまったが、実際に口にした訳ではないのだ。俺の想像力には後で説教が必要ではあるものの、今は敢えてそれを反面教師にし、誤解を招かない仲間としての誘い文句を考えるべきだろう。

 

(うーん、無難なのは「約束通り仲間になってくれ」とかかな?)

 

 下手に飾る必要はないが、誤解させるのも拙い。

 

「えーと……それじゃ、オイラも約束、守らないとね」

 

 そして、こう かんがえてる あいだ に あいてがわから きりだされるんですね、しってた。

 

「あ、ああ。だが今はまだいい。結局の所、この村の問題を全て解決した訳ではないからな。地下墓地があのままでは立ち去れまい?」

 

 別に今後の予定を今立てても問題は無いのだが、このタイミングで予定を立てるのって凄くフラグっぽい気がするのだ。

 

(世界の悪意に晒されてちょっと神経質になりすぎかも知れないけど)

 

 こういうのは臆病すぎるぐらいが丁度良いはず。

 

「じゃあ後は今晩のことだけど……」

 

「っ、そうだな。忘れていた、すまん」

 

 ムール君に言及されて思い出したが、そもそも今ムール少年の部屋にいるのは泊まれる部屋があるかの確認と、念のためニフラムの呪文を唱える目的あってのことだったのだ。

 

「安全を考えれば男女混合での雑魚寝になるだろうが、嫁入り前の娘が多い俺達では別の意味で問題が生じるだろうからな」

 

「っ、じゃあやっぱり男女で分ける形に?」

 

 何故かムール君が息を呑むも、それが無難だと俺は思う。

 

「ただ一点、今日のことが原因でトロワは一人で眠れそうになくてな。俺の隣で寝る事になりそうなんだが……」

 

 怖い思いをした後なのだ、片隣が俺なのは確定として、もう一方が壁では果たして安心出来るのかという疑問を持つに至ったことを俺は明かす。

 

「えーと……それって、ひょっとして」

 

「おそらく想像通りだ。今は独り身かもしれんが妻の居たあの男に反対隣を任すわけにはいかん」

 

 流石に妻の遺骨が側にあるのに血迷ってあのオッサンがトロワに襲いかかるとは考えにくいが、念のためだ。

 

(それに、ムール少年が手を出してしまう分には責任とってくれるなら俺は構わないし)

 

 むしろ、責任とれない身として他の異性とお付き合いするきっかけを作るのは義務だと思う。

 

(あれだ、意見を却下するなら代案を出すべきみたいな)

 

 この場合はお付き合い出来ないなら他の男を紹介すべし、だろうか。

 

「……じゃあさ、一ついいかな?」

 

「ん? 何だ?」

 

 そんな俺にムール君はどことなく言いづらそうに切り出し。

 

「当人の意見は良いの?」

 

「あ」

 

 指摘された俺は思わず声を上げた。

 

「マイ・ロード……すみません」

 

 そういえば、そば に はべる せんげんしてるから、ずっと いっしょ に いたんでしたね。

 

(俺のあほぉぉぉぉぉっ)

 

 ハーフエルフとか色々衝撃的事実が発覚したからって気遣うべき相手が一緒なのを忘れたとかとんでもねぇ大失態である。

 

(ああ、良かった。さっき変な誘い方しなくて)

 

 同時に、ホモい誘い文句から来る一連の流れが俺の想像に留まっていたことに心底安堵した。

 

「気にするな。しかし、ムールの言うことももっともか。遠慮する必要はない、お前は真ん中と壁際のどちらがいい?」

 

 酷い目に遭ったことを説明したからか、ムール少年も自分の意見はどうなんだとツッコミを入れることもなく。

 

「ま、マイ・ロードとムールくんが良いのでしたら……」

 

 顔を赤くしつつ俯いたトロワが答え、俺達の寝る位置は確定する。

 

「じゃあ、オイラは壁際かぁ」

 

 続いたムール君の呟きによって。

 

(え゛っ、俺トロワとオッサンとのサンドイッチ?!)

 

 なに が どうして、そんな ならび に なった。

 

(寝ぼけたオッサンに奥さんと間違われる展開とかないよね? ないよね?)

 

 無論自分の身は自分で守れるはずだが、目が覚めた時至近にオッサンの寝顔があるという状況に冷静さを保てるかというと自信はなく。

 

(まさかトロワが隣にいることが救いになるなんて……ん?)

 

 複雑な心境になりつつ胸中でしみじみと呟き、ふと気づく。

 

「見張りはどうする?」

 

 そう、そもそもが全員寝てしまっては困るのだ。

 

(良かったぁ。と言うか、元はと言えば俺が早合点して突っ走っただけか)

 

 多分ここで俺が気づかずともムール少年が見張りの順番を尋ねてきて、その時杞憂と知れたことだろう。

 

「んー、じゃあ最初にオイラとトロワさんの二人でして、その後残りの二人で良いんじゃないかなぁ?」

 

「それだと後半トロワの隣が開いてしまうと思うが?」

 

 トロワの希望で挟み込む形にしたのに見張りで抜けてしまっては意味がないと俺が主張すると、ムール君は首を横に振る。

 

「問題ないよ、見張りは身体を起こして座ったり立ったりしてなきゃいけないってルールはないし。寝ちゃったりしなければ横たわったままでも、ね?」

 

「っ、まぁ確かにそうだが……」

 

 俺は気配を察知出来るのだ。だからムール少年の言うことに間違いはないし、傍目寝ているように見えて実は警戒してますという観察してる第三者の裏をかくような見張り方も出来るには出来るが、それはイコールトロワとくっついてる時間の延長でもあった。

 

(せいすいぜめ ちゅうし の おしらせ の あと に おっさん と そいねじあん が やってきたでござる)

 

 世界の悪意は攻め方を変えてきたらしい。それは俺にとって全くありがたくない方針変換だった

 




誰得なんですかね、この展開。

何でもアップ直前に回線切れして書いてた分が無駄になったのが理由らしいですが。

おのれ回線切断ンンンッ!

次回、第五十三話「加齢臭のことをカレー臭だと誤解していたあのころ」
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