強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第六十三話「俺は出来ることをしているだけだ。別に過保護とかそんな訳じゃないんだからな? 効率だ、効率を考えた結果がだな……」

「お゛ぉうぁおぉあ」

 

 明かりのない闇の中、だが意味をなさない声と腐臭でも敵の正体は推測がつく。

 

「くさったしたい、か」

 

 ホロゴーストによって上位の魔物になっていた死体もあったことを鑑みると同様のケースである可能性も考えられるが、それは些細なこと。

 

「ニフラム」

 

 出来ればこれで消えてくれと言う思いと共に俺は呪文を唱える。

 

「お゛ぉおぁぁ」

 

「っ、成功か」

 

 声の主は光の中に消え去り、残されたのは何処まで続くのか解らない暗闇のみ。

 

(ふぅ、これで入り口に死体が転がってるって展開は避けられたかぁ)

 

 家具を持ち込む事を考えるなら足下をとられかねない死体がこんな場所にあるのは好ましくない。かといって地下墓地内に幾つも存在するであろう遺体を納める場所まで運んで行こうとすれば、手間がかかる上、その途中で他の魔物と鉢合わせるリスクまである。

 

(死体を魔物にされた人には悪いけど、死体が出るたびに足を止めさせられて撤去させられるようじゃ、時間がかかりすぎる)

 

 よって、入り口付近では死体の残らない呪文による対処もやむを得ないとしたのだ。

 

「スー様、大丈夫ぴょん?」

 

「カナメか、俺なら問題ない」

 

 後ろから近づいてきている一つの気配が声を発したことで、相手が誰かを理解した俺はこのままここで魔物を足止めすることをカナメさんに伝え、続けて二つ頼み事をする。

 

「解ったぴょん。スー様がバリケードの反対側にいるってトロワに伝えてそのあとその人の作業が終わったら教えればいいぴょんね?」

 

「ああ、あれはあいつにしか出来ないことだからな。なら俺は邪魔をしそうな相手を排除し続けるだけだ」

 

 居場所について嘘とも真実ともとれそうなことについて伝言を頼んだのは、トロワに自分が置いて行かれたのではと言う疑念を抱かせない為。

 

(今回の魔物退治、アフターケアまで上手く完遂出来るかはトロワ次第だからなぁ)

 

 一人魔物の抑えに回ったのだって、別に過保護だからとか夢の中で勝手にせくしーぎゃるらせた負い目があるからとかそんな理由ではない。

 

「しかし、想像は出来ていたが真っ暗だな」

 

 人がいなくなって随分経つ村の地下墓地なら当然と言えば当然だろう、ただ。

 

(と言うことは、探索時に明かりは必須ってことなんだよなぁ)

 

 両手にニフラム効果の家具を持つなら当然だが俺は明かりまで持てず。

 

(近くの味方に頼るしかないか。流石に金貨を点々と落としてレミラーマの呪文で光らせても輝くのは一瞬だし)

 

 だいたい、金貨を撒く手間だってかかる。

 

(魔物が金品に興味を示さない洞窟なら倒した後の魔物を放置して進むことで倒した魔物の持ってる金品を帰路の道しるべにするって使い道もあるかもしれないけれど)

 

 こんな場所で唱えて何があるというのか。

 

「レミラーマ」

 

 ポツリと唱えたのは、気まぐれというかちょっとした悪戯心からだった、だが。

 

「は?」

 

 擬音に直すならキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランキランとでもいったところか。

 

(なんだろ、この でじゃう゛)

 

 遺体を納めるために彫られたのであろう壁の横の溝やそこにはまった棺桶らしきもの、そして壁の脇の地面とあちこちが光って俺の顔はひきつった。

 

(つーか、何で地下墓地にこんなにも反応が……あ、副葬品か)

 

 予想外の展開であったが、理由を考え思いついてみるとあっさりと腑に落ちる。

 

(側の床の部分の反応は魔物になって動き出した死体が落としていったもの、かな)

 

 ともあれ、反応の殆どが直線上に並んでいたお陰で、大まかな構造は見て取れた。

 

(結構奥まで真っ直ぐなんだなぁ)

 

 脇道もあるかも知れないがそれはそれ。

 

(カナメさんには言っておいた方が良いかもな)

 

 盗賊から遊び人に転職したカナメさんはレミラーマの呪文が使える。遊び人特有の悪戯心でレミラーマを使ったら先程と同じ現象が起こりかねない。

 

(ムール君達の前で地下墓地の副葬品をお宝と認識しましたなんて気まずいってレベルじゃないし)

 

 ムール少年(仮)も同呪文は使える可能性があるが、この村の人なので問題はないし、最後の一人であるエピちゃんもカナメさんに伝えておけばカナメさんが伝えてくれると思う。

 

「スー様、終わったみたいぴょんよ」

 

「そうか。丁度良い、話があってな」

 

 伝えたいことがある時に当人だけがやってくる、ナイスタイミングと言うべきか。

 

「……と言う訳だ。カナメならやらかすことはないと思うが」

 

「わかったぴょん。あの子にも中に入る前にちゃんと伝えておくから安心するぴょん」

 

「すまん」

 

 懸念を伝え終えた俺は伝言まで承諾してくれたカナメさんに頭を下げ。

 

「では戻るか。バリケードを撤去を完了させねばな」

 

 来た道を引き返す。

 

(戻って、魔物の接近で中断された作業を再開。入り口に最低でも小型化したニフラム家具を運び込める程度の広さを確保して)

 

 いよいよ本攻略開始だ。

 

「最後の仕上げと行こう」

 

 カナメさんの肩越しに差し込む外の光に目を細めつつ、俺は呟いた。

 

 




地下墓地と副葬品という名のお宝は切っても切れない関係だと思うのです。

墓荒らしはあんまり気分の良いものじゃありませんが、スカイリムだとさんざんやったなぁ。

次回、第六十四話「アレのありがたさはゲームによる」

ビルダーズだと明かりのない夜って本当に真っ暗なんですよね。そのせいか、闇谷は拠点とか部屋へ過剰に明かりを設置する方です。
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