強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第六話「昨日はお楽しみでしたねなんて言う奴が居たら俺はきっと殴ると思う」

「まぁ、同行させて貰うのだから文句も言えんのだが……」

 

 ハプニングと言うべきか、それとも災難と言うべきか迷いどころな出来事も終わり、夕日が沈めば当然夜がやってくる。あてがわれた船室の一つで天井を仰いで呟いてみるも、現実は変わらず。

 

(いや、解っては居るんだ。「せめて男女別の部屋で」何て言ったら、トロワが「側に侍る誓い」を盾に反対してくるだろうことも)

 

 おそらく最終的に「俺+トロワ+クシナタ隊の皆さん」という現状通りの部屋割りになったとも思う。

 

(だからって「じゃあ仕方ないね」と割り切れる様な精神を俺は持ち合わせていないんですよね)

 

 変態街道まっしぐらのトロワをどうすればいいか尋ねた俺の相談にカナメさんが乗ってくれ、あの変態娘に襲われる危険度は確かに下がった。

 

(流石カナメさんだなぁ)

 

 賞賛しつつ左を見ればすぐそこにカナメさんが寝ており、反対隣にはエピちゃんが横になっている。

 

(そしてカナメさんの向こうにトロワを寝かせるなんて……自分が一番接したくない相手との間を確実にワンクッション以上置く並び方)

 

 完璧だ、まさに完璧だった。

 

(……何て言うはずないよね?)

 

 その気は無いであろう二人とは言え、女体にサンドイッチされた形での就寝である。

 

「……寝られん」

 

 イベントの前日にイベントが楽しみすぎて寝付けない子供のような理由ではない。

 

(信用してくれているのはありがたいんだけど、無防備すぎやしませんかね、お嬢様方)

 

 俺をからかうだけからかってあっさり寝たフリーダムなスミレさんにしても、「僕が主人の意に反することをするはずがないぴょん」とトロワに釘を刺してくれたカナメさんにしても。

 

(それでもまぁ、モノは考えようかぁ。あの変態娘(トロワ)よろしく胸を押しつけたり擦りつけてくる訳じゃないのだし、眠れないにしても考え事ぐらいは出来る)

 

 ひょっとしたら考え事で頭を使っている内に寝てしまうかもしれないし、こんな時こそポジティブ思考で動くべきだろう。

 

(さてと、ならまずは何を考えるか、かな。とりあえず、これからの方針は既に定まっていて、シャルロット達とバラモスを倒すまでに至った道程と比べると、極めてシンプルだ)

 

 神竜を倒すべく、戦力を整え、準備が調えば、挑み、勝利して願い事を叶えて貰う。

 

(思いつく限りの寄り道も、あのオッサンの旅に付き合うこの一件と後はせいぜい「さいごのかぎ」を回収してシャルロットの現状を報告してくれるクシナタ隊のお姉さんを介して渡すくらいだもんなぁ。どっかのメダルマニアなオッサンへの復讐を除けば)

 

 色々端折ったり、クシナタ隊のみんながシャルロット達の代わりに事件を解決してくれたお陰で、勇者一行のアレフガルド行きは俺が色々要らないことをしなかった場合と比べて随分早くなる。

 

(時間的余裕があるなら、あちらの攻略は勇者一行にお任せしちゃっていいよね。かなりの余裕があるようなら、クシナタ隊のお姉さんを通じて、親父さんの兜がある村の情報を渡しても良いし)

 

 アレフガルドに渡ったシャルロット達がどの程度の時間で大魔王ゾーマの打倒に至るかは現段階で予想もつかないが、こちらが神竜を倒すのに充分な準備を整えられる位の時間はあると思っている。

 

(もちろん、発泡型潰れ灰色生物(はぐれメタル)との模擬戦か風呂を使用することが前提だけどさ)

 

 後者はともかく、前者ならやらせても問題ないと思うのだ。トロワだけなら後者も問題ないとは思う。

 

(……その結果、レベルが上がりすぎて手のつけようがない程強い変態とかになりでもしない限りはね)

 

 想像したのは、タフになりアイアンクローをものともせず、機敏になってこちらの速度に追いついてきた上で全力破廉恥をやらかすトロワ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ああっ、この痛み。最近、マイ・ロードに頭を掴まれるだけで、私――」

 

 そうぞう の とろわ が いった。おこさま には とても きかせられない せりふ を。

 

(やめてよ、おれ の そうぞうりょく)

 

 成長するという可能性を変態に向けるだけでどうしてこうも恐ろしいモノが誕生するのか。

 

(とりあえず、アイツの事を考えるのは止めよう。考えるならあのオッサンの目的地だ)

 

 バハラタを出て船が向かう方向は、太陽の動きからすると西。今のところアッサラームとの交易船が通るモノに似通ったルートを進んでいると思う。

 

(このままアッサラームに向かうはずはないし、おそらくはネクロゴンド方面。地図にさえ載っていない場所ってとこか)

 

 脳内の地図と照らし合わせ見当を付けるのは、色々あって目的地の情報をあのオッサンから聞きそびれたからでもあった。

 

(魔物は聖水を撒けば、まず出てこない。帰りは移動呪文でひとっ飛び)

 

 船が移動呪文についてこられない可能性を残してはいるが、それなら移動呪文の使える人材を一人船に残しておけばいい。

 

(例えば……スミレさんとかね)

 

 魔法使いのお姉さんにはアバカムの呪文を使う役目が、俺は聖水を撒かないといけないと考えれば妥当な所である。別にからかわれるのが嫌だからとかそんな個人的な理由の人選ではないのだ。

 




ちょっとだけトロワから解放されつつも、やっぱり眠れない主人公。

次回、第七話「上陸」

おそらく今年の更新はこれで最後になるでしょうね。皆様良いお年を。
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