強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第七十七話「主人公はあしもとを調べた」

「これか」

 

 崩れた壁の中から俺が引きだしたのは、細長い筒状のパーツだった。唱えたばかりの呪文に反応して光ったモノの正体でもあると思われる。

 

(ゲームだったら「○○ は あしもと を しらべた! なんと ほそながいぶひん を みつけた!」とかそんな所なんだろうけど)

 

 ともあれ、じーさんの言うパーツの一つが見つかった訳だ。

 

(で、幾つか見つけてある程度数がたまったところで向こうに声をかけるか、それとも――)

 

 ふと気づいた、俺はじーさんとその辺の取り決めをしていない。

 

(まぁ、それは口実で、よくよく考えるとじーさんじーさんって脳内で呼んでるものの、あのじーさんの名前も知らないんだよなぁ)

 

 別にムール君の様に蘇生させたいから名前が知りたいって訳ではない。割ととんでもない設備を作った人物であったから、気になったていどの感覚であり、別に名を知らずとも話は出来る。

 

「とりあえず、一つ見つけたからここに置いておくぞ? 以後見つけたモノもここに置いておく」

 

「ん? おお、すまんのぅ」

 

 だからこそ、それには報告ついでに触れただけだった。

 

「所で、まだ名を聞いていなかったな」

 

 と、だが。

 

「ん? ああ、そう言えばそうじゃった。協力して貰おうというのに名前すら名乗らんとはいやはや、申し訳ない。ワシはエロッジ、エロッジ・ジーニアスじゃ」

 

「なっ……エロジジイ、だと?!」

 

 まさか実在する名前だなんて思っていなかった。

 

「エロジジイ? 違う違う、エロッジじゃ。ロッジとエレイン……父と母の名から貰った名前でな」

 

 じーさん、もといエロッジじーさんは頭を振るが、もう俺にとってじーさんはエロジジイさんだった。

 

(けど、既に故人でよかったぁ)

 

 今の時代を生きていた人だったら、以前使った偽名からこのじーさんが正体ではないかとバラモス軍に目をつけられていたかも知れないのだ。

 

(次はもっとよく考えて偽名を名乗ろう。そうだなぁ、怪傑ヘンタインとか……いや、エロジジイが実在するんだ、ヘンタイさんが居たっておかしくない)

 

 寧ろこの場合名乗って実害が無いのは、ゾーマ軍か。

 

(もういっそのこと「大魔王ゾゾゾゾゾーマ」とか名乗っちゃうとか)

 

 おふざけ全開のネーミングだが、これならゾーマ以外に迷惑はかかるまい。

 

(しかも「ぞ」が本家より多いのが産むコレジャナイ感っ! まぁ、大魔王なんて名乗ると話を聞いた勇者が討伐に来そうでアレだけどさ、うん)

 

 そして、かつての師と敵味方として再会する、勇者シャルロット。

 

(……良し、大魔王は止めよう。ロクでもない発想も世界の悪意が斜め上展開で現実にしかねないし)

 

 師弟対決ってありがちな展開なだけに一時のギャグで済む気がしない。

 

(こういうフラグは折っておかないとなぁ)

 

 ただでさえ何故かピンチが多いのだから。

 

「解った、今度からきちんとエロジジイと呼ぶことにしよう」

 

「マイ・ロード?」

 

「……お前さん、わかっとらんじゃろ?」

 

 えっ、なんで そろって そんなめ を するんですか、ふたりとも。

 

「そんなつもりはないが、ならばエロジジィにゃす。俺は残りの部品の発掘に戻る。所要時間が解れば声をかけてくれ」

 

 フルネームなら問題なかろう。俺は言い捨てると二人の元を去り、崩れた壁際で作業を再開する。

 

「レミラーマ……ふむ、レミラーマ……ここか。レミラーマ……む? レミラーマ……ふぅ」

 

 呪文を唱え光った場所を覚え、目印に金貨を置くか差し込んで幾つかの場所へ目星をつける。

 

(一回一回のレミラーマは大したこと無いけれど塵も積もれば山となる、だなぁ)

 

 繰り返すと精神力消費も馬鹿にならない。

 

(金貨でマーキングしてるから使用回数は抑えられたけど……あ、これも部品、かな)

 

 壊さぬように細心の注意をもって何の用途に使うのか皆目見当もつかないそれを引っ張り出すと、脇に置いて次のゴールド金貨へ手を伸ばす。

 

(さて、トロワが嫌がってる様子もエロジジイさんが名前相応の行いをしてることも無し……かぁ。ふ-む)

 

 時折チラチラとじーさんの方見ての監視を挟みつつ探ってみれば、出るわ出るわ。

 

(メンテナンス用の部品は結構潤沢に揃ってるけど)

 

 ひょっとして村が封印されるまでエロジジイさんの後を継いだ村の人が定期的にここへ足を運んで居たのだろうか。

 

(それなら説明は付くんだけど)

 

 おそらくだが、あのエロジジイさんに尋ねるのは悪手以外の何者でもない。

 

(わざわざ確認するまでもない興味本位のことで話を脱線させても作業が遅れるだけだしなぁ)

 

 後でムール君辺りに聞くのが正解だと思う。

 

「とりあえず、それなりに数は集まったか」

 

 動かし続けていた手を止めて材料置き場を見れば、一度で運べない程度の数にはなった大小様々な部品が転がっており。

 

「一旦持っていこう」

 

 後どれぐらいで復旧にかかる時間が判明するのかも気になるが、解れば声をかけてくれと言ってある。

 

(焦ってもどうにもならない。決めた以上は声がかかるまで掘って運ぶだけ、か)

 

 両腕で拾い集めた部品を抱えた俺は再び二人の方へと歩き始めたのだった。

 




なんと じーさん は えろじじい だった。(名前は)

名は形を表すと言うが、エロッジは元聖職者。本当にエロいのか?

次回、第七十八話「そろそろかな?」
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