強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第七十八話「そろそろかな?」

「おお、これは随分掘り出したのぅ。実はな」

 

 隠れていなかったこともあるが、おそらく話が一段落したとか、そんなところだったのだろう。近づいてきた俺に気づいたエロジジイさんはどれぐらい時間がかかるのかが判明したと明かす更に言葉を続ける。

 

「ワシの想像を超えて優秀なお嬢さんでな。この調子なら半日もかからんじゃろ」

 

「本当か?」

 

「う、うむ。一応お前さんの発掘作業と部品の提供が滞らずに行くことが前提じゃがな」

 

 若干退き気味に頷いたじーさんの言葉には一理あった。

 

「なら俺は作業に戻ろう」

 

 設備を作り直すにしても材料がなければどうしようもない。寧ろ材料確保こそ最優先でしなくてはならないことだろう。

 

(って感じに俺を遠ざけておいてセクハラやらかす可能性はゼロじゃないけど、元聖職者って言ってたし)

 

 監視に行動を割きすぎてトロワの作業が立ちゆかなくなっては本末転倒だ。

 

「優先的に持ってこいと言うモノがあれば言ってくれ。声は届く距離だ」

 

「おお、そうさせてもらうとするかの」

 

 では早速とそのまま何かを指定してくるかと思えば背に投げられたじーさんの声はそこで途切れ。

 

(持っていったモノでひとまずは足りたってことかな)

 

 リクエストの無かった理由を考えつつ、戻った俺は発掘作業に戻る。

 

「さてと」

 

 金貨を引き抜き、周辺を調べ、見つけたモノを破損させぬよう慎重に引っ張り出す。おおよそはこれの繰り返しな訳だが、意外と神経を使う。

 

(暫く経過してる上に収納場所が崩れて下敷きになってたからなぁ……あ)

 

 当然ながら引っ張り出してみたら壊れてたってこともそれなりにあり。

 

(これで幾つ目だっけ? あー、物品の破損を修復する呪文があればなぁ)

 

 声に出さずぼやきつつ、壊れた部品を他の破損品が置かれた場所に置き、再びコインを抜いて次の品を探す。

 

(無い物ねだりしても仕方ないってわかってはいるんだけどね)

 

 壊れた部品を見る度に足りるだろうかとか思ってしまうのだ。

 

(エロジジイさんの様子を見るとあっちはその辺気にしていない様だったし)

 

 おそらくは杞憂なのだろう。

 

(地下墓地内の様子も把握してるみたいだったし)

 

 幽霊だから崩れた場所もすり抜けてどれだけの部品が無事かを把握してる可能性だってある。

 

(……うん、何て言うんだろう。こう言う想定外のハプニングがなさそうなのって良いよね)

 

 数が足りるなら延々掘り出し運ぶだけなのだ。

 

(こう……部品に混じっていつもの奴(がーたーべると)とかが見つかって全力でツッコミまくる流れとか、今までの流れからすると有るんじゃないかってさ、どうしても身構えちゃうんだけど)

 

 きっと俺が気にしすぎたんだろう。

 

(いや、こういう考えは返ってフラグを立てるだけか)

 

 せっかく何事もなく物事が進んでいるのに、平地に乱を起こすような愚行をする気はない。

 

(平和が一番、一番だ、うん)

 

 寧ろ何もないことに感謝しつつ俺は発掘作業を続けるべく次のコインに手を伸ばし。

 

「っ」

 

 動きを止め最初に抱いた感想は「やっぱりな」だった。

 

(結局フラグ回収しちゃうとか……このままつつがなく終わりそうだったのに)

 

 胸中で恨み言を漏らしてみるが、近づいてくる魔物のモノらしき気配は消えない。

 

(いや、魔物でよかったと思うべきかな)

 

 余程厄介な相手であれば話は別だが、魔物なら急行すればあっさり片付けられる。気配の数は片手の指に収まる範囲内だし、ここに至るまでには足止めの仕掛けも残している。ここでまたいつもの奴(がーたーべると)が出てくるよりもマシな状況だろう。

 

(問題があるとすれば一つだけ、トロワの側を離れなきゃいけないってことだけなんだよなぁ)

 

 今のところセクハラっぽいことをエロジジイさんがする様子はない。仮にこれからもしないとしても、トロワは俺の側に侍ることを自分に課している。

 

(俺としては撤回してくれても良いんだけど……)

 

 マザコンな変態でなくなっても一度課した制約は制約と言うことなのか。

 

(トイレとか風呂にまで付いてこられるというのもアレだしなぁ、その辺り柔軟に対応出来るよう変こ……あ)

 

 そうだ、この手があったじゃないか。

 

(幸いトロワは盗賊じゃない、気配には気づいてない筈)

 

 だったらトイレのフリをして片付けてきてしまえばいいのだ。

 

(腐乱死体の臭いだって前に戦った場所を通ったからとか言えば)

 

 動く腐乱死体に触れられればアウトだが一度も触れられずに倒せば問題ない。

 

「トロワ、すまんが少し席を外す。その、何だ……生理現象的なものだ思ってくれればいい。お前はここで作業を続けてくれ」

 

「あ、はい。マイ・ロード、お気をつけて」

 

 言外に今回はノーカンだと示しつつ告げれば、あっさり応じてくれて。

 

(へんじ を するとき、ちょっと しせん が ゆれた のは きのせい ですよね)

 

 覆面をしているから表情ははっきり読み取れなかったが、変な誤解をされてないと良いなぁと思いたい。思いたかった。

 

「ほう、生理現象か。うむ、若いと色々大変じゃのう」

 

 だが、エロジジイの方が誤解してるのは言葉から明らかであり。

 

(聖職者って、せいしょくしゃって奴は……またこのパターンかぁぁぁぁっ)

 

 俺は心の中で叫んだ。僧侶のオッサンにポルトガで誤解された時を思い出しながら。

 

 




何事もなく終わるかと思われた時、空気を読まず襲来する魔物。

トロワに告げず一人で片づけようとした主人公を待たしてもピンチが襲う。

普通にトイレだって言っておけば良かったのに、あーあ。

次回、第七十九話「誤解だよ、誤解なんだよ」

だから通報しないでよ、トロワ。主人公は変態という名の紳ぎゃあああああっ。
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