強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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予告無しの番外編、今回はエロッジ視点となります。

ネタバレ防止にサブタイトルは???視点ですけどね。



番外編3「作業の中で(???視点)」

「すまん、その気持ちだけで充分だ。ではな」

 

 そう言ってあの若者は背を向けた。おそらく魔物となった死者を倒すため席を外した分の遅れを取り戻そうと言うのじゃろう。

 

(ありがたいのぅ)

 

 ワシらの村の地下墓地の現状を憂い協力してくれるという意味では魔物のお嬢さんにもじゃが、いくら感謝しても足りぬぐらいじゃ。

 

(本当に良い人達と出逢えたもんじゃ)

 

 ワシの名はエロッジ。かつては一人の聖職者として神に仕えておった。じゃが、それも昔の話。聖水を安価で流通させるべきと主張して拝金主義者に睨まれ、身に覚えのない罪を着せられ逃げざるを得なくなったワシは行き倒れたところを山中にある小さな村落の人々に助けられて村人の一員となり、そしてこの村で一生を終えた。

 

(あの時安価に聖水を量産すべく考えた技術で地下墓地を整備し、恩も返せたと思っておったが……)

 

 落盤によって地下墓地を清める設備が損壊。修復しようにもワシは既に人に有らざる――モノに触れることも叶わぬ身じゃった。それでも誰か来てくれればと願ったが、村は何らかの理由で捨てられたのじゃろう。墓参りはおろか、死者を安置しに来る者も現れず。

 

(やがてここに安置されていた骸達が起きあがり……ワシは何も出来なんだ。元聖職者じゃと言うのにのぅ)

 

 よたよたと歩み去って行くくさったしたい達が向かったのが外であり、魔物化した死者が村に解き放たれてしまったことはわかっておった。

 

「あのまま亡者の徘徊する廃村と化してしまうかと思うておったが……」

 

 ただ、設備の失われた場所を眺めて嘆くだけの日々は唐突に終わりを迎える。

 

「……行き止まりが、ない?」

 

 不意に聞こえた声で我に返れば、立ちつくす人影があり。

 

「嘆かわしいことじゃ」

 

 久々の来訪者、何と声をかけるべきか迷ってワシの口から出たのは今を憂う言葉。

 

「えっ」

 

 そして、返ってきたのは腐乱死体とは違う生ける者の反応。

 

(しかもこの村の者と来た。あまりの嬉しさに一方的な会話をしてしまった辺り、ワシもまだ修行が足りんのぅ)

 

 じゃが、自重を忘れる程に嬉しかったのじゃ。主はまだこの村を見捨てておられなんだ。

 

(そして、その後にやって来たのが、あの若者と魔物のお嬢さんじゃったな)

 

 まるでこちらなど眼中にないと言うように久々の来訪者だった村の者にのみ話かけておったが、ワシにはわかった。無視するように見せかけ、密かにワシを警戒していることを。

 

(あの若者にとっては見知らぬ人物で幽霊、しかもここは魔物となった死者が今も徘徊しておる)

 

 警戒は無理からぬ事じゃし、ワシの方も最初は若者を警戒した。何せ盗賊じゃったからのぅ。すわ、盗掘者かと一瞬思ったもんじゃった。無論、ホンの一瞬じゃったが。

 

(盗掘者が村の者と一緒な筈がないというのにのぅ)

 

 それどころかのんびりしている時間は無いと言いつつも、何だかんだで設備の復旧に協力してくれて、今に至る。

 

(おそらく、最初から協力してくれるつもりだったのじゃろうな)

 

 悪いとは思いつつも席を外すというので壁抜けして様子を伺わせて貰ったが、自身を主と慕うお嬢さんに心労を賭けぬよう理由を偽ってまで接近する魔物を排除しに行き、あまつさえ魔物となった死者が落とした副葬品には目もくれなんだ。戦闘に巻き込まれぬよう離れておったので本ということしか解らんかったが。

 

(ワシに払える報酬など無い、一文の得にもならんと言うのに……)

 

 盗賊にしておくことなど勿体ない高潔さじゃった。

 

(そも、あの若者……ワシに、通じる何かを感じる)

 

 ひょっとしたら、盗賊になる前は聖職者で何らかの理由があり今は盗賊をしているのではなかろうか。

 

(あの高潔さ、拝金主義や権威主義の者には煙たく感じるじゃろうしな)

 

 恩人じゃ、詮索はすまい。

 

(しかし、今聖職者でないというのはかえって良かったかもしれん)

 

 謂われのない罪で国を追われ、聖職者であることも半ば止めさせられたワシは村で妻を娶り、子ももうけた。

 

(ムール、じゃったか……村長の一族と言うことはワシの血も少しは混じっておるじゃろうが)

 

 あの若者にじゃったら、我が子孫を託せる。

 

(もっとも、その前にまもののお嬢さんとくっついてしまうかもしれんがのぅ)

 

 魔物の身でありながらあの若者をマイ・ロードと呼ぶお嬢さん、話して解ったがとてつもない物作りの才能を秘めておる。

 

(しかも魔物としての力もかなりのもののようじゃし)

 

 ワシから見ればあのお嬢さんも恩人。しかも若者を慕っている様に見えた。

 

(ままならんもんじゃのぅ)

 

 あちらを立てればこちらが立たず。じゃが、ワシとしてはお嬢さんの方にも幸せになってほしいと思う、ただ。

 

「あの、ここはどうすれば?」

 

「っ?! お、おお、すまんのぅ。ここか? ここはじゃな……」

 

 人の事を考えて居る場合では無かったようじゃ。お嬢さんに声をかけられ我に返ったワシはお嬢さんの手元を覗き込むと説明を始める。

 

「と、まぁこんな感じじゃな。尺と幅でこの構造にするのには本当に苦労したもんじゃ」

 

「なるほど、ありがとうございました」

 

 モノの持てぬ身、従って地面に絵を描いて説明することも出来んが、指さしと口頭の説明だけでお嬢さんは理解したのか組み立てを再開し。

 

(マシュ・ガリバー、ベイル、ユーザン、リムッツ……ここの設備の技術、何とか後世に残せそうじゃ)

 

 心の中でかつての仲間に呼びかけながらワシは口元を綻ばせた。

 

 

 




やったね主人公、ムール君のご先祖様からのお墨付きが出たよ?

次回、第八十一話「本気を出した結果」

しかし、じーさん勢いでうっかり成仏させるところだった。危ない危ない。

ちなみにじーさんのお仲間の名前は一つを除いて主人公の偽名をちょこっと変えたものです。
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