強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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第八十九話「予備の下着は忘れるな! 忘れたら、どうなっても知らんぞー!」

「部屋は空いているか?」

 

 宿屋の戸口をくぐってすぐ、フロントにいた宿屋の主人に俺は問い。

 

「ええ。ご宿泊ですか?」

 

「ああ。三人部屋を一つと……あ」

 

 主人の言葉に頷いて部屋の指定を始めて、ふと気づいた。

 

(ムール君の部屋割り、どうしよう?)

 

 女性部屋に割り振るのは問題があるし、男部屋にするのも拙い。

 

(だからって一人部屋にしたらムール君に何かあると言ってるようなモンだしなぁ)

 

 そもそもムール君が両方ついてると知っているのは、今のところ俺のみなのだ。

 

(って、よく考えたらそれ拙い。カナメさんには伝えておかないと)

 

 奥義伝授に居合わせて貰う時、予備知識無しで両方ついてるムール君を見たらどうなることか。

 

「お客様?」

 

「あ、あぁ、すまん。三人部屋を二つで頼む」

 

 結局、迷いつつもムール君を俺と同室に割り当てたのは、盗賊としての格好が男性のモノだからであり。

 

「承知致しました。六名様で一晩72ゴールドですが、よろしいですか?」

 

「72ゴールドだな? これで丁度だ」

 

「はい、確かに。こちらがお部屋の鍵です。鍵についてるプレートの番号がそのままお部屋番号となっております。六号室と七号室は一階の突き当たりとそのお隣の部屋ですね」

 

 俺は財布から取り出してカウンターにのせた金貨を数え終えると、主人は二つの鍵を俺の前に置き、廊下の最奥を示す。

 

「そうか。世話になる。ムール、トロワ、カナメ、いくぞ?」

 

「あ、うん」

 

「はい」

 

「ぴょん」

 

 ムール君の身体の事については、人前で言う様な事ではない。

 

(それに手荷物持ちっぱなしのままもなぁ)

 

 話は荷物を置いてきてからでも出来る。

 

「言いたいことも有るかもしれんが、先に荷物を置いて来て、それからだ。カナメ、鍵を」

 

「ありがとうぴょん。スー様、それじゃ、荷物を置いたら」

 

 今居る中では唯一女性部屋の宿泊者になったカナメさんは俺の差し出した鍵を受け取ると、横を抜け、先に行き、扉の鍵穴に鍵を差し込み。

 

「ああ。待っている。さて、ムール」

 

「……とは、やっぱり……」

 

 頷きを返した俺は横隣に居たムール君へ向き直ったが、当人はブツブツ呟きつつ何か考え込んでいる様子。

 

「ムール?」

 

 考え事が終わるまで待っているのも一つの手だったが、俺は敢えて選ばなかった。かわりにもう一度名を呼び。

 

「ムール?」

 

「え? あ」

 

 俺の呼びかけが届いたのは、三回目。

 

「ごっ、ごめんなさい。オイラ」

 

「いや、気にするな。寧ろ謝るのは俺の方だ」

 

「へ?」

 

 復活を果たしたムールくんはいきなり俺に謝罪するが、謝罪には及ばなかった。

 

「部屋割りを勝手に決めてしまっただろう?」

 

「えっ? あ、あー、そっか。けど、ヘイルさんの立場だと仕方ないでしょう」

 

 今はまだ廊下、理由には言及出来ないが、自分の事だけあってムール君はすぐ理解したらしい。

 

「マイ・ロード、いったい……?」

 

「説明はする。ただし、部屋の中でだ。カナメがこちらに来てからが良かろう」

 

 トロワは一人蚊帳の外だったが、説明は一度で済ませた方が良いので勘弁して貰いたい。

 

「ふむ、なかなかの部屋だな」

 

 窓からは日の光が差し込み、清潔な真っ白いシーツに快適な眠りへの期待が高まる。そして、何より部屋がそこそこ広い。

 

(前者二つはともかく、奥義伝授を考えると広いのは本当に助かるな)

 

 扉を開けて目に飛び込んできた光景へ顔には出ないようにしつつ、心の中で好相を崩す。

 

(ムール君への奥義伝授を考えると二人部屋じゃ手狭だったし)

 

 ムール君の割り振りで俺が固まらなかったとしても、俺は自分達用の部屋を三人部屋にするつもりだった。

 

(結果オーライと言うべきか)

 

 ともあれ、入り口で立ち止まっている訳にはいかない。

 

「さてと、クローゼットは、そこか」

 まず荷物を置く。

 

(あ、このクローゼットの扉、開き放しにして布をかけたりすれば下も隠せて衝立代わりになりそうかも)

 

 荷物を置こうとして出会った発見は奥義伝授の準備には使えそうであり。

 

「スー様?」

 

 部屋の扉がノックされたのは、クローゼットへムール君とトロワの荷物も収まった後のこと。

 

「鍵は開いている、入ってくれ」

 

「お邪魔するぴょん」

 

 扉の向こうからの声に俺が応じた直後、扉が開いてカナメさんは現れ。

 

「……これで全員揃ったな」

 

 同行者がではない。まず、秘密を打ち明けるべきであろう二人と当事者がと言う意味だ。

 

「ムール、どうする?」

 

「あ。……うん、オイラ、自分で言うよ」

 

「そうか」

 

 カナメさんが扉を閉めたのを確認してからの問いかけにムール君は力強く頷き、俺はポツリと漏らして口を閉じ。

 

「ただ、ちょっと窓のカーテン締めて貰ってもいい?」

 

「カーテン?」

 

 ムールくんのお願いに首を傾げた。

 

(まだ早いような……)

 

 奥義伝授の際には外から見えなくするつもりだったが、何故このタイミングなのか。

 

(……あ、まさか)

 

 思い至った時には、きっと遅かったのだと思う。

 

「でしたら、私が――」

 

 止める暇もなかった。

 

(ちょ、トロワ?!)

 

 きっと、主の手を煩わせるまでもないとか思ったのだろう。トロワが窓の側まで歩いていき、カーテンに手をかけ。

 

「待」

 

 待てと言いたかったが、言い終える前にカーテンは閉められ。

 

「ありがとう。それじゃ……オイラ、実はヘイルさん以外に隠していた事があったんだ」

 

 礼の言葉に少しの間を挟んだムールくんの手が衣服にかかる。

 

(もしかしてじゃなくて、これってもう……)

 

 何をするつもりなのかはほぼ確定した。

 

「オイラ、実は――」

 

 うん、かみんぐあうと と くろすあうと が ほぼどうじ に おこなわれるって なにか すごいね。

 

(やった、やっちゃったよ……)

 

 呆然と佇む中、俺は初めてムール君の下着姿を目にしたのだった。

 

 




トロワのお節介の効果発動っ! これによってムール君はついにやっちゃったZE!

いよいよだ。

主人公の○○○○タイム、はっじまっるよー?

次回、第九十話「ムール君と主人公が宿屋の部屋で何かをしちゃう話(閲覧注意)」

いやぁ、何をしちゃうんでしょうねぇ?(にやにや)
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