夕食はビーフシチュー、サラダ、ガーリックライスなどなど僕の好物ばかりだった。
さすが母さんだ。
「春名は?」
「んー、もうすぐ帰ってくるとおもうわよ?あら、ちょうどいいタイミングで帰って来たみたいね」
母さんが言ってから十秒ほどたつと
ガチャッとドアが開く音がして「ただいまー」と元気な声が聞こえてきた。
「さすが母さん、相変わらず正確だね」
僕は肩をすくめ苦笑しながら言った。
母さんは何故だか僕と春名の気配はかなり遠くにいても分かるらしい。昔、何故かと聞いたらニコニコ笑いながら「愛の力かしらね」と言われた。
僕?僕はそんなことは出来ずせいぜいドアの前まで来てやっと、誰かいるのがわかる、レベルである。
前に後輩にこの話をしたとき、
「それってリビングにいるときですよね?」
「そうだよ?」
と答えると、なにか残念なものをみるような目で見られ
「三条会長ならありなのかな?」
とかボソッと言われた。
あきれさせてしまったのかな?面目ない…
「ビーフシチューがあるってことは、れい兄、帝都大うかったんだね!おめでとー」
バタバタと音をたてながら妹がリビングにきた。
「ありがとー、って素直に喜べるほど状況は単純じゃないんだけどね」
「ん?どしたの?」
僕がそれに答えようと口を開きかけたとき、キッチンから母さんが出てきた。
「さあさあ、二人ともお話は食べてからにしなさい。冷めてしまうからね。」
「「はーい」」
とりあえず目の前の食事を胃袋に運ぶことを優先することにした。
ちなみに、父さんはいつも夜遅いのであまり一緒に食べることはないのだ。
「ふぅ、美味しかった♪」
母さんが食後のお茶を出してくれる。
僕はそれを一口すすりながら春名に声をかけた。
「春名は試験の時にISにのったんだよな?どんな感じだった?」
「どうしたの?突然?」
いきなりな話題にソファでゴロゴロしてた春名は怪訝そうにこちらをみた。
「まあ、今までに感じたことのない感じね。ああ、私自由に空を飛んでる!!って実感した」
「いや、それじゃよくわかんないんだけど…」
「あれは言葉に出来るものじゃないの!」
「んー、でも、なるほど、乗ればわかるのか、それなら少し楽しみかも」
そういや、IS操縦出来るってことは飛べるんだよな、なら僕も研究の一環で飛ばせてもらえるかもしれない。嫌な予感は何故かまだ残っているが楽しみも出来た。
「れい兄、なに言ってるの?」
「ん?ああ、まだ言ってなかったか。なんか俺男なのにIS動かせるらしい。今日高校に行ったときに触ったら反応したんだよね」
春名、絶句
春名はそのままゆっくり母さんの方を見ると
「あら、修ちゃんから証拠写真もらってるけど見る?」
「え、なにそれ、僕知らないんだけど」
「うふふ、ほら」
といい、母さんはスマホの画面を見せてくれた。そこにはISの表面に手を置き、口をあんぐりあけて驚いている僕と稼動しているISが写っていた。
なにこれ、いつの間に…
「もう一枚あるわよ」
スマホの画面をスライドさせてみるとそこには、クラウチングスタートのポーズしてる僕の姿が写っていた
「ちょっ、母さん!そんな恥ずかしい写真消してよ!」
「えー、お父さんにも見せなきゃね」
といい、母さんはスマホをしまってしまった。クソ、あの野郎。今度あったらただじゃおかないとぶつぶつつぶやいていた僕はふと気づいた。一人ものすごく静かになっているのを
春名の方を見ると完全に放心状態になっていた。
「おーい、春名生きてるかー?」
「れいに……が……んな?」
何か言ってるが聞き取れない。
ゆさゆさと肩をゆするとやっと我にかえったようだった。
そして、いきなり真剣な顔になり僕に迫ってきた
「な、なに?春名、近いんだけど」
「れい兄って…れい兄って」
「?」
「女の子だったのーーー!??」
「ちげぇぇぇよーー!!!」
春名の暴走は母さんにたしなめられるまで続いた。
全く春名のやつ、母さんが怒るとすごい怖いって知ってるくせに…別に怒鳴るわけではない、威圧感とか何かがとんでもないことになってとにかくヤバイ。
今、春名は僕の隣で正座させられている
「もう、騒ぐのは近所迷惑になるからダメよって前から言ってるわよね?」
「すいません…」
正座で縮こまっている春名は
かわいそうだと思うが、僕も同じ状況なのである。
かあさん、何故僕もと見上げると
「喧嘩両成敗よ」
ニコッと笑いながらそういった。ここで、喧嘩じゃないのにとか呟いたらまた暗黒空間を呼び出すことになってしまうので言わない。
18歳の礼夷は地雷をあえて踏んだりしない主義なのだ。
とりあえず黒スーツさんはいつくるんだろうとか考えてある間に母さんのはなしは終わっていた。