【GE作者合同投稿企画】聖なる夜だよ、神喰さん! 作:GE二次作者一同
投稿作品名:神を喰らいし者と影
登場キャラ:アナグラ勢、ブラッド
ジャンル:(ほのぼの)
「あれ?こんな所でも雪が降るんだ」
ミッションが無事に終わり、帰投までの待ち時間にナナの顔に不意に冷たい物が触れた瞬間に融けて消えている。空を見上げれば雪がチラチラと降っていた。
「もう12月ですからね。雪が降っても問題無いですよ」
「そっか。もうそんな時期なんだね」
空を見上げれば雪は大地を白く染め上げるかの様に降り続く。鎮魂の廃寺エリア以外での降雪は珍しくその季節の印象を深くしていた。気が付けば既に12月も下旬にさしかかろうとしていた。
「そう言えばシエルちゃんはサンタクロースって何時まで信じてた?」
「サンタクロース……ですか?」
突然のサンタクロースの話が何を意味するのかシエルには判断出来なかった。改めて振り返ると、これ迄の人生の中でそんな単語を聞いた記憶が無かったのか、言葉に出たのは確認の意味合いでのそれだけだった。
「そう言われればそうかもしれんな」
帰投後、ラウンジではシエルの言葉の真意を確認する為にナナはジュリウスに先程の顛末を話していた。あの時のシエルの反応は誤魔化しているのではなく、純粋に知らない可能性が高い。そんな事を思った故の行動だった。
「流石にサンタクロースは無理があるけど、パーティーとかだったら皆でやったらどうかな。きっとその方が楽しいよ」
「ふむ。それについての異論は無いが、準備の方は大変じゃないのか?」
「そこはほら、北斗の力を借りて何とか…」
ナナの言いたい事が現時点でジュリウスにも理解出来ていた。手っ取り早いのは北斗を経由して弥生に何か提案をしてもらう事。しかし、ここ最近の北斗の出動を考えると安易に頼む事は出来なくなっていた。
聖域が出現してからもアラガミの脅威は何も変わらないまま。実質的にブラッドが農業に従事しているのはあくまでも未来に向けた壮大な実験であって本業では無い。既にオーバーワークとも取れる程にブラッドの活動内容は多岐に渡っていた。
「あら、何だか楽しそうな計画ね」
「あっ!丁度良かった!実はお願いが……」
そんな2人の会話に割り込んできたのは秘書の弥生だった。まだ仕事の途中なのか、手には書類が幾つも所持している。しかし、既に殆どが終わっているのか、遠目から見るそれは支部長の決裁印が全て押されていた。
「ナナちゃん。計画を立てるのは良いけど、しっかりとやらないと後が大変よ」
「そこは……適材適所で良いかな~なんて。ははは……」
笑って誤魔化す以外の手段が無かったのか、弥生の言葉にそれ以上の事は言えなかった。
「なるほどね。でもそれなら弥生さんに許可取れば良いだけじゃないの?」
「確かにそうなんだけどさ」
任務から帰ってきたのか、ラウンジではロミオがジンジャーエールを飲みながらナナの提案とも言えるクリスマスイベントの概要を聞いていた。ここでもこれ迄にハロウィンなど季節の行事が敢行されていたものの、全てが弥生の下で為されていた。そんな中で弥生から一度自分達で計画したらどうかとの提案にナナが頭を抱えていたのが実情だった。
「だったら俺が考えるよ。一度イベントを仕切ってみたかったからさ」
「ロミオ先輩、大丈夫?」
「大丈夫だって。少しは俺の事を信用しろよ」
笑顔で安請け合いしたロミオにナナは僅かな不安を感じていた。これまでのイベント事を思い出すと、全てが予定調和だったかの様に滞りなく実行されている事は誰もが知っている。舞台裏はともかく、表の部分だけ見れば、如何にスームズに進んでいるのかを見ればその苦労は考えるまでもなかった。しかし、その弥生から自分達でと言われた時点で頼む事が事実困難となっている。
このまま自分がやるよりはとの意識が働いたからなのか、ナナはそれ以上の言葉を出す事はしなかった。
「ロミオがね。でも、何事も経験じゃないの?」
「確かにそうですけど、既にクレイドルとしても動いてるなら、一言位は言った方が」
エイジはアリサの話を聞きながらも手を止める事はしなかった。ナナ達がラウンジで色々と予定を考えている頃、自室ではクリスマスに向けての仕込を続けていた。
サテライトは既に軌道には乗っているものの、イベントをする迄の余裕がある訳では無い。その結果としてハロウィンの様にアナグラに招く事を決めていた。既に立案が終わり、現在はそれに向けての準備を続けている。本来であればラウンジか厨房施設を利用するのが一番ではあるものの、ロミオ達の事も考え自室で作業を続けていた。
「でも、案ずるより産むが易しだよ。アリサだって最初から今みたいに出来た訳じゃないでしよ?」
エイジの言葉にアリサは言葉に詰まっていた。今ではある程度の件数をこなしたからなのか、サテライトの立案から申請に至るまで然程時間を必要としなくなっていた。
当初は誰もがやった事が無い手探りの状況が続いた事がまだ記憶に新しい。何をするにも前例が無く、一つの事をすれば三つの問題が生じる程の状況に、他の部隊の人間も一時期はアリサの体調を心配していた。
「それは否定しませんけど……」
「これは弥生さんとも話したんだけど、今後はブラッドも何かと立案する場面が必ず出てくる。事実、聖域の事業はブラッドが専任でやっているんだ。そうなれば聖域絡みの話の窓口になるのは間違いない。今回の事は一つの試金石になるはずだよ」
エイジの言葉にアリサは改めてその事を思い出していた。初めて収穫した野菜を使ったカレーパーティーはブラッドに近い人間だけを集めた結果でしかなかった。現時点で聖域は本当に僅かながらに拡大している事から、今後は身内だけにとどまらず、最悪は他の支部のやっかみも集める可能性がある。
幾らアラガミ討伐の力量があっても、現在のメンバーでは年長者のギルを除けば、ジュリウスを筆頭に人間の持つ悪意や欲望を上手く躱す手段は持ち合わせていない。
だからこそ、こう言ったイベントの内容を仕切らせる事によってもっと視野を広げる為に訓練させるのが目的の一つだった。
「まさかそんな裏があるとは思いませんでした」
「もちろん、放置するつもりは無いから、徐々に誘導する必要があるけどね。そろそろ焼けたはずだから、粗熱取ったら一気にラッピングしようか」
オーブンには焼きたてのジンジャークッキーが入っていた。簡単な人形のそれは粗熱が取れたらそばから次々とラッピングをしていく。既に焼かれたそれは香ばしい匂いを出していた。
「今年ももうそんな時期なんだね。有難くお伺いすると伝えてくれるかい?」
支部長室には珍しい来客でもあった一人の着物を着た少女。既に顔見知りなのか、榊は特段気にする事もなく、少女が差し出した目録と要綱を受取り内容を確認していた。
「分かった。そう伝えておく」
「そうそう。今日はこのフロアの会議室でクリスマスパーティーをやっているから、帰りに寄って行くと良いよ」
「そっか。じゃあ寄ってくね」
無邪気な声に榊は笑顔を浮かべていた。既にこのやりとりはどれくらいになったのかは分からないが、目の前の少女は以前に比べて少しづつ大人びた容姿へと変化している。あの時の状況は既に一部の人間しか知りえていないが、結果的には良かったんだと一人考えていた。
「メリークリスマス!」
会議室の中を飾り付けた事でクリスマスパーティーは開催されていた。本来であればラウンジで開催する予定ではあったが、クレイドルが立案したサテライトの子供達を招く事があるでけでなく、内部の職員の慰労やついでの食事とばかりに会議室を開放する事が決定していた。当初はブラッドが単独でとの話もあったものの、時間と場所の関係上、弥生からやんわりと打診された事をそのままロミオが受けた結果、合同で開催される運びとなっていた。
「一時期はどうなるかと思ったけど、結果オーライで良かったよ」
「本当にヒヤヒヤしましたよ。弥生さんからの提案が無ければ、開催すら危うかったですから」
ナナとシエルはここに至るまでの苦労をシミジミと思い浮かべていた。元々やった事が無い所に加え、何かとパーティーの中に色んなイベントを入れて行こうとすると、時間やスケジュールに大きな問題が幾つも発生していた。
アイディアは良いが肝心の予算や人員の確保が思う様に行かず、またブラッドだけでやるにしても事実上の戦力が殆ど居ない事が、結果としてコウタを巻き込んでの大騒動となっていた。
「本当だよ。こっちがどれだけ頭を下げたか分からない位なんだけどさ」
「コウタさんもご苦労様でした」
スパークリングワインを片手にシエルとナナの傍に来たコウタはこれ迄の事を思い出していた。思いついた物を次から次へと入れて行こうとすれば時間の都合が合わず、また資材発注をかけた途端の計画の変更は、流石にコウタもキレそうになっていた。
アリサとエイジに関してはクレイドルとして準備をしていた為に手が一切回らず、ソーマとリンドウに関しては最初から戦力外通告をしていた為に、コウタとしても部隊の事をマルグリットに任せギリギリまで調整に走っていた。
「俺も乗りかかった船だから仕方ないんだけどさ、もう少しだけ何とかロミオの暴走を止めて欲しかったよ」
「まぁ、その辺りは結果オーライで……。そう言えばマルグリットちゃんはどうしたんです?」
「ああ。それなら……」
半ば呆れた様なコウタの視線を交わし、話題の転換を図るべくナナはここに見当たらない人物の名前を出していた。いつもであれば第1部隊の副隊長としていたはずが、今は珍しくここに居ない。それが何かの合図になったのか、会議室の扉が開いていた。
扉の先にいたのはマルグリットだけでなく、アリサとリンドウ、エイジが何時もの制服ではなくサンタの衣装をイメージした赤い服を着ている。ゲストで来ていた子供達にプレゼントの代わりにジンジャークッキーやシュトーレンを配っていた。
元々クレイドルとしての内容ではあったが、折角だからと第1部隊も参加した事によりマルグリットがその役目を引き受けている。ミニスカート姿のサンタは何時もの雰囲気とは違っていた。
「なんだ、機嫌が悪そうだな」
「ほっとけ。それよりも自分の役目は終わったのか?」
部屋の片隅で食事がてらに来ていたソーマをリンドウは目ざとく見つけていた。既にプレゼント代わりのお菓子を配り終わったからなのか、リンドウはいつものビールではなく珍しくスパークリングワインを片手にしていた。
「おお。それなら全部配り終わったぞ。クッキーはともかく、シュトーレンに関してはサクヤも手伝っていたからな。お蔭で秘蔵の酒が半分以下になったぞ。流石に子供達のケーキの為だと言われれば何も言えないからな」
「そうですか?サクヤさんはこれを期に、少しは在庫整理出来て良かったって言ってましたよ」
2人を見つけたのか、アリサもミニスカートのサンタ姿で来ている。同じく配り終えたからなのか、アリサもグラスを片手にしていた。既にそれなりに時間が経過したのか、パーティーも中盤に差し掛かろうとしていた。
既にアルコールが入っているからなのか、それとも子供達も一旦はお開きになって居なくなったからなのか会場の空気は少しだけ騒がしくなっている。既にイベントをいくつかこなした為に、それ以上の出来事が起こるとは誰も予想しないままのはずの空間が僅かに変化していた。
「何だか騒がしくなりましたね。誰か来たんでしょうか?」
「さあな。アリサが知らない事を俺が知るはずないだろ」
扉が開いてからその騒ぎの元は少しづつ移動しているのか、こちらへと近づいて来ている。その元となった人物を目にしたソーマは固まっていた。
「メリークリスマス!ソーマ」
この場に合わない着物を来たアルビノの少女シオは迷わずソーマの下へと歩いていた。アリサの記憶が正しければ、元々シオも誘いはしたが、予定があるからと断れていた経緯があった。もちろんその事実はソーマとて知っている。だからこそシオが現れた事に驚きを隠せなかった。
「あ、ああ。メリークリスマス」
シオの言葉にソーマはただ返事しか出来なかった。突如として現れた着物の少女の事を知っている人間は現時点では殆ど居ない。だからこそ、会場の全員の視線はソーマへと向けられていた。既にシオは何かを確認しているのか視線が横や上を向いている。
視線の先にあったものを確認したのか、これから何をするのか誰も予測出来ないままだった。僅かに響くリップ音と同時に柔らかい感触が原因となったのか、周囲の空気は徐々にかわりつつある。気が付けばソーマの頬にはピンクの跡が残されていた。
「……えへへ。プレゼント」
頬を少し赤くしながらシオがほほ笑んだ瞬間だった。先ほどまでの視線の向こう側からは野太い絶叫と同時に黄色い悲鳴がざわめきだつ。何が起こったのかを理解するまでに暫しの時間を必要としていた。
「随分と大胆なプレゼントだな」
「でも良いじゃないですか?こんなソーマの顔なんて見た事無いですから」
リンドウとアリサの言葉通り、ソーマは何が起こったのかを理解してなかったのか、暫し呆けた表情を浮かべていた。頬に残るリップの跡はそのまま残っている。何も知らない人間が見ても何が起こったのかを理解するには十分すぎていた。
「あれってシオちゃんだよね?何か凄い大胆な事してたけど」
チキン片手にナナもその様子を見ていた。この時期に珍しい着物を着ているのは屋敷の人間しか居ない。そんな中でもここに来るのであれば限られた人間だけ。何気なく見ていたはずが目の前で起きた出来事にナナは珍しくチキンよりもその事実だけを見ていた。
「確かにそうですね。でも、その前に視線は何かを探してたみたいですけど」
「なるほどね。あれはソーマがそこにいるから仕方ないな」
「ハルオミさん。それは一体?」
シエルの疑問に無いか気が付いたのか、その場を見ていたハルオミだけが理解していた。今の状況が分からないのかナナとシエルは疑問を浮かべている。このメンバーであれば確実に分かるはずがないと思ったのか、ハルオミは種明かしをしていた。
「ほら、ソーマの上にヤドリギのリースがあるだろ?」
ハルオミの言葉に2人の視線は上へと動く。確かに幾つかのリースがあるが、ソーマの上に有る物だけは違っていた。
「クリスマスの時期は、ヤドリギの下でのキスは拒まないのがルールなんだよ。本来は男性から女性にが定番なんだがな。どう?俺と一緒にあの下に行かないか?」
「それは遠慮させて頂きますので」
「私もそれはちょっと……」
「……振られちまったな。やっぱりお前さん方は隊長さんかジュリウスの方が良いのか?」
「……それは秘密です」
そう言いながら2人をハルオミは見ていた。隊長が誰なのかは言うまでもない。ジュリウスの言葉に反応したのか、それとも隊長の言葉に反応したのかは当人だけが知っていた。