【GE作者合同投稿企画】聖なる夜だよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:クリスマス前は特に地獄じゃなかった・てんぞー

投稿作品名:極東は今日も地獄です

登場キャラ:ラケル

ジャンル:ギャグ、ほのぼの、シリアス



クリスマス前は特に地獄じゃなかった(作:てんぞー)

 

 ―――大分復興が進んできたな、とは思う。

 

 その原因は間違いなくレトロオラクル細胞をアラガミ防壁に転用できたことだ。それによって都市部へのアラガミの侵入をはるかに減らす事が出来る様になった。そうなってくると都市部への被害が少なくなり、ゴッドイーター達への負担と、街の復興への負担が少なくなる。そしてそれが今度亜良い循環に繋がって行く。余裕は時間を、時間は進化を、そして進化は安定を生むのだ。そういう事もあり、ここしばらくの間に、大分都市部は様変わりされてきた。塗装されていない土の大地はコンクリートやレンガによって整えられるようになってきて、プレハブ小屋間違えそうだった家はちゃんとした建築の家に代わってきた。アラガミによる破壊は少なくとも生活圏内の話であれば、ほとんど見なくなった。

 

 壁を一つ越えればアラガミ動物園は今でも開園しているのに、えらく平和になったもんだと、

 

 装飾の施された街を歩きながら思う。冬―――十二月―――クリスマスが近い。そのこともあって街はライトアップされ、クリスマス”っぽい”装飾があちこちに施されている。もはや旧時代のクリスマスの意味を覚えている人間は少ないだろう、覚えていてもその意味をかみしめる者はいないのだろう。何せ、この時代、神の名を持つ怪物達が人間を殺しに来るのだから。そしてその神を俺達、ゴッドイーターは殺している。そんな罰当たりな時代が今であり、祝い事なんてほぼ習慣によるもので、俺達はその時の情熱に辛さを忘れようとしているだけだ。

 

 だけどそれは悪くない。今の時代を生きる方法でもあるのだから。

 

 この時代は、正気でいるには辛すぎる

 

 だからクリスマス装飾の施された町並みを眺め、歩く。いつも通りのキグルム姿ではない。鎧姿も戦犯扱いされてから全く着なくなってしまった。だから今の己の格好はもっとシンプルなものだ。ダメージジーンズにシャツと長袖のセーターにマフラー、そして顔の印象が残り辛い様にボルサリーノ帽を気持ち、深めに被っている。そうだ、今日は珍しく全身を隠すような恰好はしていなかった。というのも、キグルム姿も鎧姿もすぐに”ホムラ”であるとバレてしまうため、静かに街の中を歩くには適さない格好なのだ。これが警邏中かなんかであれば、まったくもって問題ないのだろうが、プライベートな時間を過ごす時、本当に一人になりたいときなどは―――脱がなきゃダメなのだ。

 

 一部、リンドウとかが素顔を完全に記憶しているが、それでも新人とかは顔を知らなかったりする為、偶にその姿を見てからかったりするのが楽しい。まぁ、別にトップシークレットとか、そういうノリではないのだが、こう、隠している方が色々と面白いし……もう、隠す意味も一切はない。別に、鎧もキグルミも脱いで生活して構わないのだ。ただ惰性で続けているようなものだ。結構ウケがいいし。

 

 クリスマスが近い。

 

 クリスマス装飾と共に三重、聞こえてくるのは街に流れるクリスマスソングだ。数年前まではそんなものをここで聞く事なんてなかった。音楽なんて文化を楽しむ余裕がなかったし、そもそもレコード盤の一つでさえ激レアものだったのだ。だから今、街に張り巡らされているスピーカーから聞こえてくるクリスマスキャロルはまた一つ、旭東が復興を続けているという事の証である。自分と、そしてみんなの努力の証拠だろう。

 

「……」

 

 寒いのだろうが―――あいにくと、寒い熱いはずっと前から良く分からない。

 

「うかれてんなぁ……」

 

 一緒に誰かとありているのであれば軽く馬鹿な話でもしていたのだろうが、あいにくと今は一人だった。だから街中を警戒せずに歩いている人々の姿を眺め、それを観察しながら感想を抱く。みんな、浮かれているなぁ、と。まぁ、アナグラの連中は基本的に行事とか、イベントとか、お祭りとかフェンリル内で祝っているから、この空気は別に嫌いじゃない。居住区に住んでいる非フェンリル職員の人達は何故符ゴッドイーターだけそんなに遊べるのか、と言ってくるが、

 

 そんな事でも騒いでいなきゃ心が持たない。

 

 極東は今日も地獄だった。

 

 戦わなきゃ生き残れない。でも戦えば心が擦り切れて行く。ここで生きて行くには誰もが鋼の様な心を抱かないといけない。決して折れない、曲がらない、砕けない鋼の精神力を持っていなければアラガミに食い殺される。だからイベントとかは割と頻繁に行っている。むろん、今年のアナグラでもクリスマスパーティーを開催予定だったりする。極東支部アナグラの全スタッフ、ゴッドイーターを集めた大クリスマスパーティーを盛大に行う予定なのだ。こういうマメなメンタルケアが俺達の明日に繋がっている。

 

 まぁ、それに関しては今日は完全に忘れる。何せ―――今日は非番だ。突然の呼び出しがあっても断ると最初から教えてあるし、武器も一切持ってきていない。まぁ、捕食して同化すればそれで武器の調達は終わるのだが、それにしたってするつもりはない。まぁ、つまりは完全にオフな日なのだ。働く気は一切ない。ブラックの概念を超えたブラックな職場であるフェンリル、その中でもとびっきりのキチガイワンダーランド、ここ、極東。死亡率もアラガミ殺害率も世界トップなのだ、福祉ぐらいちゃんとしてくれないと色々と困る。

 

 ともあれ、

 

 口から吐く息は白く、今が冬であることを忘れさせてくれない。核兵器の乱発やアラガミによる干渉から気候や環境の変化は珍しくはないが、ここ、アナグラ周辺では割と本来の極東の気候のままだったりする。その為、普通に冬が訪れている。すでに空は暗く、そして曇っている。天気予報は見てこなかったが―――この調子だと一雨振りそうだなぁ、と心の中で愚痴る。そうしながら街中を歩き、進んでゆく。遠くの防壁へと視線を向ければそのうえで哨戒している赤間の姿が見える。体を軽く震わせている姿は寒そうに見える。明日からは自分も同じところで勤務だなぁ、そう思いながら道路を進んで行けば、

 

 やがて、十字路へとやってくる。

 

 その中央は小さな公園となっており、数週間前にみんなと共同で運んできたモミの木が中央に存在している。無論、クリスマス用に調達してきたものである為、適度に装飾が施されているが―――遠い日の記憶にあるような華やかさはない。それでも、再びクリスマスを祝う文化がここでは復活し始めている。それだけでも十分すぎる進歩だった。音楽も、漫画も、小説も、ゲームもなかった。食べ物なんて食べる事が出来るならそれでいい。そんな、暗黒の時代は終わり、世界はアラガミと殺し合いながら安定期に入り始めている。

 

 この復興はその証拠でもあると思う。

 

 その公園の中央のモミの木の下、車椅子に座り、待っている女の姿がある。女の姿は喪服―――ではない。紺色の長いスカートに白いブラウスと紺色のカーディガン、肩からはショールを羽織っている。こういってしまえばアレだが、非常に珍しいと言っても過言ではない姿だ。まぁ、それは自分も同じことを言えるので、特に何か、言う事でもない。だから彼女を見つけ、口の端からと息を白く漏らしつつも、歩いて彼女の前まで進み、そして足を止める。

 

「よ、待たせたか」

 

「いえいえ、少し前に到着したばかりですから問題ありませんよ……ヤコブ」

 

「ホムラだっつーの。学習しねぇなぁ」

 

「いいじゃないですか。今ぐらいは」

 

 とか言いつつ何時もそうやって呼んでくるクセに。格好は変わっても全く普段から変わらないラケルの様子に軽くため息を吐く。最初に彼女と出会い、そして今、この時まで、かなりの時間が経過している。あの終末捕食を乗り越えて、ラケルが変わったのかもしれないと思わされて、そしてずるずる引きずる様に今がある。まぁ、それでも”今”を悪く思っていない辺り、これはこれでいいのかもしれない。ラケルの乗っている車椅子の背後へと移動し、ハンドルを掴む。ゆっくりとそれを推し進めながら、進んで行く。

 

「それにしてもいいんですか? 大事な休暇を私と過ごしてしまって」

 

「デートぐらい今更な話だろ。第一俺以外の一体誰がお前の面倒を死ぬまで見切れるって言うんだ。ぶっちゃけ、普通に寿命で死ねるかどうか、怪しいぞ俺らは。分類的に人間よりもアラガミ寄りだからな、俺達は」

 

「そうですねぇ……むしろ貴方の方が先に暴走して消えてしまいそうですね。その場合は私一人残ってしまっても無意味なので、捕食されるために暴走した貴方へ出向かせてもらいますよ。真・極東四天王の皆さんなら勝てると信じて」

 

 真・極東四天王―――フライア所属のブラッド隊が極東へと異動してきた為に、旧極東四天王は解散され新メンバーを確認しながら現在のチームが出来上がっている。真・極東四天王なんて言葉の聞こえはいいが、

 

 事実は極東で片手に入るキチガイランキングだ。

 

 ジュリウス、ソーマ、ユウ―――そしてブラッド隊の”アイツ”だ。それが現在の極東四天王。リンドウやアリサはアナグラをしばらく離れているし、公にはホムラは死んでいることになっている為、キグルミとしての戦績でリスタートしている為に連中のスコアに追いつかない。

 

 そのうちソロで極東横断アラガミ殺戮レースでもしなきゃ追いつけなさそうである。あのブラッドレイジとかいうのはホント卑怯だと思う。もっと、こう、チート的な能力を天は授けてもいいんだよ? と思わなくはない。まぁ、それでも、

 

 ないものはない。願ったところで手に入る訳じゃない。

 

 ならあるもので戦い続けるしかない―――それがここ、そして今の世界だ。

 

「ま、なんだっていいさ。お前の面倒を見れるのは俺だけだし、ずっと面倒見てやるよ」

 

「それ、私はプロポーズとして受け取っちゃいますよ?」

 

 そこらへんどうだろうなぁ、と思う。結婚するってどうなんだろうか、とは思う。リンドウはサクヤと結婚した。ちゃんとした結婚式を開いて、みんなに祝福されながら、ウェディングケーキを放火されつつ結婚した。アレは酷かった。隙さえあればだれもがネタに走ろうとするからほんと収拾がつかず、最終的に胃痛でソーマが倒れるという事で終わった。なおリンドウは新郎のクセして頭から壁に埋まっていた。思い出してみれば結婚式ってそんなもんだっけ、と思う。アレが結婚式だったら俺、嫌だなぁ……。

 

 まぁ、とりあえずは、

 

 ポケットの中に突っ込んでおいた掌に乗る程度の、小さい箱を取り出し、車椅子を押しながらそれを座っているラケルの膝の上に落とす。それを拾い上げたラケルが小さい箱の中身を今頃確かめているだろう。なんか急に恥ずかしくなってきたし、視線を下へと絶対に向けずに、上へと持ち上げたままそのまま、目的地へと向かって車椅子を押す。

 

「ま、なんだ。その……あれだわ。クリスマスはクリスマスで皆でパーティーするしな。個人で静かにやるにゃあ今日ぐらいしかねぇからな。まぁ……その……あれだわ、アレ。……やっぱなんでもねぇよ」

 

 言おうとして止めた。だけど車椅子に座っているラケルには割と、自由がある。車椅子に座ったそのまま、少しだけ驚いたような、しかし嬉しそうな表情で振り返りながら小さな箱の中身―――つまりは指輪を握っていた。銀や金なんてものは今の時代、かなり希少になっている。それも地中の鉱物資源をアラガミたちが穴を掘ったり地下鉄から壁を削りながら食べたりと、そういう風にドンドン消費してしまっているからだ。だから、合成アラガミ鋼の様な合成金属ではない、金や銀などの純粋な資源は非常に珍しい。

 

「給料、三カ月分ですか?」

 

「まぁ、素材は全部自分で集めてきたもんだからそこは無料なんだけどな。サカキに作成を手伝って貰ったら”極東では指輪をプレゼントするなら給料三か月分だね”とか言われて作成費用に三か月分の給料持ってかれたからそういう意味では給料三か月分だな! あの野郎絶対許さねぇ……! だからメガネを全部片側だけレンズ割っておいたわ」

 

「相変わらず子供みたいな人ですね」

 

「さて、なぁ―――」

 

 あの子供時代からどっか、時が止まってしまった……そんな感じはする。だけど極東は変わり始めている。ラケルは変わった―――そう、この女でさえ変わったのだ。だとしたら俺も、いつまでも格好の悪いままではいられないのだ。ただそれだけの話だ。

 

「まぁ……なんだ……結婚式は酷い事になりそうだからアレとして……とりあえず……な?」

 

「最後までちゃんと言ってくれないと解りません」

 

「俺の事なら何でも知ってるんじゃないのかよ」

 

「さっき撤回しておきましたのでどうぞどうぞ」

 

 こいつ、大分いい性格になったよなぁ……!

 

 深くため息を吐きながら、目の前で降り始めた雪を見て、あぁ、なんか、今ならいけそうだなぁ、そんな気がして、

 

「―――どこまでも面倒を見てやるよ」

 

「もっと別の言い方はないんですか?」

 

「ないったらない。これが俺の限界だ。ストレートに愛だとか好きだとか言えるリンドウを今はちょっと尊敬できるかも」

 

 そんな言葉にラケルはくすり、と声を漏らし、

 

「仕方のない人です。ほんと私がいないと駄目そうで」

 

「うるせぇ。それよりメシ食いに行くぞメシ。復興が進んだおかげで高級料理店が開いたらしいんだ。お金ならアラガミぶっ殺しまくって腐るほどあるんだ、ぱぁっと使って食っちまうぞ」

 

「ふふ、解りましたよ」

 

 ラケルの声を聴きながら雪が降り始める中、件の店へと向かって車椅子を推し進めながら歩いて行く。少しずつ白く、冬の景色へと染まり始めている街の姿を見て、まだまだかつて、遠い繁栄した時代の姿は訪れない事を理解し、だけど、それでも今はちゃんと前へと進んでいることを確認する。

 

「なぁ、ラケル」

 

「はい、ヤコブ」

 

 まぁ、少し早いけど、

 

「―――メリークリスマス、な。俺からちっと早いプレゼントよ」

 

「サンタを信じた事はなかったんですけれど、今年のサンタさんは素敵なプレゼントをくれましたし、一生忘れられそうにありませんね」

 

 一生忘れる事の出来ないクリスマスがやってきた―――。

 

 





あとがき

 皆様、お元気でしょうか、てんぞーです、そしてインドにいます……います……います……26度です……です……です。えぇ、日本はクリスマスシーズン、寒い? 雪降ってる? ストーブつけてる? トランクス一枚でノートパソコンに向かいながら執筆しているのがインドのてんぞーです。久しぶりの人はお久しぶり、初めての方はどうも、騙されるな、普段のてんぞーはもっとひどい。

 というわけで本編では一つもなかった主人公のデレ、そして本当に争いも何もない平和な日常という、いつもとはちょっと一風変わった感じの内容でした。本編では恋愛関係というものは全くやりませんからね。童貞のてんぞーには恋愛は辛すぎるのです。フランスの風俗で一人だけ卒業してきた友人を未だに俺は許さない。

 ともあれ、クリスマスとは元々イエス・キリストの誕生日を祝うものですが(もっと古く調べると変わってくるらしいですが)現代日本におけるイメージはプレゼント、食事、雪、そして家族って部分が大部分を占めています。まぁ、日本人の”こまけぇことはいいんだよ!”って精神は本当に驚かされるものがありますが、今回のお話はこの一般的なイメージを抽出して書いた訳です。

 プレゼントは指輪で、食事はディナーで、雪を背景に、そして家族になる為に告白を、という感じで。普段の芸風からかけ離れたもんですが、それでもこういう一面もあるんだよ、という事で。

 皆さんはクリスマスはどうしますか?

 家族と一緒にいますか? 恋人と? やっぱりてんぞーのようにぼっちですか。そうですか。同士よ。インドでクリスマスと俺にどうしろって言うんだ……。

 ともあれ、今回の企画は”クリスマス”という趣旨でしたがなんかクリスマス前だったわ! 正確にはこの期間アドベントって言うんだけどね! なんかちょっとかっこいいね! とか思いつつ、長くなってきたのでここらへんで。

 企画の方、楽しく参加させていただきました。皆さんも楽しければこれ幸いですね、と。
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