【GE作者合同投稿企画】聖なる夜だよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:平坦な幕間 ・黒兎可

投稿作品名:あの神を薙ぎはらうは貴方

登場キャラ:第一部隊(サクヤ、リンドウ除く)、ゲンさん、エリナ、リッカ、ヒバリ、ツバキ

ジャンル:ほのぼの? 日常 面白味のない日々が一番大切なんですよ



平坦な幕間(作:黒兎可)

 

 

 

 

 

 それはある日、アリサの一言から始まった。

 

「リーダーの服を買いましょう」

 

 唐突すぎて僕をはじめ、コウタ、ソーマも頭を傾げた。サクヤさんやリンドウさんは、皆が察している理由からこの場には居ないけど。

 

 ラウンジで顔を突き合わせながら、榊博士特製ドリンクの魔の手から逃れてきた僕等第一部隊。任務終了時にこの仕打ちはないと、僕等は流石に全力疾走。

 シオの時くらいしか開かなかった目を開けて、ショックを受けたような声を出した博士がなかなかに衝撃的だったけど、それはともかく。

 

「……リーダー、まさかと思いますけどいつもの隊服のまま結婚式に出席するつもりじゃありませんよね?」

「え? 駄目なの?」

 

 僕の言葉に、コウタ、ソーマがずっこけた。……あのソーマまでもがずっこけた。初めて会った時から比べれば偉い違いだと思うけど、えっと……。

 逆に何がまずいのか、僕にはいまいち理解できなかった。

 

 孤児院に居た時は、制服じみた服が一応あって、行事関係は大体それを着て行けば問題なかったし。

 ゴッドイーターの隊服もまた、軍隊の礼服みたいな属性を持っているわけだし、着用していても別段おかしなこともないと思うのだけれども。

 

 経済的にも非常にお財布というか、預金口座的に優しいというか。

 

 でも、アリサはどうしてかぷんすかと頬を膨らませて。

 

「せっかくのリンドウさん帰還祝いも含めた結婚式なんですから、いつも通りというのも」

「って言われても、う~ん……」

 

 ここら辺は貧乏根性というか、廃墟生活が祟っているのだろうか。

 いや、確かにすごくめでたい事ではある。リンドウさんを僕等が連れ帰って、そのままの流れでいつの間にかサクヤさんと結婚する流れになっていて。

 

 僕が隊長になった時点で、二人の関係の痕跡は薄々察していたので、そのことが別段変という訳じゃない。ないのだけれど……?(まあお陰でソファで寝る事になってたけど)

 

「私達みんな、普段と違う格好なのに、リーダーだけそのままってちょっと変じゃないですか?

 もうちょっと、こういう所も優等生らしく振舞ってください」

「優等生?」

 

 頭を傾げる僕に「リンドウさんが言ってました」とアリサ。

 

「って言われても、ソーマ何か意見とかあるか?」

「俺は……、親父のタキシードがあるから」

 

 ばつが悪そうに言葉を濁すソーマ。残り二人年少組(?)もそれに気落ちする。

 僕は僕で、少し合わせるだけでその空気を無視した。

 

「コウタはどうするんだ?」

「俺は、タツミさんのお古があるって言われたから、それ再利用するかなー。

 新品買いたくても、ちょっと今月厳しいし。ノゾミのこともあるから、な」

 

「となると……、孤立無援か」

 

 ちぃ、とちょっとだけオーバーにリアクションすると、得意げな顔で腕を組むアリサ。どうでも良いけど、なんか色々と強調されていて、普段意識しない分目のやり場に困る……。

 いや、下からちらほら見える肌色になれている現状がどうかしてるって自覚はあるんだけれども。

 

 ちなみにアリサいわく、ロシアのトレンドなんだとか……。ツバキさんと言いサクヤさんと言いリッカさんと言いアリサと言い、何でこうフェンリル所属の人の服装はこう……。あ、カノンさんは無問題なので呼んでないです、クッキー美味しかったです。ヒバリさんは服の乱れに気付いてない時があってアレです、お疲れ様です。

 

 

 そんなこんなでターミナル。腕輪を挿入して、僕のアバターデータを呼び出すアリサ。資源が限られている以上、在庫のない服も多い。また服を作っても当然おいそれと投げ捨てられる代物ではないので、先にこうして下見してから着用するのが、アナグラでは割と日常だった。

 

 主にカレルとか、カレルとか、カレルとか。

 タツミさんがヒバリさんに苦笑されたりしてたこともあったけど、それはともかく。

 

 気合を入れる仕草なのか、アリサはくいっと帽子の先端を指で撫ぜる。

 

「さ、バンバン試していきますよー」

「服ってかなり贅沢品のイメージが強いからかなぁ……。こういうので試せるってすごく大きいと思う」

「それって、ユウの孤児院時代の話ですか?」

「廃墟生活含めてかな」

 

 後者はともかく、前者も言わずもがな。

 食事や設備には、あの状況下において最大限気張っていたのか、そこまで困ったという意識をした覚えはなかった。食事に関しても、遺伝子操作系やら何やらの実験でも兼ねていたのだと今では思う。

 

 でも服に関しては違う。明らかに、お下がりを着用することが前提となっていて。僕やアキちゃん達年長組についても、新品は滅多なことでは作らず、ツギハギして使っていた。

 

 と、少しだけ僕は思い出し笑い。

 

「なんか、せんせいがサンタクロースの格好しようとしたんだけど、サイズが合わなくって大変だったりしたっけ……。それも、なんか元々別な服の再利用というか、何というか。しかも塗装が落ちて、顔が真っ赤に染まったりして」

「……ホラーか何かですか?」

「皆絶叫してたっけ、あれは」

 

 それこそ神機が姿を大きく変化させた時くらい驚かされたっけ。

 

「まあ、あんまりしんみりしても仕方ないから。で、えっと服か……」

「何ですか、この趣味の悪い白いスーツは……?」

「じゃあ、これ」

「キグルミ!? ユウ、ふざけないでください!」

「あはは、ごめんごめん」

「まったくもぅ……」

 

 ぱちぱち画面で遊んでいると、アリサが覗き込みながら乱入してくる。指先がちょっと触れ合ったりして「ひゃっ」と声を上げたりする彼女に、僕は軽くごめんと言った。

 

 

 

   ※ 

 

 

 

 ……そして、アリサの選んだ一着がこちら。

 

「……普通に似合ってて、なんかつまんない」

「ええ!?」

 

 何故かいつになく口調の辛いエリナのそれを受け、僕は思わず苦笑い。

 デザインはフェンリルのロゴの入った礼服みたいな感じなんだけど、流石にそこはフェンリル製。例によって紐が通されたデザインになっていて、おまけにシャツが黒色だ。どこか隊服にも共通するデザインだけど、こっちの方が場にはそぐいそうだ。後、思ったより普段着として着ても問題がないようにも思った。

 

 本当ならネクタイもした方が良いと思うんだけど「ユウは外した方が良いです」と言ってアリサに取り上げられて、何故か胸の第二ボタンまで開けて、襟元を開いて「うん、うん」と謎の納得をされたりして、僕はちょっと困惑していた。

 

 たまたまその場に居たエリナと話した際、アリサが選んだと言ってどうか確認をとった結果がそれだ。

 

「お兄ちゃん、ボタンなんで外してるの?」

「アリサコーディネート」

「ふぅん……」

 

 ふいっと顔を逸らすと、エリナは何故か顔を赤らめて走り去る。

 

 

 ちなみにカノン先輩は特に変わったも反応せず、ヒバリさんとリッカさんはそろって数秒、ぼーっとこっちの方を見ていた。若干頬が赤かった気がしたけど……、何だろう、そんなに何か恥ずかしいポイントがあるのだろか。

 

 ちなみにツバキさんは、大層良い笑顔で頷きながら僕の頭を撫でてくれた。

 

「……何だその襟」

「あ、ソーマ」

 

 隊長室でCDを選んでいると、入り口が開いてソーマが入ってきた。

 僕が何か言う前に、ぱぱっと数枚選んでプレイヤーの中に入れる。

 

 耳を劈くような、痛々しいまでに主張の強い電子弦の響きを楽しげに聞きながら、彼は僕の隣に座った。

 

「やっぱ変かな、これ」

「ネクタイ外すのは良いとしても、何でそんなボタン開けてるんだ?」

「アリサコーディネート」

「……アイツ、自分の趣味押し付けはじめてないか?」

「趣味?」

 

 僕の言葉に、ソーマは何とも言い辛そうに言った。

 

「……『リーダーはもっと鎖骨を見せるべきです!』だと」

「は、はぁ……」

 

 聞かなきゃ良かった。リアクション取り辛い……。

 

 結局この後、どういう手段をとったのかソーマがアリサからネクタイを奪取してきて、再装着。

 後日、この着心地にアンケートする形で細部調整されて、返却されるとのことだった。

 

 

 

   ※

 

 

 

 リンドウさんたちの結婚式の前までは、割合スムーズに日が進んだ。アラガミの素材回収も、いつも通りと言えばいつも通り。新型が現れることもなく、防壁が破られたりせず。

 

 そんな日が続いたせいだろうか……。出来れば来て欲しくなかったタイミングでの到来だったんだけど、僕等の職業はいっつもそんなものなので、大した話じゃないのかもしれない。 

 

『――あれは……、ツクヨミ?』

『ー―いや、何だあれは……っ』

 

 オウガテイル数十体を片付けるだけのお仕事という意味では、割と最近の仕事の中でも簡単な方だと思っていた。でも、場所が悪かったのかは知らない。

 エイジスが見えるこの場所、シオが歌ったりしてた思い出のあるこの場所に、アラガミが現れた。

 ツクヨミが現れた、という時点でかなり意味がわからないのに(後に博士は「気候の関係でエイジスから迷い込んだのだろう」とか言ってたけどあり得ないでしょうに意味わからない)、そのツクヨミは、背後に「何か」しょってた。

 

 いや、しょってたって言うよりもそのシルエットは……。

 

「アルダーノヴァ!?」

「落ち着いてください、色々違う」

 

 アリサの突っ込みの通り、そのツクヨミはツクヨミとしては異様な構成をしていた。

 

 具体的には、背後に何か居る。

 その巨体は、ツクヨミと同系統の造型ラインになってはいたけど、ぱっと見て明らかにアルダーノヴァを思い出させる巨体だった。

 

「散れ!」

「リーダー!」

 

 僕の指示にアリサが絶叫。距離的に近いソーマの応戦に対して、クレメンサーを振り上げる。

 攻撃モーションに入る瞬間に合わせて斬りつけて、跳ね飛ばされる。でも確実に一撃は届いていたので、どうやら基本的な習性はアルダーノヴァと同様らしい。

 ということは、ベースがツクヨミだとしても弱点は……。

 

 接近しながら殴りをかけてくるモーションに対して、空中に飛びあがり宙返り。しながらクレメンサーをプレデータに切り替え、真下に伸ばす。

 

 位置と角度は、頭の上の輪に。

 

『――!!!?』

 

 よし、効いてる。

 このまま一気に押し込むと、周囲に指示を出し――。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

「……で、何で結局隊服なんですか?」

「……調整が間に合わなかったらしい」

 

 少しどんよりしてる僕に直接聞くのが憚られたのか、アリサがソーマに事情を聞いているのが聞こえる。

 一通り結婚式も終わり、ラウンジで立食会のようなことをしている最中。只一人、いつもの格好のままジャイアントトウモロコシのパウダーフレークを齧る僕は、ちょっと浮いている。

 

 でも、これだって仕方ないのだ。……先日、ツクヨミ亜種(暫定的にそう呼称される)との戦闘時、どうもあの後付近のアラガミの分布が変化したらしく、その影響で配給資源やらヒトのお仕事やらが流動してしまい、後回しにされて届くのは明後日、という状況。

 思わず絶叫しそうにはなったけど、叫んだところでどうにもならないのは分かってる。フェンリルは結構お役所仕事が多いので、ため息をついているしかない。

 

 それでもあんまりどんよりする訳にもいかず、祝福の言葉はいつもの調子で投げかけたけど。

 僕は、腕時計のなくなった左腕を押さえる。あの日以来沈黙したアキちゃんのことを思いながら。

 

 失ったものも、救えなかった命も多くあったけど。

 

 今向こうで、お色直しを終えて楽しげに談笑してるリンドウさん達を見て、ちょっとだけ救われた気になった。

 

「おう、お疲れ」

「? ゲンさん」

 

 声をかけられ、僕は驚いた。ゲンさんもいつも通りの服装をしていた。

 聞いてみれば「一々新しい服を作るのも面倒だ」とのこと。

 

「まあ、俺は後は枯れゆく葉だ。お前らはこれから繁って行く苗だが」

「そう、卑下しないでください。リンドウさん居なくなってから、かなり助けられましたから」

「その言い方も言い方で、失礼っちゃ失礼だが……、分かってないみたいだな。

 まあ、アレだ。少しは嬢ちゃん達の目線に立ってやれとも思うが……」

 

 アリサの方を見て言うゲンさんに、僕は頭を傾げた。向けばあちらの方で、アリサが一人ちらちらとこちらを見ているような、見てないような。

 

「でも、それがお前の良いところでもあるからな。全部潰すのも良くないか」

「?」

「他人の都合を考えず、時に空気を読まずに黙々と動く。煙たがられる時もあるが、それで助けられる時も多い」

 

 ほれ行ってやれと背中を押され、僕はちょっとバランスを崩しながらアリサの方に付き飛ばされる。

 バランスを崩しかかってる僕に、アリサは大丈夫ですか、と足を進めて――。

 

「わっ」

「きゃっ!?」

 

 助けに入ったアリサも巻きこんで、壁に手を着き、そのままアリサを挟む形でサンドウィッチしてしまった。左手が彼女の身体に触れ、やわらかな感触を伝えてくる。

 ついでに、口が彼女の額にぶつかった。

 

「あ、ご、ごめん、大丈夫?」

「~~~~~~っ、そ、それこっちの台詞で、いや、でも――ドン引きですッ」

 

 目を大きく開いて自分の額を押さえたり、落ちた帽子を慌てて拾ったり、ドレスの胸元をちょいちょいと直したりと何やら忙しそう。そしてその最後の動作、で自分の左手が彼女のどこにあったか理解して、再度手を合わせて頭を下げた。

 

「……わかりましたから、顔上げてください」

 

 頬を赤らめて顔を逸らしながらも、アリサは腕を組んでこっちを見ていた。

 

「リーダー、服、間に合わなかったんですね」

「……不可抗力ってことでどうか」

「別に、もう気にしなくて良いですよ。どうにも出来ないことってありますし。

 でも……、ユウのことですから、ひょっとしたら何か、職員側の悪意もあったかもしれませんね」

 

 悪意?

 

「私の親の仇のピターを倒した時のこと、もう忘れました? ……いえ、でも関係ありません」

「関係ないって、それって……」

 

「――ユウは、ユウですから」 

 

 アリサは、ごくごく自然な風に僕に笑う。

 

「無駄に優等生なところも、変に鈍感なところも、人の気も知らないで色々やらかしてくるところも、たまに抜けてるところも。

 格好がどうのこうの言いましたけど、この際そこまで問題じゃないと思います。

 だから、元気出してください」

「……そもそも服の話を最初にふったのがアリサだったような」

「い、いえ、別にその、それがあったからという話な訳でしてね? その――」

 

 フォローを間違えた!? みたいな顔をして慌てるアリサに、なんとなく僕は笑みを浮かべる。手に持った帽子を落しそうになったのを拾い上げて。

 

「うん。でもそうだね、いい加減話もしに行かないとってことか。じゃあ、行こう」

「――っ、は、はい」

 

 少し肩を落した彼女の頭に被せて、コウタたちの話してる方へ向かった。

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに後日談として。

 

「リンドウさんたちに、結婚祝いを送るべきだと思うんです!」

 

 アリサのこの発起により、今回は僕以下三名全員が、ちょっと忙しくなったりもした。

 

 

 

 





後書き(なんでもどうぞ! そのまま載せます)

没ネタを発展させたものですが、平坦で平和な感じのお話です。
結婚式自体を描けないのは察してください; 
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