【GE作者合同投稿企画】聖なる夜だよ、神喰さん!   作:GE二次作者一同

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題名・作者名:ЕСЛИ БЫ 2074

投稿作品名:ピクニック隊長と血みどろ特殊部隊

登場キャラ:ロシア勢

ジャンル:ギャグ、微ネタバレ注意、アリサ・イン・アンダーワールド


※作中少々下品な表現があります。苦手な方はご注意ください。


ЕСЛИ БЫ 2074(作:ウンバボ族の強襲)

 アリサ・イリーニチナ・アミエーラはその日苦悩していた。

 

 鏡の前で色々とポーズをとってみたり……そしてそのたびに落ち込んでみたりしている。

 なぜなら、今着ている衣装がとても『キワドイ』ものだから。

 

「これじゃあ……まるで痴女じゃないですか……っ!」

 

 それは、一見クリスマスのド定番。サンタクロース。

 もしくはジェド=マロース風の衣装の赤い布地に白いファーをあしらった服だった。

 

 本日アリサたち『防衛班』は今日ばかりはアラガミなし、ということで特別任務が発行されていた。

 それは孤児院の子供たちへの慰問と……プレゼントの配布任務だった。

 

 ……が、

 

「せめて胸のところがもう少しっ……!」

 

 

 厳粛にして公正なるくじ引きの結果、アリサに割り当てられたのは主役のサンタもとい、ジェドマロース。

 たがしかし、その服の胸部が大胆なアレンジがなされており、ぶっちゃけ殆どはみ出ている。

 肝心なところをヒイラギの葉っぱを模したトップスで隠しただけの、肌色面積多めの衣装だった。

 

「無理です……こんな服で孤児院なんか行ったらドン引きされちゃうこと間違えなし……!」

 

「アリサぁー? もう準備できたぁー?」

 

「は、はい!?」

 

 同僚からの声に反射的に応答したアリサだったが、服の準備はできても心の準備は全然できていない。

 しかし、待ってくれるほど相手は優しくはなかった。

 ひとりの女性が容赦なく更衣室へと入ってくる。

 

 

「あらぁー? 似合ってるじゃない。ふふっ、『あの子』が見たらきっと喜ぶわねぇ」

「ちょ……からかわないで下さいよっ! と言うか……なんでこんな布地がキレキレの服なんですかぁ!」

「……さぁ? お姉さん分からないわぁ……じゃぁ、行きましょうか。 ……驚くわよぉ……皆、凄いから。

 まぁ貴女もだけれど」

「言わないで下さい~~!」

 

 その女性は何故か男性用のサンタ服。黒いインナーに白と赤の上衣をジャケットっぽく着こなすタイプの衣装――ワイルド・サンタを着ていた。多分くじ引きの結果だろう。

 しかし、それはそれで良く似合っている。

 元々スラリとしてスタイルの良い彼女にはたとえ男性用の服であっての十分着こなすだけの身長がある――にも関わらず、アリサのそれより一回りほど大きい胸が『女』であることを堂々と主張していた。

 肌など見せていないにも関わらず、何故か色気が立ち上っている。

 

「ほーら、さっさと行くわよぉ」

「ちょっと……あぁもう……待って下さいー!

 

 

 ダニエラさん!!」

 

 ダニエラ・バローニオ。顔に折れた十字のタトゥーを入れた美女。

 どこか斜に構えたところのある……けど、本当は心の優しい、アリサの先輩にして仲間の一人だった。

 

 

 

 

 さかのぼること4年前――2070年。

 アリサはロシア支部配属の『新型』神機使いとなり、研修の意味合いを含めて防衛班の一員として迎えられた。

 はじめは色々と衝突もあったのだが、とある事件をきっかけに彼らとは打ち解けあうことができた。

 だが、ある日『予想外』の敵と遭遇したアリサは重傷を負ってしまう。

 

 何とか命からがら逃げだしたものの、暫くは復帰できないほどのダメージを負っていた。

 

 本当だったら最前線の極東支部へと転属命令が出ていたハズだったが、それは頓挫となり。

 何だかんだやっている内に――いつの間にか極東で進行していたハズの『エイジス計画』は凍結になっていた。

 結果、アリサが極東に転属することはなくなり、(主治医だったオオグルマは落胆していたものの)そのままアリサは正式にロシア支部の一員として登録され、今でも防衛班の一員として戦っている。

 

 

「もう4年も経つんですね……」

「そうねぇ……アリサも、もう18歳ねぇ」

 

 覚えてるぅ? とダニエラが茶化した。

 

「貴女が来たばっかりの頃……まず初めに発した第一声。『皆さんもご存知の通り新型です、旧型は旧型なりの仕事をしてくれればいいと思います』……だっけぇ~?」

「ぎゃぁああああああああっ!」

「アレと比べるとこれもかなりの進歩よねぇ?」

「あっ……あぁあぁぁっ……! も……もういいじゃないですかぁ……うぅ……っ」

 

 恥ずかしさに悶絶するアリサをダニエラは慈母の様な眼差しで見つめていた。

 

 あんな面白いモノを忘れる訳がない。記憶がそう簡単に消えると思ったら大間違いだ。

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「遅っせぇーぞぉークソダニエラ。何してやがったんだよオメー」

「何よクソアーサー」

「うるせぇクソ女、女の癖に……女の癖にワイルドサンタ引きやがってこの……!」

「あらぁ? 幸運でごめんなぁい??」

「否定しねぇところがまたムカつくなこの腐れ外道!」

「嫌だわぁ……ねぇーアリサぁー? 何かアーサーご機嫌斜めみたいだわぁ」

「え……ちょ、え!? アリサ居んのかよ!? ちょ、やめ……」

 

 僅か3秒前まで憤怒でムスっとしていた青年が急に狼狽を始める。

 年下の男の子のウロタエっぷりにダニエラはニヤニヤと笑った。

 

「あの……その……」

 

 顔を真っ赤にしていたアリサは、もう開き直ったようだった。

 

「ど、どうですかこの服!! 完っっっ璧な!! ジェド・マロースでしょう!?!?」

 

 やはり素直になれない少女は遥か彼方をピシっと見ながら自信満々……のフリをして堂々と胸を張る。

 

 

「す……すげぇ……」

「アーサー……あんたって本当期待に応える男だわぁ……」

「どこ見てるんですかこの変態!!」

 

 アリサの鉄拳がアーサーの頭を直撃した。

 

「痛っ……ちょ、やめろって……! ワリーワリー、オレが悪かったってば!! 

 

 でもお前はまだマシじゃん!!」

 

「確かに……」

 

 

 そこで、恥ずかしさと、怒り、そしてまた別の感情で顔を真っ赤にしたアリサは堪えきれなくなって、笑いだす。

 

 

 

 

 

 

「貴方に比べればマシですねぇええええええええ!!」

「うるせぇええええ!!気にしてんだから言うんじゃねぇえええええええ!!!!」

 

「やぁだ……そんな大声で、はしたないくってよ? 淑女らしくないわよぉ??」

「うるせぇよ!!」

 

 女共の大爆笑。

 

 それは、アーサーの格好の所為だった。

 

 

「オレなんか……オレなんか、な……!!

 

 女装させられてんだぞ!!!!」

 

 

 その女装の完成度は、極めて低かった。

 

 金髪の女性のカツラはわざわざロングのストレートヘアをおさげ髪にしているものを選択。

 服装はまるで雪の女王の如く青い外套に白い毛皮(From オウガテイル)をあしらったもの。更に律儀に帽子まできちんと被っている。

 少女ならば一度は夢見るだろう、まるで童話の中の『お姫様』に相応しい雪の結晶を象ったイヤリングやネックレス。その綺麗な衣装に包まれた顔は……。

 

 全然似合っていない化粧がされていた。

 

 

「ぷっ……あっはははははははははっ!! に、似合ってますよーアーサーさん!!」

「もう完璧だわぁ。アサ子ちゃん」

「誰だよ!?」

「言葉が汚いですよアサ子ちゃん」

「そうよぉ、往生際の悪い。ちゃんと男らしく! 女らしくなさいな」

「意味分かんない……ダニエラさんが何言ってるのかオレには分かんない……!?」

 

 足にはわざわざ、ハイヒール。

 

 致命的にも、女装がアーサー・クリフォードには似合っていなかった。

 

 

 折角のドレス(のようにも見える外套)は鍛え上げた青年の身体には合わず、キラキラした服を台無しにしていたし、特に毛皮のついた肩幅は正視に耐えるものじゃない。

 

 銀のネックレスのかかる首筋は悲惨そのもので、ファンシーなソレに喉仏くっきりな太い首がミゴトなアンマッチ。腕輪も同様、若干筋の浮き出た太い骨ばった手首には全然似合わなかった。

 

「というか、声低いんですけど、ドン引きですけど」

「声作るくらいしなさいよぉ、気が利かないわね」

「好き勝手言いやがってこの……!」

「そうじゃないでしょう? 義務を果たしなさいな、アーサー・クリフォード?」

 

 最早苦痛なだけのつけまつげを付けた瞼を閉じ、アーサーは天を仰いだ。

 

 

「……す、好き勝手言って下さって……このっ!」

 

 

 自分じゃ精一杯、女の子らしい声を作ったつもり、だった。

 

 

 

 

「あっはははははははははっ!! い、息できない……!!」

「お、お腹痛いっ……腹筋が結合崩壊……!」

「そのまま窒息死なさればよろしいのですわぁあああああああ!! 馬鹿ぁぁああああ!!」

「お、オカマ言葉やめて下さい!! ほ、ホントうに肺呼吸できない……!」

「完璧よミストレス……! あんたゴッドイーター退職してもそっちの世界で生きていけるわぁ……!」

「うるせぇ!! 見ろこのオレ……ワタクシの完璧なスネグラーチカっぷりを!!」

 

 

 ちなみに余談ではあるが、ロシア支部式クリスマスは、まだ国があった頃の文化を尊重し、クリスマスにはジェドマロースとその孫娘であるスネグーラチカが一緒に参加することになってはいる。

 とは言っても、人種が混ざりすぎて色々な国の文化をマゼコゼにした為、かなりアヤフヤではあるのだが。

 

 

 あと、2,3年はクリスマスで笑うことは出来ないだろう……という思いを抱えながらガックリと崩れ落ちたアーサーの肩を叩く手があった。

 

 

 ……あぁ、そうだ。

 

 ……オレは、ひとりじゃない。いくら女共に爆笑されようが……心憎からず思っているアリサに醜態をさらそうが、オレは一人じゃないじゃないか……。

 

 そうだ、戦友が居る。

 信じられる仲間が居るんだ……。

 

 なぁ、そうだろ?

 

 

 

「ヘルマ……」

 

 

「ミゴトな胸だ……!」

 

 

 戦友はアーサーを見てなかった。

 

 片方しかない奴の視線は真っ直ぐにアリサ・イリーニチナへ……正確には彼女の胸部へと注がれていた。

 もう片方の目は今日はクリスマスカラーなのか赤と緑に色づけられた眼帯が覆っている。

 相変わらず男の癖に古代ギリシャの彫刻の如く整った横顔だったが、その鼻先には今日に限り、何故か

 

 道化師の如く真っ赤な丸い物体が鼻先にくっついている。

 

「……ヘルマン……」

「今の俺はヘルマンではない」

 

 ヘルマンは真顔。

 

 

 

 

「真っ赤なお鼻のルドルフだ」

 

「誰だ!?」

 

 

 しかも、よく見ると、ヘルマンは全身出来損ないキグルミ……のような茶色のトナカイコスプレをやらかしていた。頭には無駄に立派な角までついている。

 恐らくは何かアラガミから毟ってきたのだろう。

 

 ちなみに、サンタクロースのトナカイにはそれぞれ名前があり、8頭+ルドルフで全9頭存在するという、恐らく知っていても、この崩壊した世界を生き抜く上では全く役に立たない知識を何故かヘルマンは持ち合わせていた。

 

 無論、アーサーがそんな詳細を知る訳もない。

 

 

「ヘルマン、おまえはヘルマン。いいか。ヘルマンはヘルマンでそれ以上でも以下でもない。いいなヘルマン」

「黙れアサ子」

「好きでこんな格好してる訳じゃねえんだよぉぉぉ……!」

 

 また地面にめり込もうとするアーサーに対し、ヘルマンは一喝した。

 ……甘えるな、と。

 

「俺は何度も言っている筈だ」

「……何をだよ……」

「ツメを怠れば、全てを失うのだ、と」

「……」

 

「アーサー……お前も男なら」

「…………」

 

 

 

 

 

「女装する時は、胸を詰めろ!!!!」

 

「…………!!」

 

 

 

 

 アーサーは、ハッとした。

 目からウロコ、の如くポロリと何かが飛び出す。

 

 

「オレが……間違っていた……?」

「そうだ、確かにお前の女装はデカくてキモい。似合わない化粧は悪趣味でかつ、正直新種のアラガミかとすら思った……だが、そんなことはどうでもいい。

 

 胸さえあれば……それは女だ」

 

 

 

 

 ヘルマンの赤い鼻がピカピカと点滅した。

 それは、元の顔立ちが地味に端正な分、軽く寒気と吐き気を催す光景だった。

 

 

 

 

 

 

「馬鹿にしてんですかね、あの人」

「今、自分の性別の全てを否定された気がしたわぁ……」

 

 アリサとダニエラがまるで光り輝く汚物を見るような眼差しを向ける傍らで、這いつくばっていたアーサーが立ち上がる。

 

 

「ヘルマン……! ……そうだな……オレ……間違ってたよ……! 女装だからって、逃げちゃダメだったんだよな……! そうだよな……!!」

 

「アーサーさん、自分が何を言っているのか分かっているんですか」

「戻ってきなさいアーサー! あんたまで変態の仲間入りをすることはないわぁ!!」

 

「うるせぇ止めるなダニエラ!! オレの女装への挑戦はまだ始まったばかりなんだようぉぉぉおおおおおおお!! ヘルマン! そのブラ寄越せぇええええええええええええ!!」

 

「アーサーさん! アーサーさぁああああん!! あぁっ……アサ子さんが……アサ子さんがっ……! 暗黒面堕ちしちゃいましたっ……!!」

「何て奴なのヘルマン・シュルツ……幼気で無垢なアサ子をよくも……! やはり悪魔に魂を売った奴は違うわぁ……!」

 

 聖なる夜にあるまじき台詞を吐くダニエラ。

 

 その言葉を聞いた赤っ鼻の光ってるトナカイ男が黙って静かに首を横に振る。

 あたかも、自分は暗黒面になんか落ちていないと主張するかのように。

 

 そして、別の方向を指さす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふふ……さぁ……もっとイイ声でお鳴きなさい……! この薄汚い老朽トナカイ共がぁ!!」

「ありがとうございます!! ありがとうございます!!」

「感涙の極み! 感涙の極み!」

 

「……」

「……」

「……」

「……な?」

 

 

 いたって普通のサンタ服をまとった近褐色の髪の美女が、高笑いを上げながら薄汚ねぇトナカイのコスプレをしたオッサン2人を『調教』している所だった。ソリの上から高飛車にビシャーン、ビシャーン、と鞭が唸る。

 

 言うならば、そう――この絶望的な世界の中であっても、未来と希望を信じて健気に生き抜く全ての子供の夢を、崩壊させる為だけに存在するような光景。

 

 なんてことはない、どうやら、ヘルマン扮する赤鼻のルドルフトナカイは、女王サンタが怖くて脱走しただけだった。

 

 

 

「鳴き方が弱いわよ2号!! もっと3号を見習って腹の底からブヒブヒ言いなさい? その汚ったない汚っっいお腹のぜい肉は何のために存在するのかしらぁああ!?」

「ブヒィ! ぶ、ぶひぃいい!」

「やれば出来るじゃない……! 普段から腹の底にため込んでる奴は違うわね……嗚呼、聞かせてっ……もっと聞かせてっ! 苦悶の唸り声を!! 羞恥と屈辱に喘ぐ鳴き声をっ!!」

 

 

 

 

「やめてぇーー! もうやめてぇー! 叩かないで……リディア姉さん! オオグルマ先生を叩かないでぇ!」

「そしてその横でブヒブヒ言ってるのは教官ねぇ……」

「リディア先生超可愛い。あの服クッソ可愛い」

 

 アリサが薄汚いトナカイに駆け寄り、最早豚なのかトナカイなのかよくわからない扮装をした元主治医、にして現在はロシア支部の医療スタッフになっているオオグルマ ダイゴを解放する。

 

「先生……そうしてこんな……っ」

「アリサ……」

 

 オオグルマの目は焦点が合っていなかった。

 

「もういいんだ……アリサ……」

「……っ! 全然! よくありませんっ……! どうして……どうして自分を痛めつけるんですか!? 先生……! そんなことしちゃ駄目です……!」

「アリサ……」

 

 現世に帰ってきたオオグルマが何か悟りきったかのように語り出す。

 

 

 

 

「私はね……今まで罪深いことをしてきた……。だが、それは……ある一つの目標があったからなんだ……だが、その夢はもう潰えた。全てをなくした私にはもう……何も残っていないんだ……。

 

 だから……かくなる上は……! サンタのトナカイと化す以外もう私に存在価値なんてないんだぁああ!」

「先生! そんなことありません先生!!」

「離してくれアリサ! 考えてみたら4年前も3年前も年下の上司に嫌味を言われて楽しかった! ゾクゾクしたぁ! あぁ、そうだよ!! コキ使われたりハードワーク押し付けられたりするのも快感だったさ!

 私には!! トナカイの!! 素質が!! あったんだぁああああああぁぁっ!!」

「……っ! 先生……!」

 

 

 

 

「何故、誰も、トナカイがトナカイじゃないことを突っ込まないのぉ……?!」

 

 ダニエラが一歩引いた視線から、やや焦った口調で言葉を発する。

 

 

 

「あら、アリサちゃーん! その服、とっても可愛いわよっ! ちょっと露出度高めだけど……まぁ、普段の服に上乳が出ているだけ、って考えれば気がラクよね~」

「リ、リディア姉さんったらもう……」

 

 先ほどまでサンタと化していた金褐色の髪の女性――リディア・ユーリエヴナ・バザロヴァが高笑いではなく、柔和そうな笑顔を浮かべてアリサに頬ずりする。

 

「きっとあの子が見たら喜びそう……ふふふっ。アリサちゃん。かーわいいっ!」

 

 だが、ひどく自然にオオグルマをピンヒールで踏みつけていた。

 

「ふごっ……」

「……ちょっと……? 誰の許可を得て自発呼吸してるのかしらこのトナカイっ!!」

「がふっ……あ、ありがとうございます!」

 

「リ、リディア姉さん……」

「何? どうしたのアリサ?」

 

 どうしてこんなにサラッと態度を変えられるのか、と思いつつ、その気持ちを押し込めながらも、決意を目に宿したアリサが真っ直ぐな声色で、リディアに言った。

 

 

「私にも……やらせてくれませんか!?」

「なっ……」

 

 

 

 

「え……? え? え??」

「マジかよ……マジかよぉおおおお! ヒャホーイ!」

 

 ダニエラとアーサーが全く真逆のリアクション。

 

 

 

 

「アリサちゃん……? 気持ちは分かるけど……コレ、結構大変よ?」

「大丈夫です。でも、きっと……私がやらなくちゃ、いけないんです!」

「アリサちゃん……? どうして……?」

 

 

 

 

「何故なの……どうしてぇ……アリサ……」

「拓いちまったか……新しい世界を……」

 

 ちょっと違う意味でダニエラが同じ言葉を口にした。

 

 

 

「オオグルマ先生の所為です」

「この豚ぁ!」

「ひぃ、ありがとうございましゅぅぅううう!」

 

 もう完全に豚って言った。

 

「ち、違うんです! リディア姉さん!! 私……私……! 実は心の中でずっと思ってたんです。4年前に、大怪我しちゃって……極東に入れなくなって……ソレからずっとずっと、オオグルマ先生を失望させてるんじゃないかって……」

 

 

「そこに直りなさい。ダイゴ・オオグルマ」

「な、何をなさるのですかサンタ様……あ、あぁ! クリスマスキャンドルをそんな風に使うだなんて……ぎゃぁああぁああ!!」

 

 汚ねぇオッサンの悲鳴をBGMに少女の決意表明は続く。

 

「でも……オオグルマ先生が今、ここで一歩踏み出すっていうんなら……私も、ここで立ち止まってちゃいけないんだって、そう思ったから……だからっ……!」

「……アリサちゃん……」

「お願いします。リディア姉さん。

 

 

 私を……ジェドマロースにしてくださいっ!!」

 

 

 

 

 

「アリサ……」

「堕ちたか……」

「また一人、ジェドマロースが増えるのか……」

 

 サンタ服が女性にばかり行った理由が、厳選で公正なるくじの結果ではなく神、もしくはそれに類する何か別なものの作意ではないかと思えるヘルマンだった。

 

 

「アリサちゃん……そこまで言うんなら……はい、コレを使って!」

「コレは……鞭…………ですか?」

「バラ鞭よ! 先がバラけているの! だから音が大きく出る仕組みになっているのよ? 先をまとめて、一気に振り下ろす!(パァーン) さぁ、頑張ってアリサちゃん!」

「は、はいっ!! このっ……オオグルマ先生がっ!」

「はぁぅん!? な、何だこの感触は……! こ、コレが噂に聞く……シチュエーション逆転プレイ……!?」

「す、すいません先生……へ、変じゃ、ありませんでしたか……?」

「もっと叩き給えアリサ!」

「頭が高いんですよ!!」

「そ、そうだねアリサ! 嗚呼アリサ様!! アリサ様ぁああ!!」

「アリサ様こちらにも!! この卑しいトナカイめにも鞭を!! 初々しい、しなりたての鞭をぉ!!」

「おねだりの仕方が下品なんですよ教官!」

「あぁ、く、くれない!? クソぉムラムラする……! ……はっ、コレが……まさか……放置プレイ……!?」

 

 

 

 

 

 

「教官、レベル、高いな……」

「あそこまでコナレタ人だったなんてねぇ……」

「恐れ入った……そして、鞭を打つ度に揺れる胸がまた素晴らしい」

 

 

 ロシアの防衛班組は遠い目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっほぉーーーーいっ! 遅れてごめんよーー! いっやぁー、この服後ろにファスナーあってさぁ!!中々一人じゃ上げられなかったんだよねーー! あっははははは! ……って、うわなにこのカオス……」

 

 

 

 

 

 

「あぁ……来たのねぇ…‥オレーシャ……」

「よー、オレーシャ……」

「遅かったな」

 

 快活な少女の声に反応した無気力状態な3人を見て、一瞬オレーシャ・ユーリエヴナ・バザロヴァは一時停止した。

 何か並々ならぬ事態が発生している。

 

 だが、そこは持前の空元気で乗り越える。空気中の違和感全てを飲み干して。

 

 

「ちょ、ちょっと何アーサーその恰好!? ヘルマンも何か鼻光ってるんだけど!? え、ヤバい……混沌すぎてどっから突っ込んでいいのか分かんないんだけどドン引きだよ!?」

「その件はもう解決したぜオレーシャ。オレはこれから、女装を極めるわ」

「どうしたのアーサー!?」

「何も聞くな、聞いてやるな」

「貴女来るのが、少し、遅かったのよぉ……」

「ちょっとダニエラ説明して! この状況を説明して!!」

 

 ぱしーん、ぱしーん、という変な音までする。

 

「アーリィーサァー! 貴女のハニーが来たわよぉ~~」

「えっ、えっ……あ、あぁ、そっか。

 待たせたなー! 大親友ーー! ってアリサなにやってんの……何が起こってるの……」

 

 

 

 

 

「え……あ、お、オレーシャ……!」

 

「あ、アリサ……何かその服……す、すごいね……」

「オレーシャこそ……で、でも、すごく……似合ってますよ……?」

「え……そ、そうかな……? 嬉しい……なんて……」

 

 

 

 

「何なのこの初々しさ」

「パチこきやがって」

「深刻な胸部格差だ」

 

「さっきから思ってたんだけど、ヘルマン。テメェはしたり顔で突っ込み側に回ってんじゃねぇよ、突っ込めねぇんなら無理しないであそこでオッサン共と一緒に叩かれてろ」

「断る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ☆☆☆

 

 

 

 

 

 部屋の飾りつけもすべて終了し、これからは孤児院の子供たちを迎え入れるだけ……となった頃。

 重労働を終え、一休みするアリサの横にオレーシャが腰を下ろした。

 傍から見れば、仲の良い学生二人がクリスマスで浮かれているようにも見える。

 

「皆はしゃぎすぎでしょうコレ……有り得ないって」

「ですよね。……だけど、まぁ……良いんじゃないですか? 今日くらいは」

 

 分かっている。

 明日からはまた戦場だ。

 命を削り合うような、戦いが、待っている。

 だから、せめて、今日だけは……騒げる日には、思いっきりさわいでおくのだ。

 

 悔いが残らないように、と。

 

 

 オレーシャが柔らかく笑って口を開いた。

 

 

 

 

 

「ねぇ、アリサ」

 

「何です? オレーシャ」

 

「もし……『もしも』だよ? 私たちの誰かがさ、死んじゃう様なことがあっても……」

 

「……」

 

 

 

 

 

「今日の事を、忘れないでね」

 

 

 

 オレーシャは綺麗に笑う。

 

 

「幸せなこと、幸せだった時のことをね……忘れないでいて欲しいんだ。そしたらきっと、これから先、すっごい辛いことがあっても……きっと、悲しみを全部飲み干せると思うよ。

 だから……」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「辛くない程度でいいよ。私たちを覚えていてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たり前ですよ。オレーシャこそ、一晩ぐっすりしたら忘れちゃいそうじゃないですか」

「な、何故ソレヲ……!?」

 

 

「ふふっ、相変わらずの鳥頭なんですからもう! ドン引きですよ」

「ドン引かないでよー! も~~!!

 

 悪い子には……お仕置きだぞ~?」

 

 

 

「……え? オレーシャ……? ちょっと……ひゃぁん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇアーサー兄ちゃん……? なんでねーちゃんたちハグしてるのー?」

「ん? まーたオレーシャとアリサが何かしでかして……ってうわぁああああ!? お前らやめろよ!! やめろってば!! 何しに来たのか分かってんのか馬鹿ぁ!! 二人してトンでもない格好で何やってんだよ聖なる夜をナニで汚す気だよ!?!? 

 っていうかヘルマンお前も写真撮ってんじゃねぇよ!! は? 何? この胸は未来永劫語り継いでいくべきだ……ってそんな負の遺産残すなぁ!! 大体オレーシャに胸なんかねぇんだろいい加減にしろ!!!!

 ダニエラは混ざりたそうな目で見てんじゃねぇ!!

 リディア先生も降りて!! オオグルマ先生も叩かれて嬉しそうに喘ぐんじゃない!! トナカイなオオグルマ先生なんか軽くホラーなんスよ!! 教官も喜ばないで下さい!!

 ってオレーシャぁあああ! 次のステージに突入しようとしてんじゃねぇぇえええっ!! アリサ戻れ!! 戻ってこぉぉぉぉおおい!!」

 

 

 

 

 




何かすみませんでした。


ifルートのアリサ書いてて楽しかったです。

彼、彼女らの活躍は富士見ドラゴンから出てる小説版『アリサ・イン・アンダーワールド』を是非!



今回は年末のクッソ忙しい時期なのにも関わらず、快くご寄稿下さった皆様、本当に本当にありがとうございました。色々急ピッチになってしまい、今回は本当に申し訳ありませんでした。




12月25日はGEニコ生!! 20時からニコニコ生放送!!

GEA最終回群はTOKYOMX 1月2日 18時30分より遂に10話放送(予定)!!






=お詫びと訂正=(26日追記)

…と、言いましたが、25日のニコ生によるとGEA最終回群『メテオライト編』は何か3月になるとかならないとか……?
多分再放送か何かが始まるんじゃ……ナイデスカネ(予想)

キービジュアルを見ると……


背を向けるリンドウさん。
魔改造されたレンカの神機(一説によるとポールタイプっぽい)。
そして顔まで浸食が進んでいるレンカ。


神機が魔改造すぎてどうでも良くなりました!
3月まで待機です!! 

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